天御柱学院へ

なし

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蒼空学園へ

めざめた!

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めざめた!

リアクション

 
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 いっぽう、墜落していった彩音・サテライトの方は、なんとかバランスをとりなおして上昇しなおしたのだが、ほっとしたのも束の間、無茶な改造をされていたイコプラが小爆発を起こして空中分解した。もともとが、部品の組み合わせに無理がありすぎる。イコンや機晶姫の部品は、イコプラの華奢な装甲で支えきれる物ではなかった。
「ひゃう〜」
 バランスを立てなおす間もなく、きりもみして彩音・サテライトが墜落していく。
 そのまま地面に激突すると思われた瞬間、ぎりぎりで彩音・サテライトの身体が止まった。
「ふう、危なかったあ。ちゃんと返事しないとダメだぞ」
 なんとかサイコキネシスで彩音・サテライトを受けとめた綺雲菜織が、ほっとしたように言った。テレパシーで呼びかけるも、返事ではなく独り言のような「わーすごい」とか「あれなんだろ」とかの思考しか返ってこないので、とにかく探し回っていたのだ。
「てへへへへ」
 彩音・サテライトが、照れ隠しに笑う。
「こんな変なイコプラではなく、ちゃんとした物に乗りなさい」
 後で、有栖川美幸にも説教だと、綺雲菜織は思った。
「乗ってもいいの?」
「乗りたければな」
「乗るー」
 いいお返事なので、そのまま海京のゲームセンターに行くことにする。とりあえず、いきなり正規のイコンシミュレータも難しいだろうから、ゲームセンターのゲーム機で様子を見ることにした。もともと彩音・サテライトは、サテライトセルとしてイコンの操縦も担当していたはずなので、できないというわけではないはずであった。
「とりあえず、遊びだから、気楽に動かしていいぞ。メインは私が担当するので、火器管制を頼む」
「はーい」
 ゲーム機に乗り込むと、綺雲菜織は、持っていた不知火・弐型のデータカードをセットした。これで、カスタマイズされたオリジナルの機体データで遊べるようになっている。もっとも、実機とまったく同じというわけではないが。
 
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「よいしょっと。これで、なんとかネットに接続できたかな」
 リヴァイアサン・メルビレイのコックピットから引き出した大量のケーブルを通信対戦ゲームマシンのインターフェースに繋いで如月 正悟(きさらぎ・しょうご)が言った。
 このイコンはクルキアータのカスタムタイプだが、天御柱学院仕様なのにあまりにカスタマイズしてしまったために、今のところはこのガレージに隠匿させてあるのだった。
 とはいえ、まったく動かさないわけにもいかない。それで、正規のシミュレータは使えないので、ゲーム回線に割り込んで性能を試してみようというわけだ。
「おっ、エントリーありか。敵もフルカスタマイズイコンみたいだな」
 レーダーに敵影を見つけて、如月正悟が臨戦態勢に入った。リヴァイアサン・メルビレイは高性能になったのはいいが、いかんせんピーキーすぎる。特に、今は一人で操っているので、攻撃や機動はほとんど勘に頼る形であった。
「速い!」
 高速で移動する不知火・弐型に、なるべく相対速度を合わせようとしながら如月正悟がスナイパーライフルを発射した。
「そこだ! よし命中!」
 まるで、射界に敵が吸い込まれるように移動してくれた。もしかして、新たな力にでも目覚めたのだろうか。今なら、百発百中でいけそうだ。
「さすがだぜ、俺。パイロット一人でも、確実に命中させてる」
 自画自賛した如月正悟であったが、不知火・弐型はダメージを受けた様子がない。
「馬鹿な、直撃しているはずなのに……」
 さすがに、如月正悟が訝しむ。
「よかった。ウィンドシールドで弾はぎりぎり逸れたようだな。攻撃できるか?」
「もうちょっと近づかないと、む〜り〜」
「なら近づこう」
 綺雲菜織が、不知火・弐型に銃剣つきビームライフルを持たせて、リヴァイアサン・メルビレイに接近させた。
「来るか。近接攻撃なら、こちらも受けてたつぜ」
 銃剣つきビームライフルに武器を持ち替えると、リヴァイアサン・メルビレイも一気に間合いを詰めた。
 激しく音をたてて、双方の銃剣がぶつかり合う。
 反動で少し離れるところを、ビームライフルで狙撃する。ビームが互いの装甲をかすめた。
 性能はほとんど拮抗している。
 互いのスラスターがめまぐるしくノズルの方向を変え、二機は激しく位置を入れ換えつつ切り結んでいった。イコンホースのシェルフスラスターを持つ不知火・弐型の方がわずかに機動性で上回るが、その分機体が大きくなり、被弾面積という点では不利であった。
「あたる、あたるぞぉ!」
 至近距離から如月正悟が放ったビームが、不知火・弐型のイコンホースを撃ち抜いた。彩音・サテライトが不慣れであるとは言え、一人乗りで互角に戦えているというのは驚異的だ。
「止めだ!」
 一気に如月正悟が決めようとしたところに、不知火・弐型が左手で風斬剣を振り抜いた。放たれた突風が、リヴァイアサン・メルビレイのバランスをわずかに崩す。攻撃に集中していた如月正悟は、機体補正まで一人では手が回らなかった。銃身がぶれて、ビームが外れる。
「今だ、彩音!」
「はーい」
 綺雲菜織に言われて、彩音・サテライトがエナジーバーストを発動させた。風斬剣を構えたまま、エネルギーフィールドにつつまれた不知火・弐型がリヴァイアサン・メルビレイに突っ込んでいく。避けきれなかったリヴァイアサン・メルビレイが、機体を破壊されて爆散した。
「くそ、やられたか。だが、30%の性能で負けたと言うことは、100%なら確実に勝てるな。次はこうはいかないぜ」
 収集したデータをきっちりとフィードバックさせながら、如月正悟が言った。
「勝てたな。よしよし」
 綺雲菜織が、彩音・サテライトにむかって言った。敵の動きがときどき鈍かったせいもあるが、とりあえずは上出来だ。
「このイコンも、面白いかも」
 彩音・サテライトは、不知火・弐型のデータを記憶しながら、興味がわいたように言った
 
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「ううっ、なんだか、凄く嫌な夢を見たな……」
 寝汗で全身ぐっしょりになりながら、柊真司がベッドの上で目覚めた。
 ヤンデレ化したパートナーに刺されるなんて、冗談じゃない。
「水でも飲んで落ち着こう」
 起きあがると、キッチンへとむかう。
 キッチンからは、ヴェルリア・アルカトルが包丁で何かを切っている小気味のいい音が聞こえてきていた……。
 
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「なんか、嫌な夢を見たな……。げっ、なんだ? なんで僕、目が覚めてもセーラー服を来ているんだ!?」
 ベッドの上で目覚めたシェルティス・ラグナ・イースは、自分が夢の中で身につけていたのと同じセーラー服を着ているのに気づいて目を白黒させた。まさか、あの夢が正夢だったというわけではあるまい。いや、正夢になっている。これは、どうしたことだ。
『お目覚め? ふふ、私と契約して女の子になってよ。あっ、もうなっちゃってるのかな』
 突然、セーラー服から声が聞こえた。
「なんだってー」
 あわてて、シェルティス・ラグナ・イースが確かめた。ほっと、安堵の吐息をつく。
『契約はしちゃったから、後は女の子になるだけね』
「お前、魔鎧か!」
『ええ、レギン・グレイワース(れぎん・ぐれいわーす)よ。どう、私の着心地は?』
 レギン・グレイワースが名乗った。どうやら、シェルティス・ラグナ・イースもしらないうちに契約を結んでしまったらしい。というか、この状態は、はっきり言って取り憑かれたにも等しい。
「それは、なかなか……。いや、違うでしょ……って、なんなのよ、この口調は!」
『ほーら、あなたはだんだん女の子になるぅ』
「呪いか! えっ、なんなのよ、この髪は!」
 部屋の鏡に映った自分の姿を見て、シェルティス・ラグナ・イースが叫んだ。いつの間にか金髪縦ロールになっている。
「いてててててて……、いたあい。ウイッグでしょ、これ。接着剤で貼りつけたわね!」
『ふふーん、しーらないっと♪ 美少女なんだからいいじゃない。私の好みよ。これからもよろしくね』
「だが、断る!」
 はたして、シェルティス・ラグナ・イースは元の生活に戻れるのだろうか……。悪夢はまだ始まったばかりである。