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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第3回/全3回)

リアクション


・合流

「守護者? ゴーレム、魔道書の類と思っていましたが本当に人を使っていたのか」
 リヴァルト達先行組を発見した刀真の目に、ノインの姿が映り込んだ。
「生きていた事にも驚きですが……なぜ彼らと一緒に?」
「……刀真、みんなが」
 月夜は先行組が疲弊しているのを感じ取った。そこに至る前に、二人は撃破された機甲化兵を確認済みだった。
「さて、それじゃあ恩を売りますか」
 黒の剣を構え、先行組の前方に立ち塞がる機甲化兵へ向かって駆け出してった。

「さすがにこうも連続だとキツイぜ」
 周は敵からの連続攻撃を引きつけるも、上手く攻撃に徹することが出来ない。
「ここは私が。皆さんにばかり負担をかけるわけにはいきません!」
 剣を構えたリヴァルトが立ち向かおうとする。
「大丈夫、僕達に任せて。蘭丸!」
「はい。参りましょう!」
 リアトリスと、パートナーの森 乱丸(もり・らんまる)が前に出る。
 フラメンコを踊りながら敵の攻撃を回避しつつ間合いを詰めるリアトリス。後方援護は蘭丸が行っている。
 接近したところで、轟雷閃を繰り出す。
「一発じゃ無理かな?」
 動きが緩慢になりつつも、硬い装甲に阻まれる。
 その時、リヴァルト達の背後から銃撃が来る。その目標は目の前に機甲化兵だ。
「あれは、月夜? と、いうことは……」
 にゃん丸が月夜の姿に気付く。そして正面では、
「くそ、避けきれねぇ!」
 周がレーザーを食らいそうになっていた。そんな彼の前でレーザーを防いだ人物の姿があった。
「刀真!」
 彼はそのまま構えを戻し、一直線に轟雷閃を繰り出す。その隙に接近し、斬撃を与える。
「随分と硬い……ですね」
 斬りつけた後、一度後退する。
「助かったぜ! ありがとな」
「いえいえ。帰ったらミスドで何かおごって下さいね」
 冗談めかして周の顔を見る。
「仕方ねーな。じゃ、まずはコイツをなんとかしよーぜ!」
 周も武器を構え直す。そこへレミと月夜がそれぞれ自分のパートナーにパワーブレスとヒールを施す。
「私達が援護するよ!」
 レミが雷術を、月夜が銃撃による弾幕でサポートする。現状、前線で戦っているのは六人。他のメンバーはそれまでの戦いの疲れもあり、迂闊に動けない。ヒールで地道に回復を図ってる。
「最深部に着くまでにあと何体と戦う事になるんでしょう? 温存するにも、このままじゃあまりもちませんよ」
 緋音が懸念しているようだった。現に彼女は無菌室、機甲化兵と連戦をしてきている。おそらく同じ立場の周は限界が近いだろう。囮としては動けているものの、決定打は打てていない。
 
「――雷の閃きよ!」
 刀真が加わってからそう経たないうちに、さらなる援軍が加わった。後方からの雷術が機甲化兵を捉える。
「みんな、大丈夫!?」
 術の主はアリアだった。
「皆を助けなきゃ……イングリット行くよ! エレン、援護お願い!」
 次いで葵とイングリッドが機甲化兵へと接近する。
「皆さん、この力を!」
 エレンディラが強化の魔道書を開き、葵だけでなく、周、リアトリス、刀真に施す。これで強化型は残り四冊だ。
「イングリットだってやる時はやるんだから!」
 イングリッドが機甲化兵の銃口を引きつける。その隙に葵が接近し、轟雷閃を放つ。
「お、力が湧いて来たぜ!」
 初めて強化の効果を得た周もまた、轟雷閃を放つ。既に敵の動きは弱まり、装甲には亀裂が入っていた。
「今よ!」
 アリアもまた距離を詰め、轟雷閃を放つ。その後ろから幽綺子がライトニングブラストを、そして博季が轟雷閃を叩きこむ。
 機甲化兵はそれで動きを止めた。
「まだだ!」
 先刻不意打ちを食らいかけたばかりだったため、周が容赦なくとどめの轟雷閃で敵を貫く。そのまま剣を放し、機甲化兵から遠のく。
「レミ!」
 完全に内部を破壊するため、剣の刺さった場所に雷術を流し込むよう指示する。彼女だけでなく、他の者達も同時に繰り出し、その威力は何倍にも膨れ上がった。
 敵はそのエネルギーに耐えきれず、爆発、四散した。


 完全に鎮静化した後、破壊した機甲化兵を調べたり、合流組への状況説明をした。
「なるほど、そういうことでしたか」
 なぜ守護者――ノインと行動をしているのか、その理由が判明した。相手に敵意はないようなので、斬りかかるような事はしなかった。
「機晶石か、これ?」
 レイディスは機体の中から拳ほどの大きさの物体を発見した。機晶石のようだが、彼が見知ったものとは微妙に異なっている。その言葉を聞いたノインが説明を始めた。
『機甲化兵は改造した機晶石を動力にしている』
 曰く、そのままだと暴走する可能性もあるから、意図的に造り変えたらしい。
『ここで行われた研究……その第一次計画の産物だ。その後、我が造られた第四次計画を経て、第五、最終段階へと入っている』
 自分の中に「知識」としてある情報を参照しながら答えている。それはほとんど機械的ともいえた。
 元々は人間にとって代わる『代理兵器』の開発から始まっていたことが判明した。しかし、戦況が悪化したか、それとも異なる理由からか非人道的な方向へ進んだらしい。
「科学者が大量破壊兵器を作ってから良心の呵責に苛まれ……ってのはいつの世も変わらないのね」
 ノインに肩を貸しているにゃん丸が呟く。
「その科学者……主、ってのはどんな人なんだ?」
 ジェラルド・レースヴィ(じぇらるど・れーすゔぃ)がノインに尋ねる。怪我をしていたノインを案じるようにしていた彼だったが、傷が癒えてきているのにこの時気付いた。
『ジェネシス・ワーズワース。元々は医者だった人物だ。他にも魔法や先端技術にも精通していた』
 ノインは淡々と告げる。
「リヴァルト、その名前に聞き覚えはある?」
 リアトリスがリヴァルトに質問した。
「いえ……ありません」
 リヴァルトが自分の記憶を掘り起こすように熟考し始める。
「そういえば、幼い頃ある話を聞いたことがあります。それは偶然だったのですが……」
 彼は続ける。
「ある日の夜遅く、祖父と父が向かい合って座っているのが見えました。どこか重い空気だったので、遠くから眺めていたのですが……『お前にも話すべき時がきた』と祖父が口にしていました」
 断片的ではあるものの、何かを「受け継ぐ」旨の話だったようだ。
「しかし、その数日後に家は何者かに襲われ、私以外は皆殺されました。姉は私を庇って……それはちょうどパラミタが出現する頃でした」
 目を伏せるリヴァルト。その話が本当ならば、彼は十一年前から何かの因果に巻き込まれていた事になる。
「なぜ犯人は君だけを生かしたんだろう? 顔は見てないのかい?」
「いえ、後ろ姿しか見えませんでした。振り返らずにその人は『君にはまだやるべき事が残っている』と告げて去っていきました」
 リヴァルトはあくまでも感情を殺して語る。そして父の友人で、彼にとっても馴染みのあった司城 征に引き取られたのだと。彼の父も祖父も、何者かの存在に脅かされているのを感じていたようだ。
「もしかすると、リヴァルトさんの一族は主――ワーズワースの子孫ではないでしょうか? だからこそ、遺跡が彼をいずれ戻って来る主として認識したのでは?」
 東間 リリエ(あずま・りりえ)はそう推測する。
「それはありそうだねぇ。でも、今の話を考えると全ては何者かに仕組まれていた、って事だよな」
 と、にゃん丸。当時まだ子供だったリヴァルトを生かしておいたのは、何も知らない彼に封印を解かせるためな気がした。偶然にも封印解かれたこの遺跡の兵器を我がものにするために……
「ならばそれは、ワーズワースをよく知る人物だろう。しかも五千年前から生きていなければそんな事は知り得ない。パラミタは一度姿を消しているのだからな」
 さらに考える。
「やっぱり封印は開けない方がいいんじゃないかねぇ?」
 この一件には間違いなく裏がある。このまま封印を解くのは危険なような気がした。
「ですが、もしかしたらリヴァルトさんならそれの抑止力になれるのかもしれません。だからこそ、扉が開いたとも考えられます」
 そして通路の奥を見据える。
「どちらにせよ、答えはこの先にありそうです。私が何者なのか、自分でも知る必要があるのかもしれませんね」
 リヴァルトは先へ行く気であるようだった。


 一行は迷ったものの、奥へと歩を進めていった。扉は開かれたが、封印が完全に解けているとは限らない。
 すると、奥の方に人影が見えた。青いショートカットの――ミニスカメイドである。明らかにこの場に不釣り合いだ。その背後には広間が広がっているようだった。
「なんでこんなところにかわいいメイドさんがいるんだ?」
 疑問を感じつつも、周は反射的に駆け出していた。
「ちょっと周くん!?」
 それを引きとめるパートナーのレミ。
「対象を確認。これより照合を開始します」
 メイドが告げる。
「該当データなし。排除します」
 次の瞬間、周はメイドによって弾き飛ばされた、素手で。視認不可の速さであった。それを後ろにいたレミがかろうじて受け止める。
「また敵かよ!?」
 通路に立ち塞がるそれが封印されたものにも思えたが、それにしては違和感があった。
『第五次計画被験体01830――通称、アズライト・ゼクス』
 ノインが前に出ていく。
「照合開始。該当データ有り。第四次計画被験体0073。通行を許可します」
 目の前のメイド――アズライトの言葉に対し、ノインが何事かを伝えた。
「認証モード、解除いたします」
 メイドが広間の中に入り、通路の脇で待機し始めた。
「どうなってるの?」
 アリアが声を漏らした。
『認証システムを解除した。これは、第五次計画の「失敗作」五体の一体だ。人の形を保っているのはこれも含めて十体だけしかない』
 ノインは詳しくは語らない。釈然としないながらも、一行は広間へと足を踏み入れた。

            ***

「なんだ、これは?」
 封印の扉手前の実験室を調べていた悠姫は、棚の間に挟まっていたものを発見した。それは、写真としか形容出来ないものだった。
「うーん、林間学校の集合写真?」
「そんなわけないでしょ!」
 月実とリズリットは相変わらずの反応だった。
 写真に写っているのは、十数人の年格好もバラバラな、女性。ほとんどは少女であるようだ。それと一緒に、白衣を着た大人の男性と女性がいる。
「これが、ここの科学者と実験の被験者なのか!?」
 悠姫の受けた衝撃は大きいものだった。そこにあるのはあどけない笑顔を浮かばせる少女と、それを見守るかのように優しい顔をした二人の大人だった。男の方はおそらく四十代くらいだから、おそらく彼が研究の責任者なのだろう。
「人体実験を行ってたくらいだから、もっとおぞましい科学者を想像していたが……人の良さそうなおっさんだな。それにこっちは助手か? こっちもマッドな実験に似合わないおしとやかな感じだ」
 日和もそれを見て思わず声を漏らす。
「狂気に走ったようには見えない。場所も研究所の中で撮られたようだ……戦争が、この人達を変えてしまったのか」
 良心を持たない人間の顔はそこになかった。そこで悠姫は考える。むしろ被験者が自発的に実験に協力していた可能性を。
「それほどまでに、この国を守りたかったんだろうな」
 思わず呟いた。その写真を見たら、非人道的な実験を強制しているようには思えなかったのだ。
「……にしても、静かになったな」
 日和が気付いた。通路の奥の方から戦闘音が聞こえていたが、いつの間にか止んでいる。
「まだ油断は出来ませんよ」
 彼のパートナーのマール・ダンウッディ(まーる・だんうっでぃ)が言う。
「分かってる。さて、どうやらこの先にも何かあるようだな。そろそろ俺も行くとするか……この写真の真実が分かるかもしれん」