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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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【十二の星の華】双拳の誓い(第6回/全6回) 帰結

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「なんでなんでえ。せっかくお宝を探しに来たって言うのに、高そうな物って言ったら、見つけたこの盾と剣だけかよ」
 アルディミアク・ミトゥナのウィング・シールドとウィング・ソードのセットをかかえたテクノ・マギナが、人影の見えなくなった内湾を見回してぼやいた。
 トレジャーセンスに導かれるままにここまでやってきたのだが、何やらお宝っぽい機械はめちゃくちゃに壊されている。
「まだ一人残っているようですが」
「放っておけ。発進しろ」
 テクノ・マギナの姿を見咎めたヴァイスハイト・シュトラントに、ゾブラク・ザーディアが命じた。
「機晶エンジン始動。ヴァッサーフォーゲル、発進する!」
 ヴァイスハイト・シュトラントが朗々と命じた。
 内湾の船渠に係留されていたヴァッサーフォーゲルの船体がゆっくりと上空にむかって浮遊していく。水面を離れた船体底面から、水が音をたてて零れ落ちていった。
 テクノ・マギナがあわてて身を隠す。そのとき思わず手放してしまったウィング・シールドが、ひとりでに飛んで行ってしまう。
「ああ、お宝が……」
 あわてて手をのばすテクノ・マギナの視界から、あっと言う間にウィング・シールドはその姿を消してしまった。
「光条砲にカートリッジをセットしておけ。海賊島の上に出るぞ」
 ゾブラク・ザーディアの言葉とともに、ヴァッサーフォーゲルが空に舞いあがった。
 
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「畜生、しつこく追って来やがるぜ。ここは、俺たちに任せて先に行け。二人がここを出るのが俺たちの最大の目的なんだからな」
 キメラの死骸の転がる広間で立ち止まると、ラルク・クローディスがココ・カンパーニュたちに言った。海賊たちは、海賊船に乗せていけない巨大ガザミをすべてココ・カンパーニュたちの追っ手にさしむけていた。戦力を集中されないように、ある程度分散して逃げだしたのだが、ゾブラク・ザーディアは、ココ・カンパーニュとアルディミアク・ミトゥナを集中して狙うような命令を下したらしい。バラバラに逃げたのが、やや裏目に出てしまったようだ。
「大丈夫、もう戦えるぐらいには……」
 アルディミアク・ミトゥナが、姿勢をしゃんとさせると、軽く手を掲げた。さっきからずっと呼んでいたウィング・シールドが、ようやく呼びかけに答えてその手許に飛んでくる。
「足手まといだ。早く行け」
 ラルク・クローディスが、わざとらしい態度で迷惑そうに言った。
「分かった、恩に着る」
 まだ足下のおぼつかないアルディミアク・ミトゥナをうながして、ココ・カンパーニュは先を急いだ。軽くラルク・クローディスに一礼してから、アルディミアク・ミトゥナがそれに従う。
「なんか、やけに丸くなった気がするが、気のせいか?」
 ちょっと戸惑い気味に、ラルク・クローディスはアルディミアク・ミトゥナを見送った。だが、すぐに振り返ると、追いかけてきた巨大ガザミ共をキッと睨みつける。
「殿は俺が務めよう。メティスは索敵を怠るな。ノアは……アルディミアクにくっついてろ」
「もちろんだよ」
 しっかりうなずくと、ノア・セイブレムが駆けだしていく。ミサイルを全弾使い果たしたメティス・ボルトは、ふよふよと浮かびながら後ろ向きに進んで行った。
「さあ、かかってきやがれ、カニ共」
 ラルク・クローディスは身構えると、近づいてきた巨大ガザミを光条兵器の一撃で殴り潰した。
「おっさん、この間裸見たのはチャラにしてあげるからさあ、ちょっとジャンプしてくれないかなあ」
 まだ残っていたマサラ・アッサムが、十数匹の巨大ガザミを前にしたラルク・クローディスにむかって言った。
「お願いしますね」
 マサラ・アッサムとならんだペコ・フラワリーも頼む。
「お前たち何を……、よく分からねえが、とにかく分かった!」
 ラルク・クローディスはキメラの死体を踏み台にすると、天井近くまで大きくジャンプした。その瞬間を逃さず、大上段に剣を構えていたマサラ・アッサムとペコ・フラワリーが、同時に轟雷閃を巨大ガザミの群れにむかって放つ。迸る二本の雷光が、無数に枝分かれして巨大ガザミたちを襲った。
 一瞬の後にラルク・クローディスが着地する。
「後は任せたよ」
 さっさと踵を返して、マサラ・アッサムたちがココ・カンパーニュたちを追いかけていく。
「おうよ、任せとけ」
 ラルク・クローディスは、まだ痺れている巨大ガザミたちを余裕で粉砕していった。
 
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「やっときましたわあ。よかったあ、無事助け出せたのですねえ」
 脱出路を確保していたチャイ・セイロンが、洞窟の出口でココ・カンパーニュたちを待っていた。陽動に散っていたリン・ダージたちも、敵がすっかり姿を消してしまったので合流して退路を守っていた。また、運よく彼女たちを見つけてなのか、一隻の海賊船がすぐ近くに来ていた。
「海賊たちに潜入していた者が、一隻奪ってくれたらしい。あれで脱出しよう」
 最初の上陸地点から戻ってきていた高月芳樹が説明した。
「空を移動できる者は、船の護衛を。すぐに出発だ」
 高月芳樹にうながされて、ココ・カンパーニュたちは海賊船に乗り移った。
「ようこそ、わたくしの船、ロザリィヌ号へ。わたくしが船長のロザリィヌ・フォン・メルローゼですわ」
 高笑いを浮かべながら、ロザリィヌ・フォン・メルローゼがココ・カンパーニュたちを出迎えた。
「ささ、どうぞお姫様」
 七尾蒼也が、横行にポーズをつけて、アルディミアク・ミトゥナたちを渡り板に導く。
 ゴチメイたちを乗せると、他の者たちは船の周りで護衛についた。
「さあ、急ぎますわよ。発進!」
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼは、ロザリィヌ号と勝手に名づけた準飛空艇の海賊船を浮上させて空中を疾走させた。
 
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「あれは、敵か?」
 新たに浮上してきた中型の海賊船を見て、緋桜ケイが身構えた。
「よく見るのだ。見張り台に見慣れた者が立っていよう」
 あわてるなと、悠久ノカナタが注意をうながす。
「やっほー」
 ロザリィヌ号のマストの上では、リン・ダージがお気楽に手を振っていた。
「あの船の護衛に回るわよ」
「了解したのだ」
 カレン・クレスティアの言葉に、ジュレール・リーヴェンディが答えた。
「フニン、ムギン、周囲の警戒を。敵の数は減ったとはいえ、まだまだ少なくはありませんから」
 空飛ぶ箒に乗った月詠司が、使い魔のカラスたちを放った。