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水中学園な一日

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水中学園な一日

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第六章 一件落着

 飼育員への引き渡しは、会長の東條 カガチ(とうじょう・かがち)、副会長の小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)、そして佐野 和輝(さの・かずき)達とで行った。中でも一番熱心だったのが、ルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)だったのは言うまでもない。
 拘束されたモンスターや石化されたモンスターを元に戻すと、何度も何度もお願いする。
「お願いですぅ、罰とかはないですよねぇ」
 元より飼育員達もそんな気は毛頭なく、むしろ傷ついたり命を落としたりしたモンスターを気遣う者ばかりだ。
「私達が、もっとしっかり管理しておけばよかったんですから」
 そんな言葉を聞いて、ルナは胸を撫で下ろした。
「行こうか……」
「はい」
 和輝達はイルミンスールへと帰っていった。


 テスラ・マグメル(てすら・まぐめる)がライブを行っていた校庭の一角も、すっかり水が引いていた。
「この一日の終わりに相応しく、少ししっとりした曲で締めたいと思います。夏の昼の夢は……これでおしまい」
 ラストの曲を演奏し始める。踊りつかれたリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)達は、演奏に合わせて手拍子を打つ。曲が終わると、三々五々生徒たちは帰っていった。
「楽しかったですぅ」
「うん、忘れられない一日になったね」
「これで花火があれば、もっと最高だったのにぃ」
 レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が口を尖らせた。そんな彼女の頭をリアトリスは愛しそうに撫でた。
「これで終わりね」
 水中ライブをレポートした羽瀬川 まゆり(はせがわ・まゆり)は、カメラを止めさせる。シニィ・ファブレ(しにぃ・ふぁぶれ)がうなずいたのを見て、カメラマンは撮影を止めた。 
「実験は失敗だったとしても、楽しんだもの勝ちですよね」
「うむ、人生は楽しむもの。どんな状況だろうと悲観的にならずに、一瞬一瞬を楽しむことこそ幸せな人生を送る秘訣じゃぞ」

 窓から流れてくる音楽を聞きながら、マリリン・フリート(まりりん・ふりーと)プリスカ・シックルズ(ぷりすか・しっくるず)は、冷たい果物に舌鼓を打っていた。水が抜けきった教室では、氷の塊がそこらに転がっている。
「実はさ……」
「やっぱり……ワタシも……」
 こっそり撮った写真を見せ合う。互いに顔を赤らめながら、写真を交換した。
「ワタシ、別に……マリリンなら持ってても良いよ」
「あたいだって、プリスカだったら構わないぜ」
 その後も「ワタシが……」「あたいが……」ときり無く続いた。


 水が引いて、出張営業をしていたとまり木も、そろそろ店じまいをしようとしていた。客も数人が残るばかり。
「白花、お疲れ様。ジュースでもどう?」
「はい、いただきます」
 樹月 刀真(きづき・とうま)は忙しく働いていた封印の巫女 白花(ふういんのみこ・びゃっか)に、休むよう勧めた。自分と白花の前にジュースを置き、2本のストローを挿した。みるみるうちに白花の顔が赤くなる。
「あ……その……」
 照れる白花に刀真は人差し指でチョイチョイと呼び寄せる。白花はうなずくとストローに口をつけた。
「おいしい……です」
 勢い良く半分ほどなくなったところで、ストローから口を離す。そこに3本目のストローが差し込まれた。
「刀真と一緒に仲良くジュース〜♪」
 漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、ジュースをすする。  
「みっ、見てたんですか!?」
「当たり前よ。隠れてしてるわけじゃないし」
 白花が周囲を見る。数人の客はともかく、少し離れたところで、橘 恭司(たちばな・きょうじ)如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)が白花達に注目していた。
 ますます白花の顔が赤くなり、刀真ですら照れた表情になる。
「白花ったら、凄く嬉しそうだったねー」
「からかわないでください」
「可愛いなー」と月夜が白花の頬をつっついた。

「あの3人の関係はどうなんだろうなぁ」
 橘 恭司(たちばな・きょうじ)如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)にささやく。恭司はひと休みと思っていたが、あまりの居心地の良さに、結局とまり木に居続けてしまった。
「三角関係なんだろうけど、ライバルと言うよりは、鼎のように釣り合ってるみたいだな」
 佑也が言うと、「そんなものか」と他の面々もうなずく。
「すると一対一の牙竜と灯は、微妙なところなのか?」
 恭司は話の矛先を変えた。
「な、何、言ってるんだ! こいつは単なる相棒……グハッ!」
 相棒呼ばわりされた灯の蹴りが牙竜のお尻にヒットする。あまりの痛みに牙竜は転げまわる。
「ヒーローたるもの、その程度の痛みに耐えるべきです」
 言い放つ灯を前に、佑也と恭司は、そっと首をすくめた」


 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)も帰路についていた。
「今日はめったにできない体験だったねー」
「そうね、私のフォローが最小限で済んだのは、いつ以来かしら。毎日こんなだと楽なんだけど」
「楽してたら成長がないわ。若い内の苦労は買ってでもって言うでしょ」
「ふぅん、セレンはどんな苦労を買ってるのかしら?」
「あたしはセレアナに苦労をしてもう分、楽しんでるの。もっとも楽しい時間はいずれ終わるものよ。また来年も……といいたいところだけど、さすがに無理かしらね?」
 意外な発言にセレアナが首を振る。
「……セレンにしては殊勝なことを言うじゃない?」
「“しては”ってひどいー」
 逃げるセレアナをセレンフィリティが追っかけていった。


 高柳 陣(たかやなぎ・じん)ティエン・シア(てぃえん・しあ)の前には、ずらりとカニ料理が並んでいる。
 カニしゃぶ、カニすき、焼きガニ、茹でガニ、茶碗蒸し、カニ玉、カニチャーハン……。たった1本の足だけだったが、カニモンスターのそれともなれば、2人が食べる量としては、十分すぎるほどだった。
「甲羅があったらなぁ。カニミソが食べられたかも」と陣が嘆いたものの、ティエンに「お兄ちゃん、欲張りすぎだよ」と言われて「そうだな」と納得した。
「いただきまーす」
 まず陣がむしゃぶりつく。それを見て、ティエンも口にした。
「うまい!」
「おいしい!」
 期待に違わぬ味で、2人の食欲はどんどん満たされていく。
「これだったら昼はナポリタンパンなんて食べなきゃよかったなー」
「でも、力がでないとやられちゃってたかも」
「そっかー」
 美味しい食事に話が弾む。すぐにティエンはお腹いっぱいになったが、陣は最後にカニ雑炊を作って、きっちり汁の一滴まで味わった。


 山葉 涼司(やまは・りょうじ)東條 カガチ(とうじょう・かがち)小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)からの報告書に目を通していた。
「生徒会長と副会長が先頭に立って頑張ってくれたらしい。ただカガチ会長は水の中が苦手と聞いていたが……」
「苦手なものをそのままにしておくとは限らないでしょう」
 花音・アームルート(かのん・あーむるーと)の言葉に「そうだな」と納得する。

「はっくしゅん」
 東條 カガチ(とうじょう・かがち)がくしゃみをした。目の前にいたシオン・プロトコール(しおん・ぷろとこーる)に激しくつばが飛ぶ。
「カガチ! まさかカガチまでフリー(略)の一員だったとは! よくもボクを騙してくれたな!」
「おい、こら! パチンコをこっちに向けるなぁ! ったく平穏な毎日はいつになったらくるんだよー」
 嘆くカガチのお尻にパチンコで飛ばされた玉がヒットした。

「それと大きな怪我人はゼロと聞いていたが、2人……いるのか?」 
「なんでも戦闘のトレーニングだそうです。当人達も納得ずくなので、とりたてて問題はないかと」
「……ふむ」
 火村 加夜(ひむら・かや)が山葉に尋ねる。
「それにしても古代の装置を作動させて何を実験するつもりなんですか?」
「何をすると決まったわけじゃない。ただ自在に動かせれば可能性は大きいからな」
「確かにその通りです。でもまさか古代人が水中で生活してたって訳ではないですよね。ここまで巨大な水の塊を出せる技術は凄いです」
「ああ、反対に言えば、現代の人間にとっては過ぎた技術かもしれない。取り扱いには要注意だ」
 加夜も同意した。
「もし良かったら、装置の研究レポートを見せてもらえませんか」
「ああ、分かった。まとまり次第、送るよ。ところで……」
「なんでしょう?」
「その水着…………似合ってるな」
 山葉は顔をそらしながら小声で言った。見る見るうちに加夜の顔がほころんだ。


 3日後、姿を隠したシニィ・ファブレ(しにぃ・ふぁぶれ)を必死に探す羽瀬川 まゆり(はせがわ・まゆり)がいた。
「シニィ! 出てきなさいよ! どういうことよ!」
 その手には『蒼空学園水中レポート』のDVDが握られている。題名こそ普通だが、中身はほとんどまゆりしか映っていない。しかもグラビアアイドル真っ青の内容だった。カメラマンを締め上げたまゆりは元凶がシニィであるのを知らされる。
「シニィさんが『楽しまなきゃ損じゃ』って」
「道理で昨日まで、高そうなお酒を飲んでると思ったら……」
 まゆりの荒れ狂う形相は、シニィが儲けを飲み干して出てくるまで続いた。
「すっごーい! これは永久保存版ね!」
 ピンと来たミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は、すぐさまDVDを注文した。
「あーん、でもモザイクが惜しいなー。なんとかならないかなぁ」
 目を細めては画面に見入るミーナに立木 胡桃(たつき・くるみ)はゆっくり首を振るだけだった。

                           《終わり》

担当マスターより

▼担当マスター

県田 静

▼マスターコメント

マスターの県田静です。参加していただいた皆様ありがとうございました。正直、MCはこのくらいがちょうど良いかなと思いました。
あまり多すぎると、まとめるのにひと苦労してしまいます。

さて今回のシナリオですが、「トイレはどうするの?」「お風呂は?」「下水は?」など、全然分かりません。
その辺りを突っ込んだアクションがなかったので、皆様の優しさに感謝しています。
あったらあったで、なんとかこじつけるよりないんですが。

ただ惜しいアクションも数名いらっしゃいました。基本、朝から夕方までの出来事なのですが、夜のアクションを投稿された方です。
なんとか盛り込んでみようかと考えたのですが、どうしても無理が出てしまうので、今回は本文の通りになりました。

その他にもGAや焼きそばパンなど、考え込まれたアクションがあり、楽しく拝見させていただきました。

それでは次回作がありましたら、よろしくお願いします。