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第15章 コンサート メッセージを込めて

 全員揃っての歌が終わり、一瞬静まる舞台。
 その真ん中に、七ッ音が一人スポットライトを浴びて立っていた。
 彼女には、伝えたい思いがあった。
(KKY108でも、アイドルでも、限界な時だってあるんです)
 キーボードを構え、息を吸う。
 いつもの七ッ音の調子とは違う、必死で悲しげな歌声が響いた。

 流れる歌は笑顔を生み
 回れば皆が喜んでくれる
 アナタの笑顔が好きだったの
 温かい言葉、今でも大切だよ

 揃う足並み 綺麗なマリオネット
 でもね、もう限界だったみたい

 ごめんなさい ごめんなさい
 まだ頑張りたいから糸を切ったの
 次に糸が切れるときはきっと
 ……壊れちゃった時かなぁ

 もっとアナタの笑顔を見たいの
 まだまだ壊れたくないだから
 喜びを歌い続ける歌姫達は
 自分の足で舞台に立つの!


 しん――
 七ッ音の歌に、客席は静まり返る。
(ご……ごめんなさい、やっぱり余計な事してしまったでしょうか……)
 お辞儀をして袖に戻る七ッ音の背中に。
 ぱち。
 ぱちぱちぱち。
 小さく、やがて大きな拍手が贈られる。
「す、すいません」
 舞台裏に引っ込んだ七ッ音は、誰彼構わずぺこぺこと頭を下げる。
 そんな七ッ音の肩に、手が置かれた。
 さっきまで一緒に舞台に出ていたKKY108のメンバーの一人だった。
「ありがとう」
 彼女は言った。
「歌ってくれて、ありがとう」

「あの子も、なかなかやるな!」
 七ッ音の歌を聞いていたシリウスが、にやりと笑う。
「ええ。次は、わたくしたちの番ですわ」
 リーブラも頷く。
「オレたちは、オレたちのやり方で」
「わたくしたちのやり方で」
「行くぞ」
「行きますわ」
 シリウスとリーブラが舞台に進み出る。
 歌の前に、シリウスがマイクを持って客席に話しかける。
 本当は、KKY108の悩みと代理できた自分の話をするつもりだった。
 しかし、周囲の仲間が皆KKY108の代理とバレないようにがんばっていて、観客にもまだバレていない。
 だったら、自分の告白でそれを無駄にしてはいけない。
「……ちょっと疲れちまった子のための、先輩からの応援ソングだ。聞いてくれ!」
 KKY108の曲目の中からチョイスした、応援歌。
 シリウスとリーブラの歌声が重なる。

「応援歌シリーズ、最後はこれだよ☆」
 秋葉原四十八星華の詩穂とマジカルカナこと歌菜が、アイドルへの気持ちを込めた歌を歌う。
 歌声は、響き渡る。
 会場中に、そして会場の外へ――