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あなたの街に、魔法少女。

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あなたの街に、魔法少女。

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●エピローグ

 さて、その後の動向はというと――。

 結論から言えば、『INQB』は単独での業務が行えない状態に追い込まれてしまった。以下、経緯を追って説明しよう。


「魔法少女とは人々の夢と希望の象徴! 困っている人を助ける弱者の味方のはずよ!
 悪しき資本家の手先となって人民から搾取するなど、魔法少女の堕落よ!」


 そう主張する藤林 エリス(ふじばやし・えりす)が、空京のどこの会社の人でも個人単位から加入出来るという『全空京合同労働組合』(略称:全空労)を結成し、本部の委員長に就任する。
「企業社会の魔法少女は、労働戦術くらい使えなきゃ悪に対抗できないのよ!
 そこで妨害しようとしてるあんたも、組合に入れば仕事の悩みから解放されるわ!」

「ま、マジすか!? ……ちょっと話聞いてみようかなあ……」
 そして、アスカ・ランチェスター(あすか・らんちぇすたー)と共に街頭演説を行い、全空労の必要性を説きつつ、妨害や視察に来た『INQB』のゆる族をも引き込んでいった。

「会社に無茶な要求をされて困っていませんか?
 悪いことと知りながらやらざるを得ない状態に追い込まれたりしていませんか?
 全空労の魔法少女が皆さんのお悩みを解決します! あなたの街に、魔法少女! あなたの会社に、労働組合!
 組合に入って、魔法少女と一緒に頑張りましょう!」



 そして、一定の認知と勢力を確保したのを以て、エリスは『INQB』社長の六兵衛と組合交渉を行い、社員への無茶な業務命令、不正な企業活動の是正を要求した。
「そ、そんな要求、全部通したらこっちがやっていけないッスよ!」
「要求に応じられないというなら、不当労働行為として国に告発しますよ?」
 最初は淡々と交渉を進めていたエリスだが、六兵衛が『国って言ったって、日本以上にグダグダしてるシャンバラ王国に何が出来るッスか!』的な主旨で反論を見舞うと、エリスは魔法少女に変身し、

「愛と正義と平等の名の下に! 人民から搾取する悪しき資本家は、魔法少女エリスがマルクスに代わってお仕置きよ!」

 必殺の魔法でお仕置きを見舞う。
「そ、それがやりたかっただけじゃないッスか……?」
 六兵衛の呟きは、儚く宙に消えた――。

 そんなことがあって、『INQB』はもはや単独での事業継続が不可能な状態になっていた。自前の魔法少女がいないわけではなかったが、どうしたって魔法少女メインの『豊浦宮』に劣る。それよりは、何らかの手段で『豊浦宮』と提携を結んだ方が、社員を路頭に迷わせずに済む。

「……というわけで、『豊浦宮』にお世話になることになったッスけど」
 割り当てられた一室で、書類から顔を上げた六兵衛がこれまでのことを思い返し、ぽつり、と呟く。結局、『豊浦宮』の一角を割り当てられることで、『INQB』は生き残ることが出来た。これからは、『豊浦宮』が魔法少女分野を、『INQB』がゆる族分野を担当することで、事業の効率化を図ることになるであろう。
「……ふわぁ」
 そして、六兵衛が真面目に仕事をしている中、魔穂香は相変わらず魔法少女衣装にジャージを履いて、ソファーに横になってぼんやりとテレビを見ていた。
「魔穂香さん、事務仕事をしろとは言わないッスけど、せめて一日一時間は外に出て動いて欲しいッス。大事な出番の時に体力不足でしたじゃ、シャレにならないッスよ」
「あー……考えとくわ」
「その回答は、やらないって言っているのと同じッスよ! はぁ……せめて、誰か一緒にジョギングの相手でもしてくれる魔法少女がいればいいんスけどねぇ」
 そこまで呟いたところで、六兵衛があ、と思い出したように言う。
「魔穂香さん、こういうのはどうスか?」

 そして、数時間後。
「ま、待ってくださいですー。わ、私、運動は苦手なんですー」
 ジャージ姿で遊歩道を走る魔穂香の、大分後方を息も絶え絶えといった様子で、豊美ちゃんがいかにも走り慣れてませんといったフォームで付いて来る。六兵衛の『せっかくだから豊美ちゃんを誘えばいいんじゃないッスか?』という提案を聞き入れた魔穂香によって、二人のジョギングが実現したのだが、そのあまりの運動音痴ぶりに、魔穂香は呆れつつもちょっと面白くなる。
(なんか……なんて言うんだろう、構いたくなるっていうか、そんな感じよね)
 そんなことを考えていると、ようやく豊美ちゃんが追いついてきた。
「……大丈夫ですか? 今日はここでおしまいにしましょうか?」
「ま、まだ走り始めて5分ですよー。ここで帰ったらウマヤドに笑われますー。だからもうちょっと頑張りますー」
 脚をプルプルと震わせているにも関わらずの豊美ちゃんの発言に、魔穂香は余計に面白くなる。
「……分かりました。じゃあ、あそこの樹まで行きましょう」
 目印の樹を指差して、そして魔穂香が走り出す。そのフォームはしっかりしており、彼女がそれなりに走り慣れていることを証明していた。
(……ま、もうちょっと真面目に、魔法少女やってもいいかもね)
 そう思えるようになったのは、わざわざ自分を訪ねてきてくれた魔法少女とそのパートナー、そして豊美ちゃんの影響があったことは、確実であると言えるだろう――。

『あなたの街に、魔法少女。』 完

担当マスターより

▼担当マスター

猫宮烈

▼マスターコメント

 猫宮・烈です。

 まずは、参加していただきありがとうございます。
 日常だから軽く書けると思いきや、皆様のアクションをどうリアクションにまとめるかに難儀しました(汗
 全員のアクションを全採用、というわけにいかなかったのが残念です(しょんぼり
 アクションは非常に楽しく読ませていただいたのに……!(悔し涙

 やさぐれていた魔穂香も、魔法少女の皆さんと関わることで、多少はやる気を取り戻したようです。
 二人の魔法少女の活躍、そして『豊浦宮』と『INQB』の今後の動向にご期待下さい。
 ……と書きましたが、次がいつになるのかは未定です(汗 色々と忙しい身分でして……(汗

 そんな感じで、手短ではありますが、これにて。(称号と個別コメントの発行で力尽きたとも言う)
 次の機会に、またよろしくお願いいたします。


(5月24日 追記)
 お問い合わせに基づき、リアクションを修正しました。
 ご指摘どうもありがとうございます、申し訳ございませんでした。