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リアクション
★ ★ ★
「こっちですぅー」
楽屋から戻ってきたセシリア・ライトを、メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)が手招いた。フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)とシャーロット・スターリング(しゃーろっと・すたーりんぐ)の間に、ちゃんと席が取ってある。
「お土産はちゃんと渡せました?」
「もちろん、ばっちりだよ」
フィリッパ・アヴェーヌの問いに、セシリア・ライトが元気よく答えた。
「始まるのが楽しみですね」
珍しいお宝がでてきたらスケッチと共に詳細を書きとめて後でブログにアップしようと、付録のお絵かき帳を胸にシャーロット・スターリングがわくわくする。
空京大学の半すり鉢状の講堂には、すでにたくさんの観客たちが入っていた。いつ始まるのかと、ステージの方を見下ろしている。
ステージの左側にはセットが組んであり、鑑定士たちはそこに座るらしく、巨大なプロジェクタも鎮座ましましている。
「ダリルはいつ出てくるのかなあ」
一番前の席に陣どり、さらに双眼鏡を用意したルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、鑑定士として参加しているパートナーを心待ちにしていた。もし手伝いとして呼ばれでもしたら、ステージの上にしゃしゃり出ていく気満々である。
「もう、早く始まらないかしら」
すぐ隣に座っているフィーネ・クラヴィス(ふぃーね・くらびす)の方は、もう興奮がピークというところだ。こちらも、イーオン・アルカヌムが鑑定士として出ているので、関係者席として一番前に座らせてもらっている。もっとも、こちらはヤジを飛ばすのが目的で、ステージに上がる気はさらさらなさそうだった。
どちらがより迷惑かは、これからの展開次第である。
前の方の席には、鑑定士の身内の他にも、依頼人の関係者たちの席も用意されていた。
「エイムちゃん、一人で大丈夫でしょうか……」
依頼人として参加しているエイム・ブラッドベリー(えいむ・ぶらっどべりー)のことをちょっと心配して、神代 明日香(かみしろ・あすか)が、隣に座っているノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)に声をかけた。
「知りません。適当にどうにかなると思います」
自分の本体である魔道書をしっかりとかかえたノルニル『運命の書』がつっけんどんに答えた。
「とても怒ってるんですよ」
あわや、エイム・ブラッドベリーに自分の本体を鑑定品として勝手に持ち出されそうになったので、凄く怒っているのだ。お酒とか、興味のありそうな物が出品されるのは構わないが、さすがに自分自身の値打ちを鑑定されて、あまつさえゴルダに変換されるのはまっぴらだった。
「それにしても、エイムちゃん、いったい何を鑑定してもらうつもりなのでしょうかぁ」
「知りません!」
ぎゅっと魔道書をだきしめて、ノルニル『運命の書』が叫んだ。
「ねえ、狐樹廊はどこ行っちゃったのよ」
「さあ、自分は見ていないです」
リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)に聞かれて、ヴィゼント・ショートホーン(びぜんと・しょーとほーん)があっさりと答えた。
「まさか、鑑定士とか気取って突撃してるんじゃないでしょうねえ。そういえば、ヴィゼントくんも目利きだったのよね」
さすがに、空京稲荷狐樹廊が空京稲荷に怪しいメガネを封印に行ったとは露にも思っていないリカイン・フェルマータが、ちょっと怪しいという目をヴィゼント・ショートホーンにむけた。以前盗賊だったというヴィゼント・ショートホーンであれば、それなりの目は持っているだろう。
「いえ、自分はまだまだ未熟です」
謙遜するように、ヴィゼント・ショートホーンが自制して言った。
――うーん、ここはどこでしょう?
いつの間にか自宅以外の場所に居ることに気づいて、笹野 朔夜(ささの・さくや)が周囲を見回そうとした。が、できない。
ぼんやりと――そう、ぼんやりとしか言いようのない弱さだ――意識はあるのに、身体はまったく動かせない。
それどころか、なんだか、隣にいるアンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)と楽しそうにしゃべっているような気がする。
「もうじき始まりますわ、おばあ様」
――おばあ様!?
アンネリーゼ・イェーガーの言葉に、笹野朔夜が目を白黒させようとして、気持ちだけそうした。
「ええ、あーちゃんと同じくらい私も楽しみですよー」
メガネをかけた優男の姿をした笹野朔夜(笹野 桜(ささの・さくら))が、ニッコリと女言葉でアンネリーゼ・イェーガーに答えた。
何のことはない、鑑定団を見に行きたいというアンネリーゼ・イェーガーの希望で、寝ている間に笹野桜に憑依されたらしい。別に、連れていってほしいと言われれば連れていったのだが、それでは笹野桜が行けないので、勝手に乗っ取ったのだろう。いつものことと言えばいつものことだ。
――二人共、あまりはめは外さないように……。
なんとか、精神感応で笹野朔夜が二人に呼びかける。
「あら、今、空耳が」
「ええ、空耳ですわ」
あっさりと、二人に否定された笹野朔夜であった。
「そろそろだよね」
「はいはい。おとなしく待つのだよ」
バタバタとあわただしくなったステージ上を見てわくわくするキャロ・スウェット(きゃろ・すうぇっと)を、龍滅鬼 廉(りゅうめき・れん)がなだめた。放っておいたら、今にもステージの上に駆けだして行ってしまいそうだ。
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