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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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兵は詭道なり-03 砂漠の野獣、来る

 さて、再び、岩城。
 天璋院 篤子(てんしょういん・あつこ)は、城内の備蓄物資の状態をこと細かく調べ上げ、リスト化すべく、ここ龍雷連隊のもとへ呼ばれた。龍雷連隊の一員としてではないが、甲賀と仲の噂される(喧嘩仲として)女性である。傷病兵の甲賀を気遣いつつここを訪れ、そのまま内政担当に抜擢されている。
「岩城の内政面はこのわたくしに任せなさい!(頭脳派ですからね。一応)」
 彼女はその才を発揮し、すぐに不足しているものを調べ上げると、とくに医薬品の準備、消化用・手当て用の水の確保に奔走する。それに食料にはもち米を加えて信玄餅を作るということを実施。信玄餅というのは、戦国時代に信玄公が非常食に用いた切り餅がその由来である。
 確かに、この手のことに目を向けられる者が岩城にはこれまでいなかった。
 人材を推挙した甲賀の目の確かさとも言えるか。岩造も、この点甲賀を信頼し、一任しているようだ。
 篤子が、城内の書庫で調査をしていると(あまり広くはないが……そこには岩造の好きそうな武器の本やオモチャの本等、誰が持ち込んだのかエロ本等があった)、
「うーん。持ち出されたのかしら、この城の説明書がないなんて。
 改築・改修の記録張が一部残されてますね。この辺を頼りに、この岩城を本格城砦に改築するため……むっ」
 篤子は、小窓から城の外を見る。でもそれは……「そう。眼前の敵を、排除して後、ですね」
 敵襲だ。
 城のドラが鳴らされ、それを伝えている。
 篤子は、じっと北の地平を見る。
 来る。厳しい装備に身を包み、二又三又の長槍を引っさげた、ドストーワの獣人兵。
 めいめいの得物を手に取った、柄の悪いならず者連中。
 どきどき。高鳴る心臓。
 書庫を出る。
「篤子?」
 甲賀だ。
「察しの通り。敵襲だ」
「ご、ごめんね。甲賀くん。わたくしは、戦闘に加わっても役に立てませんから……」
「ああ。大丈夫。隊長さんと我がいる。それに今回は心強い援軍もいるから、な」
「でも、甲賀くんは?」
「もちろん、我はこの戦いはこれで戦う」甲賀はタクトを振るう手振り。「ここで死ぬわけにはいかないからな。すでに、策は張り巡らしてあるのだ。あとは……」
 城内に敵が侵入したぞ! という声が響いてくる。二人は、頷く。
 甲賀は、篤子の敷設した弓隊を率い、配置の場所へ赴いた。



 岩造は、ウズウズしていた。
「……岩造様。まだです。まだですぞ。援軍が来るまで、私達はひっそりと」
「わかっている。わかっているぞ」
 しかし、敵が侵入したと。
 ……フェイトさんに任せましょう。ファルコンは、目で語った。
「城内に入ったのはせいぜい、数名でしょう。私達は、近付いてきた本隊を一気に叩くのです。援軍が、来ます。待つのです。ときを」
 うむ。岩造も心を決める。……フェイト!!!



「ハァァァァ!!!」
 フェイトの手のスナイパーライフルが炸裂する。
「岩造様! フェイトはここにございます……!」
「おお。フェイト殿、敵を見つけましたか」
 兵が来る。
「ええ。このお一人は、私が仕留めましたわ。あと三名ほどが城内に潜入したようでございます」
 フェイトは、手分けし、見つけ次第撃ち殺すか、できれば捕虜にするよう指示を出した。
「フェイト様。見つけましたぞ、そちらへ行きます!」
 フェイトは、スナイパーライフルを構える。
「負ける訳にはいきません」