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暗き森の泣き声(第1回/全2回)

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暗き森の泣き声(第1回/全2回)

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第11章 確実に引き抜け捕獲作戦

「どこにいるのかしらマンドラゴラ・・・まったく見当たらないわね」
 耳栓をしたマリアンマリー・パレット(まりあんまりー・ぱれっと)はオペラグラスを覗き、それらしい植物を探していた。
「あれがそうなのかな・・・」
 ターゲットに気づかれないようにそっと近づいてみると、体長50cmほどのマンドラゴラを見つける。
「ではボクが引き抜きますね」
 光学迷彩で周りの景色と同化し、姿を隠したよしの なんちょうくん(よしの・なんちょうくん)が耳栓をつけて慎重に魔法草へ近寄った。
 採取の様子を20mほど離れた位置からマリアンマリーが見守る。
「(ファイトです、なんちょうさん!)」
 マリアンマリーからさらに離れた場所で、高潮 津波(たかしお・つなみ)がなんちょうくんを心の中で応援する。
「(ドキドキしますわね)」
 津波の傍にいるナトレア・アトレア(なとれあ・あとれあ)も双眼鏡で状況を覗き込む。
 魔法草の葉をなんちょうくんがしっと掴み、地中から引っこ抜く。
「キョェェエエィイイ!」
 凄まじい金切り声を聞こえてしまい、なんちょうくんとマリアンマリーは気絶して倒れてしまう。
「うっ・・・耳が!」
 津波とナトレアたちに若干聞こえていたのか、思わず両耳を手で押さえた。
「うーん・・・なんだか頭がクラクラします・・・」
 足をふらつかせ、彼女たちも気を失ってしまった。
「なかなか戻ってこないわね・・・様子を見に行ってみよう」
「あっ、あそこに・・・!」
 気絶した彼女たちを源内侍 美雪子(みなもとないし・みゆきこ)と、マルシャリン・ヴェルテンベルク(まるしゃりん・べるてんべるく)が見つけた。
「どうしたの!?」
「戻っていらっしゃらないから様子を見にきてしまいましたわ」
 岩河 麻紀(いわかわ・まき)アディアノ・セレマ(あでぃあの・せれま)が駆けつける。
「気絶してもマンドラゴラを逃さないように根を掴んだままなんて・・・」
 気を失っているなんちょうくんを見つめ、シルエット・ミンコフスキー(しるえっと・みんこふすきー)は関心したように言う。
「まさに執念ネ!」
エルゴ・ペンローズ(えるご・ぺんろーず)は腕を組んで頷き、たとえ気絶しても逃さないとう、なんちょうくんの執念に感服する。
「何かあったんでございますか?」
 騒ぎ声を聞きつけた比島 真紀(ひしま・まき)が、彼女たちの傍へ寄ってきた。
「あぁ・・・マンドラゴラの声を聞いてしまったんだな」
 目を回して倒れている彼女たちを見て、サイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は眉を潜める。
「このままにしておくわけにもいきませんし、自分たちがイルミンスールの校舎の近くまで運んであげるであります」
「帰り道で亡者とかに出くわしたら厄介だからな」
「それじゃあお言葉に甘えようかしら」
 麻紀が真紀たちに微笑みかけた。
「それでは、わたくしが一番前を守るわね」
「後方はワタシが守りますわ」
 アディアノは麻紀の言葉に頷き、後方を守ることに徹する。
 彼女たちは周囲を警戒しながら、森の出口を探して歩いていった。



「ここに魔法草が通った後があるようですね」
 頭に防音ヘルメットを被ったガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)は盛り上がった土に触れ、その周辺に掘り起こされたように散らばっている雑草などを見て、彼女はトレジャーセンスの能力で判断した。
「まだ近くにいるかもしれないじゃけんのう」
 供にマンドラゴラを探し求めているガートルードの言葉に、シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)が頷く。
「何かあっちのほうで動いているようじゃけん、ハーレック親分・・・見に行ってみよう」
「もし逃げられたらもともこうもありませんからね、慎重に近づきましょう」
 ガートルードたちは身を屈めてガサガサと音が聞こえた方へ近寄る。
「今です!確保ー!」
「きゃぁあ!?」
 2人が魔法草と思い込んで捕らえようとしたのは、アピスだった。
「すみません・・・音が聞こえたので、マンドラゴラを見つけたかと思って捕まえようとしたら間違えてしまいました」
「よかった、怪我はないようじゃのう」
 跳びかかった拍子に怪我を負わせてしまっていないか、心配したシルヴェスターがアピスを見てほっと安堵する。
「何やら人の叫び声が聞こえたようですけど・・・」
 周囲をキョロキョロと見回しながら、菅野 葉月(すがの・はづき)は声が聞こえた方へ向かって歩いていた。
「魔法草の声じゃないようね。それだったらワタシたち気絶してまっているはずだから」
 草むらに座り込んでいるアピスの姿を見つけ、ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が葉月の肩を人差し指でつっついて知らせる。
 安心しているのも束の間、背の高い草むらの中からカサカサッと音が聞こえた。
 正体を確認するためにミーナたち5人は、なるべく音を立てず慎重に距離を縮めていく。
「あっ・・・あれかしら?」
 小声で言うアピスが人差し指で示す方を見ると、数本の緑色の30cmほどの長さの葉が蠢いていた。
「僕たちが木の上から引っ張りましょうか?」
「えぇ、手伝ってくれると助かります」
「わしらはその木の下から引くとしよう」
「どこかの木にマンドラゴラを引っかければ、声を聞かずにすみそうね」
 葉月たちの提案にアピスは頷き、確実に遂行するためにアイデアを考えつく。
「俺たちも協力するぜ」
「世の中助け合っていなかいとね」
 相談し合う彼らを見つけ、ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)フェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)が声をけた。
 ロープを大木の枝に投げ、葉月とミーナがよじ登っていき、余った部分を地面へ投げる。
 その余った長さ分を、ガートルードとシルヴェスターの2人がしっかりと握った。
 マンドラゴラの葉に手早くロープを縛りつけると、アピスはすぐさまその場を離れた。
「いきますよ・・・せーの!」
 ガートルードたちはグッと力を入れてロープを引っ張る。
 それほど大きくなかったからか、遠くから引き抜いた葉月たちと、急いで避難したアピスは魔法草の声を聞ずに済んだ。
 魔法草の根を見てみると、40cmほどの大きさだった。
「あーっ、マンドラゴラだー♪」
 お腹を減らしたメイが魔法草へ駆け寄っていく。
「食べるなぁああ!」
 食べようとする彼女を、悠がヒョイッと抱き上げて止める。
「うぁああん食べたいー!せめて一口〜」
「だから食うなって!」
「なんだか大変そうね」
 彼らのやりとりに、ミーナが苦笑いする。
「そんなに腹が減っているのか?」
 マンドラゴラを食べようと必死にもがくメイの姿に、ウェイルは首を傾げた。
「食べられちゃっても困るけどね」
「生のまま食べたらどうなるんだろうな・・・」
「えっ・・・まさか・・・」
「いや、俺は誰も食べたことがないような珍味に手出すほど飢えてないから」
「もし飢えていたとしたら・・・?」
「食べない!極限状態だったとしても絶対に食べないから!」
 ウェイルは首を左右に振り、全力で否定する。
「さて・・・イルミンスールに届けてあげましょう」
「そうじゃのう」
 ガートルードたちは魔法草を引きずりながら、イルミンスールの校舎へ向かった。



「さっきからクリーチャーたちがうじゃうじゃと・・・きりがないわね」
 休みなく戦い続けていた麻紀は、息をきらせている。
「えぇ、本当に。やぁああっ!留めの一撃ー!」
 後方を守るアディアノも、怪鳥の腹部をランスで深々と突き仕留めた。
 ヒールも使えないほど消耗しきっていた頃、ようやく森の外へ出ることができた。
「うあっ、太陽が眩しいよ」
 暗い森の中からでたことで日の光が眩しく感じ、美雪子は片手で目を覆い光を遮る。
「もうすぐ校舎が見えるよ、頑張ろう」
 美雪子たちは残りの力をめいっぱい使い、ズルズルとマンドラゴラを引きずっていった。