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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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2-02 黄金の鷲、参戦

 本営。
 目下、各戦地へ仕向ける兵の編成を行う、本営代表の戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)ら。前回、街道一帯の兵権を握っているクレーメックは、街道以南つまり、オークスバレー方面へ送る兵の編成を。(戦部、クレアもそちらに兵を分ける。)
 クレアは、戦部と共に、北の方より近付いている敵へあたる編成を行っていた。

 そんな中、本営に、自警団【黄金の鷲】を率いてきたエル・ウィンド(える・うぃんど)の姿があった。
 エルは前回に、クレア少尉の遣わしたエイミー・サンダース(えいみー・さんだーす)を通して話を持ちかけられてもいたこともある。それは、消防団としての役割に関してのことであったが……
「黄金の鷲も戦いに加わる?」そのクレア少尉が、エルと話しているところ。
「ありがたいことだ。だが、あなた方の本質は、そもそもは自警団。進んで戦闘に出る必要性まではないのでは。エル殿、どういった心境で?」
 三日月湖の民の不安と不満。結局、それを解消するには、三日月湖へ向けて進軍してきている黒羊側の軍勢をどうにかせねばならない。エルはそう考えたのだ。無論、クレアも言う通り黄金の鷲はあくまでも自警団であり、エル自身も思うようにまともに前線で戦える力はない。
「教導団は軍隊だからな。そういう役目は、私達がする」
 と言うが、エルや、民の中にも、三日月湖を自分達の手で守ろうという意志の者がいる。
「そうか。わかった。無論、エル殿は優れた魔法使いであるし、中には腕を頼りに生きてきた食い詰めもいることであろうし……」
 また、エルは、数や力において不利なこちらが、敵を迎えうつにあたっての意見を進言する。
「問題は、大国の黒羊郷とドストーワが同盟を結んでいることだと思う。更に、ならず者も加えて三軍。
 だけど、この同盟を崩すことができれば、勝てるだろうと思うんだ」
「それだな。私も、思う」
「私に、些かの考えがあるですぅ」
「パティ? 本当か。エル殿、今回、北の戦線に本陣からの援軍を率いさせる、パティ・パナシェ(ぱてぃ・ぱなしぇ)だ」
 戦部配下のグスタフ・アドルフ(ぐすたふ・あどるふ)も援軍の指揮官として、併せて500を岩城に届ける。
 更に、騎狼部隊が、三日月湖に攻め込んでくる敵の迎撃にあたる。
「そうか。騎狼部隊が……」
 エルは、戦いに加わるにあたって、自らが携えてきた策があると言う。それを、こっそりクレアに伝えると、
「なるほど。そうか、それなら騎狼部隊との連携が取れるかも知れぬ。
 後ほど、騎狼部隊を率いる林田殿を紹介しよう。黄金の鷲は、これと共に、とくに三日月湖に敵が侵入することのないよう、戦ってもらうことになるかな。自警団としての役目にも相応しかろうと思う」



2-03 孔中尉

 各方面への編成が終わり、今回の戦略・策略等についても一通り話し終え、本営チームがひと息ついたところ。
 更に、本営を訪れる者があった。
「何? 新しく、本国の方から送られてきた者がいる?」
「いかなる人物だろう」
「ここへ通すのだ」
 入ってきたのは軍服の女性、軍人らしく礼節もわきまえた者であるらしかった。
「孔中尉であります!」
「!」「!」「!」
「……どうされたでありますか」
「中尉? ええっ??
 ちゅ、中尉殿でありますかっ」
 三人、敬礼す。
 孔。孔 牙澪(こう・やりん)中尉。
 もしや、李梅琳に続く援軍第三波を率いてきたのか……と思われたが、彼女、孔中尉こと孔 牙澪が連れてきたのは、パンダのゆる族ほわん ぽわん(ほわん・ぽわん)だけのようだった。
「孔、中尉か……」
 孔中尉。一体、如何なる人物なのか。後半へ続く。