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リアクション
「アルディミアクさんを返しなさい」
「やなこったい。こいつは俺が助けて、ココに恩を売って、パンツビデオ出演の取引材料にするんだ」
ソア・ウェンボリスたちの前に立ちはだかって、国頭武尊が言った。その背後で、アルディミアク・ミトゥナの入ったシリンダー部がゆっくりとクレーンで吊り上げられていく。
「そうはさせません」
突進してきたルイ・フリードが、国頭武尊を殴り飛ばした。そのままジャンプすると、クレーンのフックを外してアルディミアク・ミトゥナを助けようとする。
「アーちゃん」
クレーンがあがり、手の届こかいところに行ってしまったアルディミアク・ミトゥナにむかって、ノア・セイブレムがびょんびょんと跳ねた。
「いてててて……。おお、このアングル。これこそ俺の求めていた……」
上を見あげた国頭武尊は、シリンダーが吊り上げられたことによって見えるようになったアルディミアク・ミトゥナのスカートの中を見て、歓喜の声をあげた。
「踏んじゃいなさい、ベア」
「ラジャー、御主人。三秒で終わらせてやるぜ」(V)
喜びも束の間、ソア・ウェンボリスに命じられた雪国ベアにげしげしと顔を踏まれて、国頭武尊は気を失った。
★ ★ ★
「今だよ、この隙に光条砲を破壊するんだ。あんな物、海賊たちにだって必要ない。あんな物があるから、アルディミアクを利用しようとしたり、星拳をほしがったりするんだ。それに、ティセラくんやパッフェルくんを標的にされたらたまらないよ」
桐生円が、オリヴィア・レベンクロンとミネルバ・ヴァーリイとともに、ユニコーンに乗って内湾に駆け込んできた。一気に、ヴァッサーフォーゲルに乗り込んで光条砲を破壊するつもりだ。
「どいてどいてー」
レプリカディップディッパーを振り回しながら、ミネルバを先頭にして、その後にオリヴィア・レベンクロンが続いて船渠の足場を駆け上っていった。追いすがろうとする海賊たちを、桐生円が、二丁拳銃で追い散らす。
「やれやれ、どいつもこいつも、だから傭兵って奴は信じられないんだよ」
仲間のはずの海賊たちを蹴散らしてむかってくる桐生円たちを見て、ゾブラク・ザーディアがつぶやいた。光条兵器についた取っ手をつかみ、肩越しに大きく振りかぶる。躊躇することなく、ゾブラク・ザーディアは、大型手裏剣を足場の中程にむかって投げつけた。回転する光の星型が足場を切断して打ち壊す。
「なんてことをするんだよ!」
倒れゆく足場で桐生円が叫んだ。パートナーたちとともに崩れる足場からユニコーンで飛び出す、そのまま内湾に飛び込むと、降ってくる木材を避けて急いで逃れていった。
「大丈夫? こっちだよこっち」
遠当てで落ちてくる足場を弾き飛ばして桐生円たちを守りながら、メイコ・雷動が桐生円たちを手招きした。
「もーう、やだあー。もうちょっとだったのにい」(V)
びしょびしょになりながら、桐生円たちが水からあがってくる。
「それよりも、姐御をなんとかしないと……」
メイコ・雷動は、ゆっくりとヴァッサーフォーゲルに近づいていくアルディミアク・ミトゥナのシリンダーを見ながら言った。
「出港の準備を急がせろ」
ディッシュを使って戻ってきたヴァイスハイト・シュトラントに、ゾブラク・ザーディアが命令した。
「はっ」
ヴァイスハイト・シュトラントが船に残っている部下たちにてきぱきと命令を下していった。アルディミアク・ミトゥナの入ったシリンダーを船倉に積み込み次第、接続は後回しにして出港するつもりだ。
「今切り離すわけにはいきません」
吊り上げられたシリンダーに捕まったまま、ルイ・フリードが困ったように言った。この高さから落下したら、中にいるアルディミアク・ミトゥナを傷つけてしまう恐れがある。
「僕がなんとかしよう」
海賊たちにむかってミサイルを乱射していたリア・リムが、慎重にレールガンの狙いをクレーンのアームに定めた。完全に破壊してしまっては落下してしまう。動かなくするだけでいいのだ。ここは精密射撃が要求される場面だった。リア・リムは、ゆっくりと動くクレーンに、慎重に狙いを定めていった。
そのとき、突然内湾の岩壁が凄まじい勢いで吹き飛んだ。ソア・ウェンボリスたちが突入してきたときとは比べものにならない。
「シェリル、どこだぁ!」
ココ・カンパーニュが、大音声で叫んだ。思わず、内湾の中の大気が震える。
「やれやれ、やっとやってきたか。こっちだ!!」
待ちくたびれたというふうに、トライブ・ロックスターが携帯を通じて千石朱鷺に合図を送った。「あっちです」
千石朱鷺が、クレーンに吊られたシリンダーを指さした。
「シェリル!!」
ココ・カンパーニュが走りだす。
「やれやれ、護衛するにも追いつかないですな」
わずかに苦笑しながらも、道明寺玲がココ・カンパーニュを狙ってくる海賊を必殺の薔薇で打ち倒していった。
「イングリッド・スウィーニー、敵を排除しなさい」
「分かっているのだよ」
機関銃を駆使しながら、イングリッド・スウィーニーが援護をする。
「あーらよっと」(V)
トライブ・ロックスターが、ついさっきまでヴァッサーフォーゲルにむかって動かしているを装っていたクレーンを、ココ・カンパーニュのいる方へと急いでむけた。
「動きが変わったのであるか。しまった!」
レールガンのトリガーを引いたリア・リムが叫んだが、手遅れだった。発射された弾丸が、アームのフレームをかすめ、衝撃でクレーンのアームがひしゃげ始めた。
「シェリルが!」
それを見たココ・カンパーニュが悲鳴をあげた。
「このままでは……」
シリンダーにしがみついたルイ・フリードが身を挺してでもアルディミアク・ミトゥナを守ろうと、しっかりとその身でシリンダーをつつみ込もうとする。そのとき、今まで微動だにしなかったアルディミアク・ミトゥナの表情が、わずかに変化した。
「アルさん、起きてください、アルさん!!」
ルイ・フリードは、必死にアルディミアク・ミトゥナに呼びかけた。
「誰か……!」
ココ・カンパーニュが星拳ジュエル・ブレーカーを高く掲げて叫んだ。
「受け取ってください!」
安芸宮和輝とアンドリュー・カーが爆炎波を、秋月葵と神代明日香が光術を、ココ・カンパーニュにむかって放った。
「アブソーブ!」
ココ・カンパーニュが、そのすべてを星拳エレメント・ブレーカーで吸収した。
「間にあえ、間にあえ、間にあえ……」
全速力で、ココ・カンパーニュはアルディミアク・ミトゥナのシリンダーが落ちてくる場所にむかって走った。
「つつみ込め、ウィンド・シェードよ!!」
ココ・カンパーニュが、激しい気流の渦を放って、落ちてくるシリンダーをつつみ込んだ。落下の勢いが止まったが、落下その物は食い止められない。いったんは制止したものの、横倒しになったシリンダーが落ちてくる。
「落とすかあ!」
ドラゴンアーツを全開にして、ココ・カンパーニュが落ちてきたシリンダーを真下で受けとめた。とはいえ、全体の重量は相当の物だ。瞬間が支えられただけではもたない。
「ま、間にあったぜ」
ゼイゼイ言いながら、雪国ベアがほっと安堵の息をついた。パワードスーツの力を駆使して、ぎりぎりでシリンダーをつかんだのだ。
「落としはしませんとも……。せいやあ!」(V)
雪国ベアの反対側では、シリンダーから素早く飛び降りたルイ・フリードが、その怪力を遺憾なく発揮して支えていた。
「早く、下ろしませんと」
道明寺玲とイングリッド・スウィーニーが、ガードラインを敷いて三人がシリンダーを地面に下ろすのを手伝った。