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【●】光降る町で(前編)

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【●】光降る町で(前編)

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【女王討伐 2】





 それから暫くは、ひたすらの耐久戦だった。
 このドーム内にどれだけ潜んでいるのか、というフライシェイドは、次から次へと沸くように襲いかかり、その度に剛太郎達の弾幕が屠っていき、弾が不足しがちになれば、敬一のトゥルー・グリット、丈二のスプレーショット、と弾幕役のスイッチを繰り返していく。そして、狙撃にベストなタイミングを作るために、衝撃波が発動されそうになると、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)がスナイプで頭を狙い撃ち、その隙に彼女の魔法を受けて飛翔する刀真の、パワーブレスを受けたワイヤクローであえて口を閉じさせて妨害する。
 そんな攻防が何度か繰り返され、皆がタイミングを合わせ、一旦間合いを開けた、その時だ。敬一の陽動射撃の援護を受けて、レギーナ・エアハルト(れぎーな・えあはると)が切り込んだ。
 疾風迅雷の速さで飛び込んだレギーナは、女王の前方に群がるフライシェイド達に向けてしびれ粉をばら撒く。契約者達であれば、多少影響が出る程度の粉だが、防御力の殆ど無いフライシェイド達は、それを浴びた途端にばたばたと落下し、床の上でビクビクと痙攣する。苦しんでいる、というよりは死後痙攣のようなものだろう。余り良い見た目ではないが、事態はそれどころではない。直線上に、フライシェイドの影は無く、仲間も無い、最高のコンディションだ。そうとも知らず、女王は最も熱源の固まっている通路に向けて、衝撃波を放った。
 瞬間、妨害音波で相殺する白竜の前、そしてキルラスの横に据わった刀真が動いた。音速を超える斬撃を幾つも放つ乱撃ソニックブームが空気を割き、女王までの僅かな道が開かれた。
「今だ!」
 その声に導かれるように、キルラスは引き金を引く。その狙い澄まされた一撃は、口の中へ吸い込まれるように着弾した。
「グォオオオオ……ッ」
 女王の呻きが、ドームの中に木霊する。キルラスの漆黒の魔弾は、過たず衝撃波を生む器官を撃ち抜いたのだ。
「やったさあ……!」
 だが、喜んだのも束の間。手痛いダメージを追った女王は、怒り狂ったように音波攻撃を撒き散らし始めたのである。
咄嗟に白竜が前へ、音声データを音波用に切り替えて出て相殺したが、やはり出力の問題か、完全に相殺し切れないようだ。
「……っ、く」
 皆がその音に耐え、白花が幸せの歌で相殺を図っていた、その時だ。
 レキのヒールとミアの命のうねりを受けて完治した恭司が、再び通路から飛び出した。衝撃波さえなくなれば、肉体の完成を果たした恭司にとって、音波攻撃は耐えられないものではない。先の攻撃と同じように天井へ一旦移ると、胴と腹部のつなぎ目を狙って落下した。
「食らえ、壱参のジェントルアーツの壱つ、粉砕ジェントルナックル!」
 掛け声一つ。落下の速度に、奈落の鉄鎖によって重力を加味させると、装甲の隙間に毒を付与したワイヤクローを捻じ込み、サイコキネシスでその内部をかき回そうとした、が。
「……っ」
 次の瞬間、奇妙な感覚に、恭司は思わずワイヤクローを外して飛びずさった。
「どうした?」
 その後退を援護しながら敬一が尋ねたが、恭司はその感覚を表現しきれないのか、難しい顔をした。
「おかしい。あの体、生物じゃ、ない……?」
「どういう……」
 その言葉の意味を図りかねて、敬一が問いを重ねた。

 その時だ。

 突然に、ドームの端に並んでいた柱が光り始めたのである。