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第17章 フィナーレ、そして1095

「おまたせ!」
「ただ今戻りましたわ!」
「ごめんなさい!」
 コンサート会場の舞台裏。
 次々と、抜け出していたKKY108の少女たちが戻ってきた。
「おかえり。フィナーレには間に合ったようね」
 彼女たちを迎えたマジカルカナが笑いかける。

 ぎゅうっ。
「きゃう!?」
 不意に抱き着かれ、ネーブルは目を白黒させる。
「ありがとう」
 声の主は、くるみだった。
 ネーブルに身代わりを頼んだ、KKY108の少女。
「ありがとう。代ってくれて。私の、居場所を守ってくれて」

「すみませんでした」
 美星は、アリアンナに頭を下げる。
「いいのよ、一日くらい」
 笑顔で答える。
「私も、けっこう楽しかったしねー。それより、どう、楽しめた?」
 アリアンナの問いに、美星は僅かに頬を染めた。
「……はい、とっても」

「ありがと」
 九十九に感謝の気持ちを伝えるのは、明里。
「ボク、おかげでいい想い出ができたよ。ところで……」
 声を潜める。
「オンナノコ役、大丈夫だった?」
 そんな明里の様子に九十九は思わずくすりと笑う。
「気が向いたらまた入れ替わってやるから、これからも頑張れよ!」

「ごめんね、女の子役なんかやらせちゃって」
 夢悠に謝るのは、春音。
「ううん、いいんだよ。それに、側にいたい人と一緒にやれたからね」
 そんな夢悠をじぃっと見つめる春音。
「ど、どうしたの?」
「うーん、見れば見るほど、ボクにそっくり…… こんな所まで」
 夢悠の、当然ながらぺったんこの胸を恨めしく見る春音だった。

「さ、もうじき最後の曲だよ!」
 ルカルカが全員に呼びかける。
「本当のメンバーと入れ替わって……ううん、せっかくだし、全員で歌おうよ!」

 フィナーレ。
 全員で登場したKKY108とその代役たちに、観客はどよめいた。
 それでも、全員の息はぴったり。
 歌も振り付けも、完璧にこなすアイドルたち。
 間奏の間に、一人一人が挨拶する。
 沙良・サラーと璃良・サラーの双子が雅羅を間に挟んで立つ。
「私達……実は、三つ子だったんです!」
「えー!?」
 驚愕する観客たち。
 しかし一番驚いたのは当の雅羅だ。
「うーん、これくらいのトラブルなら……いっか」
(ああ)
 そんな雅羅たちを微笑ましく眺めている理沙と、舞台袖の恭也。
 しかし後日、雅羅にはたくさんの仕事の依頼が押し寄せて大変な目にあうのだった。

 携帯に何事かメールした後、美鈴は観客席に宣言する。
「私、大切な人ができました!」
 観客席の悲鳴を一身に浴びながら、高々と携帯電話を掲げる。
 そこには先程までデートしていた、煉の画像。

「ぶっ!?」
『大至急、コンサートの映像を見ること!』
 そんな美鈴からのメールを貰い、コンサートの様子を見ていた煉は盛大に吹いた。
(あ、あいつ何勝手に……)
 別れ際、観覧車での会話を思い出す。
「……もしまた弱音を吐きたくなったら、俺に言いに来い。またお嬢様に付き合ってやるからさ」
「煉……」
(あの時の会話。あれか、あれなのか!?)

「いいなー、美鈴ちゃん」
「応援するね」
(いいな……)
 KKY108の仲間たちの激励を受けつつ笑う美鈴を、イリアは微笑ましく見ていた。
(アイドルも恋する……がんばれ。私も、ね)
 視線の先には、彼女が恋する相手。

 全員の歌と踊りのフィナーレ。
 KKY108とアイドルたちのコンサートは大盛況のまま有終の美を飾った。
 KKY108と846プロと秋葉原四十八星華とAKB92、そして大切な一人一人。
 108+846+48+92、+1。
 この日の事は、合計して「1095」の日として後々まで語り継がれることになる。

 その後、KKY108の事務所はダリルからのアドバイスを受け、仕事の効率化が図られた。
 そのおかげで過剰な仕事は減り、KKY108のメンバーは今までよりいっそう元気でアイドルをやっている。
 しかし、彼女たちが元気で輝いているのはそれだけではない。
 あの、「1095」の一日があったから。
 
 アイドルたちに、代理の人物に、一日を過ごした者たちにとって、かけがえのない、大切な一日が。

担当マスターより

▼担当マスター

こみか

▼マスターコメント

 初めての方ははじめまして、もしくはこんにちは。
 「あなたは(の)、アイドル」を執筆させていただきました、でも実在のアイドルのことはほとんど知らない……こみか、と申します。
 アイドルと共に過ごす一日に参加してくださいまして、どうもありがとうございました。
 アイドルとして活躍した方、共に一日を過ごした方。
 皆さんのおかげで、KKY108にとって素晴らしい一日となりました。
 もちろん、握手会や水着大会、コンサートに参加したお客さんたちにとっても。
 皆さんも、この一日を楽しんでいただけましたら嬉しいです。

 ところでこのシナリオで、私こみかの担当したシナリオがちょうど10本になりました。
 マスターをはじめておよそ5か月。うーん、まだまだですね……
 たくさんの方々に出会えて、とても良い経験になりました。
 また皆さんとお会いすることがありましたら、とても嬉しいです。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いします。