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リアクション
第7章 サーカス
「そうかぁ……これが一流の技ってやつなんだな……」
皆様、この人物。
ピエロメイクに、赤と緑のツートンカラーと言えば。
見覚えがある方もいらっしゃることだろう。
――ヒャー、覚悟しろ!! ドガガガガ ドルルルル チェーンソーが破壊の調べを奏で始める……「ヒャーーーーー!! 死ねやーーっ」(『オークスバレー解放戦役』参照)
そう。ナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)だ。
しかし、あの戦場でのナガンとは、今日は様子が違う。
7-01 これが本場のサーカス?
「なるほど……これが本場のサーカス……」
そうここはサーカス。
見つめる眼差しは、真剣だ。ここにナガンの素の言動が垣間見られた。
続いては、動物芸か。
馬と鹿。
「なるほど……これが本場のサーカス……」
剣の花嫁による、花婿の投げ合い。
「なるほど……これが本場のサーカス……」
茶を吹く機晶姫。
「なるほど……これが本場のサーカス……」
ヴァルキリーと守護天使による公園ブランコ。
「なるほど……これが本場のサーカス……」
馬女、吸ケツ亀。
「なるほど……これが本場のサーカス……」
最後は……曹豹の槍回しだ。「はあっ、たあっ、くっ、……能力値が上がらん!」
「なるほど……これが本場のサーカス……」
「まだまだ。駄目じゃ、駄目じゃ!」
青 野武(せい・やぶ)が出てくる。
「この先へ進むにおいて、より素人芸ともっと失敗続きで笑わせるサーカスへの路線変更が必要となりましょう」(第一回と比べてください。)
黒 金烏(こく・きんう)だ。
「皆さん、実際には一癖二癖もある腕前なわけですが……」
シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)は、サーカス団員らを見渡し、
「もっと爪を隠しましょう。その点、曹豹さんはお上手ですよ」
「え…………わ、わいは本気で……」
「より、より情けないサーカスにすべきです。客の評判も落とすべきでしょう。
このシラノ、台本には協力しますよ」
7-02 ナガンの決意
ナガンは、緊張しながら、暗がりのバックステージの方へと歩いてきた。
ナガンは曹豹を通し、サーカス内の外部応接担当者との面談を要望した。
先程の、馬女や吸ケツ亀や馬鹿や曹豹らが、ぎらりとナガンを睨みつけてくる。
ナガンは……悪友の国頭武尊からサーカスやってたぞ、との一報を受け、大興奮してパラミタ大荒野を走りここまで駆け付けたのだ。サァアアアーカァアアアスッ!!
どきどきしながら、その間を進んでいく、ナガン。
ナガンは……サーカスに憧れていたのだ。サァァァアアーカァァァアアアスッッッ!!!
ナガンは、直接座長に面接を受けることになった。
山高帽にちょび髭の男。
「サーカスはどうでしたかな?」
「ええ。その……ええ、本当に、本当に素晴らしかった。
あの、……なんでもする。なんでもするから……弟子に、……このナガンをサーカス団に入れてくれないか! 頼む!」
「何ですと!?」
部屋に、剣を持った花婿や、青、黒、シラノ、曹豹らが入ってくる。
「! ちょうどよい。この者が適任でしょう」
ナガンは、青から大量のビラを渡された。
「この先、見知らぬ土地に行くのに、宣伝不足では却って怪しまれるであろう。先触れを出すべし」
ナガン、「……これも訓練か」
いつになく神妙なナガン。ナガンにとって、そこまでして本場のサーカスの神髄を見極める必要性があるとは、何ゆえのことであるのか。それは……。ナガンの過去、あるいは現在の境遇や、秘めたるその深層と深く関わることなのかも知れない。
*
「この時期に北へ向かうこと自体警戒の対象じゃから、……襲撃に遭うかも知れぬ。
そのときには、善良なサーカス団らしく、抵抗らしい抵抗もせず、算を乱して逃げることじゃ。
弱いと見れば警戒を解くのが道理」
そして一団は、谷を抜け三日月湖に近付くところで、乱戦状態の最中に巻かれることになる。教導団との接触は適わず……そのまま動乱を避け北へ、北へ。
「わしらは、どうしても北へ行かねばならぬ。人の目を偽ってでもな」
座長が明かしたこととは、黒羊郷の千年祭を祝いに訪れたヒラニプラ南部の有力者らが、その地で黒羊側の囚われになっているらしい、ということだった。その中には、南東の小国の王子も含まれており、この座長は、百芸に秀でたその国仕えの侍大将。今まで送った手の者も戻って来ず、今回選りすぐりを連れ自ら、黒羊郷へこの方法で近付くつもりなのだ。
黒羊郷には、様々な旅人や旅芸人も集まっていることだろう。何とか、黒羊郷のバックステージに乗り込む。
そんな一座の思惑は知らず……ナガンにとってこの旅は、思いも寄らぬ、自分自身を探す長い旅になろうとしているのだった。
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