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幸せ? のメール

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幸せ? のメール
幸せ? のメール 幸せ? のメール

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第9章 昼休み・校舎内(2)

 コンコン、と形ばかりのノック音がして、環菜は手元の書類から目を上げた。
 開いたドアの内側で坂上 来栖(さかがみ・くるす)が立っている。
「何の用なの? 坂上神父」
「環菜会長、お1人ですか? てっきり何人かガードがついていると思ったんですが」
 許可も得ず、さっさと中に歩を進める来栖に、環菜はあきれかえって椅子に凭れる。
「ちゃんといるわよ、私たちがね」
 いつの間に後ろに回っていたのか、美羽と月夜がそれぞれの武器の照準を来栖にあてて立っていた。
「刀真たちは、昼食を取りに行っているだけよ。すぐに戻るわ」
「ああ、おっかないお嬢さんたちだ。やめてください、私は犯人じゃありませんよ」
 本気で怖がっているとも思えない、大げさな身震いで、来栖は環菜の机を回り込むと、窓を押し開いた。
「エアコンもいいですが、体のために少しは空気を入れ替えないとね」
「それで、何しに来たのか言いなさい」
 窓に腰掛けた来栖を見て、環菜が命じる。
「校庭で、なかなか面白いイベントをしていますね。こうして窓を開けると、環菜先生にも聞こえてくるでしょう? 蒼空学園って、ほんと、飽きない学校ですね」
 たしかに、窓を開ければ校庭の告白イベントの声が、小さいながらも聞こえてくる。
「もしあれに参加されたとしたら、環菜先生は一体だれに……いや、何に愛を叫ばれますか?」
 にっこり笑う来栖。環菜は冷め切った表情で、ニコリともしない。
「って、訊いたところでまともに答えてはいただけないんでしょうね」
「……用がないなら出て行きなさい、坂上神父。今のところ、神父は必要としてないわ」
 くるっと椅子を回転させ、机に向き直って先までの書類を持ち上げる。
「どいてちょうだい。窓は防弾なの。あなたは会長を危険にしているわ」
「はいはい、っと」
 月夜に促され、ぴょんと窓から飛び降りる。
「そうですねー、学園内を自由に捜索する許可と、できたら2人の女生徒の名前を教えてください。あ、あと、何かあったときの連絡網に私の携帯の番号を」
「それだけ?」
「とりあえず、今は」
 あなたに神の祝福があらんことを。
 名前の書かれた紙を指に挟んで、来栖は校長室をあとにした。

「くっそー、どうして俺のところにメールが来ないんだっ?」
 こんっっっなに待ってるのに!
 今日何度目かのメールチェックをしながら、風祭 隼人(かざまつり・はやと)はぼやいた。
 さっきから1分置きにチェックをしているが、友人からのメールはともかく例のメールらしきものは1通も届かない。
「この件に便乗して、ルミーナさんへの俺の気持ちが本気だって、知ってもらうつもりなのにッ」
 もうメールなしで行くかっ?
「普段の行いがものを言ってるんじゃなーい?」
 とはアイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)。キッ、と隼人ににらまれても、平然と後ろを歩いている。
「……なんでついてくるんだよ」
「あーら? 偶然ねぇ。私もこっちに用があるのよ」
 ほほほほほっ。
(隼人の邪魔をするために決まってるじゃないの、ボケナスッ)
 隼人が右へ曲がれば右に行き、サッと左に行けば左に行く。階段も下りて、教室に入って…。
「ついて来るなってば! トイレまで入って来る気かよッ」
 そう叫び、隼人は男子トイレのドアをガシャンと閉めた。ここならいくらアイナでも追ってこれない。きっと出てくるのを待っているに違いないアイナをまくため、隼人は窓から脱出を図った。
 だがもちろんアイナはそんなこと、お見通しだ。隼人の考えそうなことなどすぐ読める。
(隼人の向かってる場所なんか、分かりきってるんだからっ)
 アイナはトイレのドアを閉められてすぐ、きびすを返して校長室へ向かった。
「万が一、隼人みたいなボケナスがルミーナさんと付き合うことになったら……そんなの、ルミーナさんが不幸になるの目に見えてるじゃない! 私はルミーナさんの幸福ために、隼人の邪魔をするのよ!」
 これは使命感! 私の存在理由! きっと、私が隼人なんかのパートナーになったのだって、これが理由だからよ!
 アイナは戦闘も辞さない構えで、光条兵器の銃剣を手に、校長室へ続く廊下に立ちふさがった。
「……くっ。アイナのやつめ、本気だな…」
 トイレの窓は意外と小さい。脱出に手間取った分遅れをとり、隼人は廊下の角から様子を伺う側になってしまった。
 さて、どうするか? アイナを突破しなければルミーナさんのいる校長室にはたどり着けない。
 今日こそルミーナさんに玉砕覚悟の告白をするつもりだが、その前にアイナに玉砕されるのは避けたい。
 だが手持ちの武器といえば冷線銃で、アイナが隼人の分の光条兵器を出してくれるはずもない。あたりまえだが。
 第一。
(ヘタにアイナと闘ったりして、この廊下を破壊しまくったら、環菜会長が怖いしなぁ…。ルミーナさんも許してくれないだろうし)
 それは避けたい。
 うーん、うーん、うーん…。
「こうなりゃ女装してでも…っ!」
 とか口走るあたり、結構追い詰められているようだ。
 アイナの壁をどうやって突破するか、必死になって考え込んでいた隼人の耳には、背後から近づく足音が全く入っていなかった。
「あら、隼人さん」
「どわっ!」
 突然のルミーナの声に、心臓が止まるどころか口から飛び出していってしまいそうなくらい驚いてしまう。
 キリッキリッキリッと機械のように振り向いた隼人の前には、にこやかにほほ笑むルミーナが立っていた。
「どうかしましたか? 隼人さん。このような場所でお会いするなんて」
「ルミーナさんこそ。てっきり校長室にいらっしゃると…」
「ちょっと資料を取りに図書室へ。今日はたくさんお手伝いしてくださる方がいらっしゃるから、私も安心して席を外せるんです」
「そうですか…」
 ラッキー♪
 隼人は胸の中の悔しがるアイナにVサインをして見せる。もちろん顔には出さないが、勝利感に頬がゆるみそうになった。
「隼人さんは会長にご用事ですか? 今日の会長は会食も全てキャンセルなさいましたから、校長室におられます。今、お会いできるようにとりはからいますね」
「わわっ、ルミーナさん、ちょっと待って!」
 肘を取り、アイナの立つ廊下へ出ようとしたルミーナをギリギリで阻止する。
「隼人さん?」
 ルミーナの不思議そうな声に、そこで初めて隼人は自分がルミーナに触れていることに気付いて、あわてて手を引っ込めた。
(うわっ……うわっ……触っちまったっ。すごくやわらかい、ルミーナさんの腕…)
「俺は、ルミーナさんに用事があって、来たんです」
 指先に残るルミーナの感触に、ジンジンきながら言う。
 思いつめた表情で自分を見ている隼人に、ルミーナはかすかに首を傾げ「ではこちらに」と別室へ彼を招き入れた。
 そこは、重要なビジネス客との会談にしばしば使われる、第二来客室だった。
「それで隼人さん、どういったご用件ですか?」
 ゴージャスな部屋。
 自分を見上げているルミーナ。
 邪魔なアイナもいない。
(これは絶好の機会じゃないかっ????)
 この瞬間を何かに邪魔される前に、言え! 言うんだ隼人!
 隼人はルミーナの手から書類を奪うとソファに置き、彼女の両手を握り締めた。
「ルミーナさん、俺、これまでずっとあなたに言ってきましたね。あなたのことが好きです、と。俺、真剣なんです。あなたに触れたい、あなたを抱き締めたい、あなたにキスしたい。あなたの恋人になりたい…!
 俺は本気で、1人の男として、あなたが好きなんです。ルミーナさん、どうか俺と付き合ってください!」
 言った……言ったぞ…! ついに言った!
 間違えようのない、絶対に誤解のない告白。ついにそれを口にしたことに、過呼吸を起こしてしまいそうだった。心臓はちゃんと打っているのか、止まっているのか、それすら分からないくらいに。
「…………」
 無音の中、ルミーナは、隼人と見つめ合っていた。
 おそらくは数十秒。もしくは数分。
 そっと、隼人の手の中から、ルミーナの手が引き抜かれる。ルミーナは隼人から距離を取り、向き直った。
「ルミーナさん…」
「隼人さん。とてもすばらしいお言葉をありがとうございました。そんなふうに思っていただけていたとは、全くの不明でした。そのことは大変申し訳なく思っています。
 あなたの心のこもったお言葉に、私も同じくらい、心をこめて返さなくては、失礼というものですね」
 これで自分の運命が決まるのだ。
 隼人は気が遠くなる思いで、ルミーナの言葉を待った。

「いつ来ても、ここはにぎやかですねえ? 連日猛暑日で暑いのに、叫んでいる皆さんの元気なことといったら。告白大会ですか、これは」
 神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は階段を上がりつつ、外から聞こえてくる歓声に苦笑した。
「皆さん、あんなに叫んで、声枯れないんでしょうか?」
 翡翠について歩きながら、柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)は妙なところを気にして呟く。
「そうですね。
 それにしても、行方不明になるとか、スマキになるとか。学園内に犯人が横行している、本来こういう事件が起きたなら、とても穏やかではいられないはずなのに。お祭り騒ぎにしてしまう、これが蒼空学園の生徒たちのすごいところでしょうか」
「俺はてっきり暑さでみんな頭おかしくなったのかとばかり思ってたぜ。告白ってーのは聞いてる分には楽しいが、さすがにあそこまで度が過ぎると、結構うるせえもんだな」
 とはレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)。せっかくの美貌の持ち主なのに、その雑な口調のせいで、かなり損をしている。本人は「損」とは思っていないかもしれないが。
「にしても、会長も存外ケチくせーよな。監視カメラの映像ぐらい、見せたって減るもんじゃなし。何が「あなたたちには見る資格がない」だよ」
 ぶつぶつ、不満を吐き出す。
 朔と刀真と美羽がいなければその場で猛烈抗議したんだが、あの3人からの「会長に不敬をはたらくと、死あるのみです」とばかりの殺気による威嚇が、レイスに自重を促したのだった。
 多分に、今こうして呟いているのも、その3人への不満が混じっているからだろう。
「仕方ありません。事実、自分たちは蒼空学園の生徒ですらないんですから」
 角を曲がり、校庭に面した廊下へと入る。
 その先、思いつめた表情で外を見つめる女生徒2人を見つけて、翡翠は足を止めた。
「女同士の方が話しやすいでしょう。わたしとレイスは喫茶室にいます。美鈴、頼みますよ」
「はい、マスター。了解しました」

「アヤーっ、好きです! 大好きです! 私はずぅっと、アヤの剣であり盾ですからねーっ」
 校庭に設置された壇上で、知らない女生徒が叫んでいた。
 この告白大会が始まって以来、いろんな人が台に上がり、いろんな告白をして、照れたり、笑ったりしている。周囲を取り巻く人たちも、みんな、一緒になって笑ったり、冷やかしたりしているけれど、一体感があって、校庭中があたたかい。
「……わたしたちも、もしかしたらあんなふうになれたのかしら…?」
「サヤカ?」
「口にすることを恐れなかったら、みんなに笑われるんじゃないかっておびえたりしなかったら、あるいは」
 窓にあてた手に、キュッと力がこもる。
「あなた、後悔してるの?」
「ううん。黙っているのを決めたのは自分だもの。ただ…」
「えーと、サヤカ・カガミさんとリエラ・マイスティーリアさん?」
 突然名を呼ばれ、ビクリと身を震わせた2人の女生徒は、同時にそちらを向く。
 そこには、声と同じ、柔和な笑顔を浮かべた青年と少女が立っていた。
「はじめまして。俺は御凪 真人といいます。こちらはセルファ・オルドリン。よかったらお話を聞かせていただけませんか?」

「あら。先を越されてしまったわね」
 反対側から美鈴がにこやかに話しかける。
「私、柊 美鈴といいます。薔薇の学舎から参りましたの」
「……サヤカ・カガミです」
「リエラ・マイスティーリアといいます」
 リエラと名乗った女生徒が、もう1人の女生徒を背後に庇うようにして、一歩前に出て名乗る。無意識かもしれないが、それがそのまま2人の力関係のように美鈴には見えた。
「お2人は、もしかして昔からのご友人かしら?」
「はい。それが何か?」
 攻撃的な返答は、美鈴を敵とみなしている証拠だ。
「いいえ。ただのお知り合いにしては仲がよろしいなと思っただけ」
(行方不明になった2人の生徒は見知らぬ者同士ではなかったのね。面白いわ)
 次に何を言われるのか、警戒する2人に、他意など一切ないと言いたげにほほ笑んで、美鈴は提案をした。
「ねぇ、いつまでも廊下で立ち話も何ですから、喫茶室に場を移しませんか? そちらのお2方もご一緒に」
「……ちょっと、真人、どうする? なんかうさんくさそうよ、この人」
 ぼそぼそ。
 美貌の持ち主というだけではない、その背後にちらちらと見え隠れする冷酷さを見抜いて、セルファが囁く。
「放課後にでもした方がいいんじゃない?」
「――いや、ちょうどいいかもしれないよ。目的は一緒みたいだから。
 ぜひ俺たちもご一緒させていただきます」
 真人の返答に、美鈴はにっこり笑って道を開けた。
「ではどうぞ。皆さん参りましょう」

 場を移して早々、それは起きた。
 いつもなら昼食をとる生徒でにぎわっているはずの喫茶室は、今日ばかりは閑散としており、翡翠とレイス以外で埋まっているテーブルは3つほどしかない。
 そのうちの1つで大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)レイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)が、過去スマキにされたことのある男子生徒を3人ほど呼び出して、そのときの状況を聞きだそうとしていたのだが。
「……あっ」
 喫茶室に入った直後、彼らを見て、サヤカが小さく声を上げた。
 あきらかに失態と分かる表情で唇を噛んでいる。
(ふーん。あっちとも知り合いなのね。これも共通点かしら?)
「さあ、あちらの空席へ移動しましょう」
 気づかなかったフリをして、美鈴は翡翠とレイスにも声が聞こえる距離の、空いたテーブルへと女生徒たちを誘導した。

 入ってくる女生徒に気づいた途端、男子生徒の表情が変わったことには泰輔も気づいた。というより、こちらは隠す気もなくあからさまだったので、分かったのだ。
「よーお、リエラじゃん」
 一番最初にスマキになったという、アスという名の男子生徒が気安く声をかける。
「……こんにちは」
「おまえも訊かれてるの? まいったよなぁ、今日は。休憩時間になる度に次々来るんだもんな」
「そうね」
 いかにも警戒の声で無愛想に返事をすると、テーブルの横を通りすぎていく。
「知り合いやろか?」
「あー、うん。なんだろなー? いつもはもっとあかるいんだけどなー。相当不機嫌だぜ、ありゃ」
 こことは対角にあるテーブルにつくまで見て、頭をふりながら泰輔たちの方に向き直った。
「そりゃあいつらだって、俺たちと同じで朝から何度も同じこと訊かれてるんだろうしさ。うんざりもするよ」
 答えたのはバルド。2番目に吊られた生徒だ。
「あんさんも知り合いなんや」
「え? 知り合いってほどでもないなぁ。顔見知り程度? どっちかっていうと、アスの友人だから」
「……泰輔さん、ちょっと」
 隣のレイチェルが、泰輔に耳打ちをする。
「私、あちらに行ってきます。彼女たちの話を聞くのにも、ちょうどいいと思いますから」
「ええよ。ここは俺だけでなんとでもなるさかい。あんじょう頼むわ」
「はい。では皆さん、失礼します」
 優雅なしぐさで音もたてず席を立ち、テーブルを縫って歩く。なんとはなしに見送って、視線を元に戻した矢先。
「やあ、すみません。俺も同席していいですか?」
「うわ…っ」
 先までレイチェルのいた席に、ちゃっかり真人が腰を下ろしていた。
「あ、あんさん…」
 いつの間に?
「いやぁ、セルファに追い出されちゃいまして。なんでも、女の子は女の子同士の方が話せるからだそうです」
 美鈴の横の席からセルファが追い払った理由はそれだけではなかったが、どうやら真人には内緒のようだから教えない。
「ま、まぁええわ」
「それで、どこまで話してたんです?」
「あっちの2人とこっちの2人が知り合いやったっちゅうとこや」
「すみません」
 泰輔の説明に、パッと3人目の生徒・カーセルが手を挙げた。
「僕もあの2人、以前から知ってます。というか、僕はサヤカの方かな。部活が一緒なんで」
「へーぇ。じゃあ5人とも知り合いなんや。こりゃ奇遇やな」
 泰輔の目がキラリと光る。テーブルで組んだ手に顎を乗せ、3人を見た。
「5人とも、同じ部活なんでっか?」
「ううん。アスとリエラはそうだけど」
「俺は陸上。アスたちが馬術部でカーセルたちが登山部」
「うん」
「……違うたかぁ」
 何やねん? こいつらの共通点って。
 クシャクシャッと頭を掻く泰輔の前で、3人は部活の話に華を咲かせている。
「泰輔、俺たちが来る前に分かったことはありますか?」
「ああ? こいつらが友達同士とか、友達の友達とかゆうことぐらいやな。ここにはおらんけど、ほかにもスマキになったやつらの名前が話ん中によう出てきよったわ。けど、一緒につるんどるダチっちゅうわけでものうて、ただの顔見知りっちゅうのもおるんや。名前は知っとるけんど、口きいたこともないて。
 あとは、口が軽いっちゅうくらいか。相当おしゃべりやで、こいつら。おかげで何訊いても話題が次々移ってって、訊くにならへん」
 泰輔や真人にはサッパリ分からない、全国大会とか学校対抗の話で盛り上がり、すっかり2人の存在を忘れきっているらしい3人に、重いため息が出る。
 この3人には、事件は現在進行形のものではなく、もう過ぎたことなのだ。むしろ嘘がバレてスマキになったのを、ヘタだったからとか、バレバレな嘘をついたからだとか、互いをからかうためのネタにしている感すらある。
「ま、傷になっとらんちゅうのはええこっちゃがな」
 けど、捜索には困りもんや。これやったら面倒でも1人ずつ訊いた方が良かったわ。
「なるほど」
 頭を抱える泰輔の横で、1人真人は何か分かったように頷いた。