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なし

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あなたは(の)、アイドル

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あなたは(の)、アイドル

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第7章 水着で体育祭! 準備

 まもなく、KKY108の出演するTV特番「水着で体育祭!」の控室。
 アイドルの身代わりや穴埋め要因として出演予定の少女たちが、気合を入れたり緊張したり、それぞれの時間を過ごしていた。

「いいか。穴埋めとはいえ、これはチャンスだ。アイドルグループ『【M】シリウス』の活躍を見せつけてやれ!」
「よーし! ボクがんばるよ」
「たとえゲームでも、ぽっと出の新人に負けはしないわ。かならず勝ーつ!」
「じゃあ、やってみようかしらん」
 湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)の言葉にそれぞれの言葉で気合を入れる三姉妹、エクス・ネフィリム(えくす・ねふぃりむ)ディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)セラフ・ネフィリム(せらふ・ねふぃりむ)
 三姉妹が身にまとうのは、蒼空学園の公式水着。
 ラインの部分はそれぞれ青、緑、赤となっている。

「ふわぁああ、あそこのお姉さんや妹さんたちも素敵ですね! 来てよかったですよ!」
 三姉妹をはじめ、周囲の花のように色とりどりのアイドルたちに目を奪われているのはミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)
「けど、みんな胸が大きくて羨ましいです……」
 自分の胸を眺めてみて、ため息をつく。
 うん、ぺったんこ。
 ため息をつくミーナの横をビキニ姿の赤羽 美央が通り過ぎる。
「ん!?」
 彼女の不自然なほどの巨乳に目を奪われるミーナ。
 そんなミーナの横で、高島 恵美(たかしま・えみ)はフリル付きワンピースの水着を着たまま膝を抱えていた。
「うぅう、水着だなんて聞いてなかったですよぉ〜」
「だ、大丈夫だよ! かわいいかわいい!」
「きゅっ、きゅう!」
 ミーナや立木 胡桃(たつき・くるみ)の励ましも耳に入らないようだ。
 恥ずかしがっている人間は、恵美だけではなかった。
「アイドル……アイドル。私は今だけアイドルなんです。うぅ、でもみんなスタイルいいし、やっぱり恥ずかしい……!」
「だーいじょうぶだって。それちゃんと似合ってるぜ」
「うぅ、大体リョージュくんがこんな水着を選ぶから」
「アイドルはあんな地味な水着なんか着ねえよ! これだってかなり抑えた方だぜ」
 水着の自分を抱きしめるようにして言い聞かせているのは白石 忍(しろいし・しのぶ)
 最初は大人し目の水着を選ぼうとした彼女だが、パートナーのリョージュ・ムテン(りょーじゅ・むてん)によって派手めな赤いセクシー水着に取り換えられてしまった。
 そんなリョージュはといえば、励ましつつも周囲の水着アイドルの様子を見ては悦に浸っていた。
(おぉお、水着アイドルがいっぱい! まさにパラダイス!)
 その手にはこっそりと、タオルに隠したカメラが握られている。
 そんなリョージュには、ある意味天敵が存在した。
「大丈夫ですよ。私が皆さんをえっちからお守りします」
 トレイを片手に恵美や忍を励まして回る、高務 野々(たかつかさ・のの)
 その姿は裸エプロン……ではなく、真っ白なメイド服を思わせるエプロン水着。
 でも今日の彼女はメイドではない。アイドルなのだ。

 恥ずかしがっている少女たちがいる反面、堂々とその肢体を晒したり、それ以上の状態になっているアイドル代理の少女もいた。
 豊満な体をビキニで包み、胸アピールの練習に余念がないのは冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)
 真っ黒なボンテージ風の水着に身を包んだ八岐 大蛇(やまたの・おろち)に至っては、後ろ手で縛られている。
「んん……あんまり強調すると、あざといとか言われちゃいますかね」
 小夜子は、胸の部分のヒモを軽く引っ張る。
(それにしてもあの身代わりになったアイドルさん、私と同じようなスタイルだと思っていましたが……)
 彼女から借りた、真っ白なビキニ。
(ちょっと、小さいですね……主に胸の部分が)
 豊満な胸が、窮屈そうに揺れた。

「お、本当にCY@Nも来てたのか」
「あっ、柳玄さんも来てたの!」
 柳玄 氷藍(りゅうげん・ひょうらん)は、以前とある騒動で知り合いになったアイドル、CY@Nの姿を見つけて声をかけた。
「どうだ、元気にやってるか?」
「ええ。おかげ様で色々な所から声をかけて頂いているわ。柳玄さんは?」
「俺はまあ、846プロでのんびり気儘にやっている。今日はただの付き添いだ」
「そう。その……さっきから気になっていたんだけど、その人は……」
 CY@Nは、氷藍の後ろに立つ大蛇に視線を移す。
 氷藍の手によって拘束された大蛇は、特に文句もない様子で珍しそうに周囲を見回している。
「大蛇だ。彼奴がアイドルの助けになりたいって言い出すからさ」
 大蛇を紹介する氷藍だが、CY@Nが問題にしているのはそこではない。
「いえ、何で縛られているのか、聞いてもいいものかな?」
「ああ。大蛇の奴、他人が好きで好きでしょうがないらしいんだ。ほっとくと舐めたりじゃれたり、何するか分かったもんじゃないし当人にも自覚はあるようでな、ああやって自分で腕を縛ってるんだ」
「そ、そうなの……」
 困惑するCY@Nの視線に気づいた大蛇が、満面の笑顔を向けた。

「お邪魔するぞい」
「お好み焼き『はっくちゃん』じゃ。差し入れを持ってきたけん、食べてくれ!」
 控室の扉が開かれ、たくさんの荷物を持った鵜飼 衛(うかい・まもる)とメイスン・ドットハックが入ってきた。
「あ、メイスン様、衛様、来てくださったんですね!」
 ルドウィク・プリン著 『妖蛆の秘密』(るどうぃくぷりんちょ・ようしゅのひみつ)が2人に嬉しそうに駆け寄る。
「おお。お好み焼きを持って来たんじゃきに、食べて元気をつけて収録に向かえ」
 メイスンがほかほかの紙袋を差し出す。
「皆にも持ってきたんで、是非食べとくれ」
 衛も、水着の少女たちにお好み焼きを差し出す。
 ソースと青海苔の甘く香ばしい香りが控室中に充満する。
「ありがとうございます……えっと、ですが……」
「そうね、せっかくですが……」
 ビキニの小夜子が、忍が申し訳なさそうに後ずさる。
 他の少女たちも、お好み焼きをじいっと見つめてはいるものの手を出す者はいない。
「ど、どうしたんじゃ。遠慮は無用じゃきに」
 不思議そうな顔をするメイスンに、プリンが申し訳なさそうに告げる。
「今、食べてしまうと、お腹が出ますから……」
 プリンの言葉に頷く水着の少女たち。
 ああー、と何度も頷くメイスン。
「それじゃあ、収録が終わったらまた差し入れするきに、がんばるんじゃー!」