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リアクション
「――まず、今わかっていることを纏めてみました」
ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)がキーボードを打ち込み、文字がモニターに表示される。
・過去のハイ・ブラゼル地方は花妖精の村ではなく、ごく普通の人が暮らす地であった。
・『大いなるもの』が突如現れる。発生原因は不明。
・『異国の戦士達』がハイ・ブラゼル地方を訪れる。
・『異国の戦士達』とハイ・ブラゼルの人々は『四賢者』の導きにより『大いなるもの』に挑むが、太刀打ちできず。
・『四賢者』、『大いなるもの』の封印を決断。多数の犠牲を払い、大規模術式により分断に成功。
・『大いなるもの』の瘴気を封じるため、仮想空間を形成。更に『賢者』が中に入り、ゲートを閉じた事により隔離する。
・その直前に『原典』となる『記録』を作成。ドロシーに託す。
「これで合っていますか?」
「……うん、そうだね。大まかにするとそんな流れだったと思う」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)がモニターを見て頷いた。
「……ただ今戻りました」
海が、聞き込みから戻ってくる。
――テラスには、まだ『原典』から戻ってきた者達が集まっていた。見てきた『記録』から得られた情報を交換するため、様々な話し合いをしている為だ。
海はそこで何か気づいたことが無いか、聞いて回ってきたのであった。
「おかえり。早速だけど、収穫はあった?」
「ええ、それなりにありましたよ」
「お疲れの所申し訳ありませんが、報告をお願いします」
ベアトリ―チェに言われ、海は頷くと聞いてきた事を話し出す。
――『異国の戦士達』について
「……『異国の戦士達』についてだけど、あれは過去の契約者だった、という線が濃厚だと思うわ」
宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が言うと、イリス・クェイン(いりす・くぇいん)と匿名 某(とくな・なにがし)が頷いた。
「そう考えるのが自然かもしれませんね。戦いの際に見たスキル……あれは今の私達、契約者と似た物でしたし」
「俺も同意見だな。見えた武器の特徴を携帯で検索してみたけど、似たような物が見つかった。どれも、過去に使われていた物だった……『異国の戦士達』は古代の契約者達と見ていいと思う」
匿名が言うと、祥子が頷く。
「そうすると彼らがこの地に訪れた理由も見えてくるわね。恐らく私達と同じように未知の土地の探索でしょうね。それに、少なくとも五千年以内の出来事だと推定もできるわ」
「『大いなるもの』と戦った理由も、自分たちの世界にも危険を及ぼすと考えたから、と『賢者』も言っていましたね、そういえば」
イリスが言うと、祥子が頷いた。
――『仮想空間』について
「四つの世界を生み出したのは『四賢者』なんですよね……まさか、あの世界が仮想空間だっただなんて……」
火村 加夜(ひむら・かや)が、『記録』を思い出しつつ呟く。
「しかし、なんでまた仮想空間はあんな世界にしたんだろうな」
ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)がぼやくように言った。
「そうですね……私はあれは誰かの夢かと思いましたが……」
「その考え、あながち間違いではないのかもしれませんよ?」
富永 佐那(とみなが・さな)の呟きに、サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が言う。
「どういうことです?」
「司君、あの過去の世界は第一世界に似ている、と言いましたね?」
「……ああ、そうだったな。あの時見た植物は、第一世界に似ていた」
白砂 司(しらすな・つかさ)が少し考える仕草を見せ、口を開く。
「……言われてみれば、確かに似た雰囲気がありました」
加夜が頷くと「でしょう」とサクラコが自信気たっぷりに頷く。
「そうですよね。その第一世界にいた賢者……あの世界を作り出したのはファフナーです。ファフナーはあの世界出身の賢者でしたよね? ということは、あの世界は作った賢者の心象世界なんじゃないでしょうか?」
「成程……第二世界のアルケーも魔術に長けていたらしいですし……そうかもしれませんね」
姫宮 みこと(ひめみや・みこと)が納得したように頷く。
「となると、後の二人もわかりますね。第三世界は機械関連の人で……」
「第四世界は……銃使い、とでも考えればいいのか」
ハインリヒと佐那が頷いた。
「……後は『大いなるもの』の正体」
海が呟く。これに関しては誰もが色々と予想を立てるも、明確な回答は得られなかった。
――それも仕方ない。類似する物どころか、形容する言葉すら見つからない物を、どのように予想を立てられようか。
「こういう時は解っていることからまとめよう。まず、奴がどういう事をしてくるかだ」
「えっと……まずモンスターを生み出してくるんだよね」
樹月 刀真(きづき・とうま)の言葉に、美羽が言った。
「他に注目すべきところは……やっぱり瘴気ね。体内が異空間になってる、とかも言ってたけど」
少し考え、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が言う。
「ですねぇ。負の感情の塊、とかいってましたが、やはり瘴気が各世界に影響を与えていたと?」
「そう考えるべきかもしれないな」
またたび 明日風(またたび・あすか)の言葉に、刀真が頷く。
「……モンスターを生み出す事と、瘴気……後、核となる存在がある、とか言っていたな」
海が呟き、思い返す。『賢者』が言っていた言葉を。
「……とりあえず、これでまとめておいて」
美羽が言うと、ベアトリーチェがキーボードを打ち込む。
・『異国の戦士達』は過去の契約者
・『四賢者』の内訳。
第一世界賢者:ファフナー(ハイ・ブラゼル出身者)
第二世界賢者:アルケー
第三世界賢者:機械の知識がある契約者
第四世界賢者:銃使い
・『大いなるもの』の正体は不明。解っていることはモンスターを生み出す、体内が異空間になっており、瘴気に溢れている事。そして、その奥には核らしき存在があるらしい。
「……正体がわからない、というのがやはり痛いな」
「弱気になるな、海。相手は負の感情の集合体。飲み込まれるぞ」
海がポツリと呟くと、刀真が言う。
「……うん、そうだよね。弱気になっちゃいけないよ」
その言葉に美羽も同意する。しかし、それは自分に言い聞かせているようでもあった。
「とりあえず、このまとめた事実を皆さんの携帯電話やパソコンに送ります。これで情報を共有できるかと」
ベアトリーチェはそう言うと、纏めた情報を送る操作を開始した。
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