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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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・THE LAST PLOJECT

 図書館二階。
「さっきの『最終』ってのは何を指してるんだ?」
 アーサーが呟いた。
「ここの研究所で最後に造られたものじゃない? それ以外には考えれらないよ」
 ミレーヌが読み返しながら言う。
「あれ、そういえばさっき奇妙なものが……」
 シャーロットがそれまでに読んだ本をもう一度チェックする。
「これですぅ」
 そこには「第六次計画」と書かれ、それを隠すように斜線が引いてある文献があった。
「……ページが、ない?」
 中身はなく、表紙だけの状態だった。確かに妙なものである。
「ただでさえ見られたらまずそうな内容の研究ばかりなのに、どうしてこれだけ?」
 彼女達は知らない事だが、現在までに判明しているのは第五次計画までである。第六次計画は他の階では発見されていない。
「もう一度さっきの手書きのを読んでみるですぅ」
 シャーロットは再びワーズワースが最後に残したらしき文献を読み上げた。だが、新しい発見はない。
「例の五体ってのも気になるよね?」
 アルフレッドはそちらが引っかかっていたようだ。
「それはこっちに書いてあるわ。『便宜上の分類は有機型機晶姫となる。成功例五体はそれぞれ特異な能力を身に付けた。その内、《フィーア》は調整を重ね、完成型として確立するに至る』有機型機晶姫?」
 ミレーヌはその単語に首を傾げた。有機型、という事は生身の肉体を持っていると考えられるからだ。
「こっちに記述がありますぅ。『人体ベースの機晶姫と言えよう』、ええ!?」
 その言葉に目を疑うしかなかった。
 それでも読み進めていく。すると、新たな事実が分かった。

 ――『ゼクス』は感情が薄く命令に忠実だが、危険を察知した際に敵以外も攻撃対象に入れてしまう傾向がある(中略)
 『ナイン』は、精神は無邪気な子供のままであるが、力を制御する事が出来ない。さらに、発作が起こるとしばらく止まらない。未調整の翼の力が暴発する危険性もある(中略)
 そのため、この五体は失敗作として処理する。



            ***

 未憂、ランツェレットらは図書館二階外周通路にある、閲覧室の一つに足を踏み入れた。
 すると、魔道書が光を帯び始める。既に機能していないと思われた守護者の持つものも含めて。

『今、私がこの研究所を去ってからどれほどの年月が経ったのか、知る術はない。だが、システムの間に記録したこれが再生されているということは、その時が来たということだろう』
 
 室内にいたはずだが、彼女達は異空間に囚われたかのように感じた。

『これが映像として再生されるのは一度きりだが、これから私が話す記録は書面にまとめてある。そしてこれを見ている人物は「私」のはずだ。万が一、記憶の復元が完全でない場合、おそらくここに辿り着いてはいないだろう。魔導力連動システムを知っているのは私しかいない。そしてこの鍵の一つである出力デバイスは、第四次計画の被験体――かつての助手が持っている。「私」以外の人間の手に渡ることはないだろう。時が来るまでここを守るように命じているのだから。この研究所において、彼女を超えるものは存在しないはずだ』

「この方が、ここの主だった方ですか?」
 目の前に立っているように見える、四十代と思しき白衣の男性。彼こそが非人道的な研究に手を染めた、ジェネシス・ワーズワースなのだろうか?

『知識と記憶の上書き。この技術によって、精神レベルでの不死を可能とした。だが、人格まで上書きされるかは確信出来ない。そこで、私は自分の本当の目的をいずれ訪れるであろう自分に思い起こさせるために残しておく。私の記憶が、その目的に呼応するはずだ』

 ワーズワースの誤算は、それがまるで知らぬ者に見られている事だ。まさか守護者が倒されるとは思っていなかったのだろう。実際、殺す気でかかってきていたら結果は異なっていただろう。

『研究データのうち、大元となるものはこの場所にはない。全ての始まりに関するものは、私が持ち続けているだろう。私以外にここの技術を再現出来るものは、未来永劫現れないはずだ。あの脅威から再び国を守る、そのためには残しておく必要があるが、悪用されることは防ぐしかない』

『私の真の願いは平和だ。そして自分が生み出しておきながら封印することしか出来なかった彼女達を救うことだ。この研究所の奥に、ずっと外に出す事の出来なかった最終形がいる。彼女に関するデータは全て消去した。この映像以外では』

 白衣の科学者は語る。葬りさった最終計画の内容を。

『第二次計画から第五次計画に使われた技術を再構成し、私はゼロから一人の剣の花嫁を創った。それに改良と調整を加えていき、第五次計画の完成型と同等かそれ以上の力を与える事に成功した。だが、その精神は不安定で、危険だった。今のままで外へ出したら、彼女は敵味方関係なくその力を振るうだろう。それでもずっと地下深くで眠らせておきたくはない。例の五体や、魔獣達もそうだが、私は自己満足で切り捨てるつもりはない。そしてようやくその時が来たのだ』

 そして最後に一言を告げ、彼は消えた。

『娘達を救ってくれ』

 後に残されたのは一冊の本だけであった。魔道書の原典ではないが、そこにはある魔道書の存在が示されていた。

「全能の書……そして、輪廻を司る三冊の魔道書の存在ですか」