|
|
リアクション
★ ★ ★
「ふぁーあ、よく寝たあ」
それは、普段と変わらない目覚めのはずだった。
ベッドの上で目を開けた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が天井を見つめると、突然天井が燃えだした。
「うきゃあ!」
「どうした、美羽!」
突然の悲鳴を聞いて、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)が駆けつけてくる。
幸いにして、天井は少し焦げただけであったが、いったい何が起こったのだろうか。
「もしかして、私、すっごい必殺技に目覚めちゃったとか!?」
嬉々として、小鳥遊美羽が言った。実際は、昨日寝るときにビームレンズを填めたままで、そのことをすっかり忘れてしまっていたというだけなのであったが。
「これは、ちょっと試してみたくなるよね……」
なんだか、悪戯っぽく小鳥遊美羽が言った。
「それはいいんだけど、また着せ替えごっこしているの? そんなんだから、Pモヒカン族にまでマニアって言われちゃうんだよ」
またぞろゴーレムのローゼンクライネをお洒落に着飾っているコハク・ソーロッドに、小鳥遊美羽が言った。
「ち、違うよ。ただ、お洒落に目覚めただけだってば」
本人も小洒落たスーツ姿のコハク・ソーロッドが、なんだか必死に言い訳した。
「とにかく、パトロールにいこー」
そううながすと、小鳥遊美羽はコハク・ソーロッドたちと共に空京の威力偵察に出た。
何ごともないかと思われたが、運のいいことにPモヒカン族がうろちょろしている。またぞろ、P級四天王認定試験でも行われるのだろうか。
「貴様、パンツを穿いているな。だったら、こっちによこせやあ」
お約束通りに、Pモヒカンが小鳥遊美羽に襲いかかってきた。
「覚悟……できてるよね」
言うより早く、小鳥遊美羽が目からビームでPモヒカンをアフロヘアーにした。
「お、俺は、ただ、パンツがほしかっただけなのに……」
ばったりと、Pモヒカンが倒れる。
「まあ、私にかかればこんなもんね」
「貴様、よくも兄貴を……。みんな、やっちまえ!」
仲間がやられたのを見て、Pモヒカン族が集まってくる。
「すっごいの、い〜く〜よっ!!」
「あべし」
「ひでぶ」
「どこへ逃げても撃ち抜くよ」
小鳥遊美羽が、問答無用でPモヒカン族を薙ぎ倒していく。
「やれやれ、出番がないなあ」
転がったPモヒカン族を路肩へと蹴っ飛ばしていくローゼンクライネの後ろから、コハク・ソーロッドが呆れたように言った。
「見ててくれたかな、私、こんなに強くなったよ」
そう叫ぶ小鳥遊美羽に、コハク・ソーロッドはうなずくしかなかった。
「さあ、いらっしゃいいらっしゃい……。うわっ、何がいらっしゃったであります!?」
道端でたこ焼き屋をやっていた葛城吹雪が、突然吹っ飛んできたPモヒカンに焦って叫んだ。あわや、屋台がPモヒカンの身体によって破壊されるところだ。
「ばっかやろう、これはレンタルなんでありますよ。壊れたらどうするんでありますか!」
「す、すいません」
怒られて、コハク・ソーロッドがあわてて謝りに行った。
「おわびに、たこ焼き二つください」
「おっ、毎度であります」
初めての注文に、葛城吹雪が掌を返す。
「じきに、お腹を空かせた女の子が一人やってきますから」
絶好調でビームを放ちまくる小鳥遊美羽をたらりと横目で見ながら、コハク・ソーロッドが言った。
★ ★ ★
「橘 恭司(たちばな・きょうじ)は改造人間である。月での戦いで重傷を負ったが、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)によって改造手術を受け橘恭司として甦ったのだ!」
「ちょっと、変なナレーションつけないで……!」
勝手にナレーションをつける樹月 刀真(きづき・とうま)を、漆髪月夜が睨んで黙らせた。
「改造もしていない。ただ、左腕を治しただけ」
テクノクラートとして機晶姫の腕を再調整した漆髪月夜がきっぱりと言った。その他の部分は、ここ空京病院の医者が治してくれたものだ。
「ううーん、もう終わったのか?どれどれ、調子は……」
麻酔から覚めた橘恭司が、手術台から起きあがって、左腕を動かしてみた。
ボン!
「ちょっと待て、今何か出なかったか!?」
手の先から出た闘気が実体化して壁にぶちあたったようだが、いったい何を改造されたのだろう。
「気に……しない。それよりも、恭司はそこに座る!」
「えっ!?」
なんだか知らないが、漆髪月夜が橘恭司を固い手術台の上に正座させた。ちょっと、いや、かなり脚が痛そうだ。
「まったく、恭司はいつも無茶しすぎ。そんなんだから大怪我する。それに、それに……」
えんえんと続く説教に、そばで聞いていた樹月刀真の方が先に耐えられなくなった。とはいえ、いつの間にか三時間ほどが経ったような気もする。橘恭司は、すでに気を失っているのではないだろうか。
「月夜、もうそのあたりにしておけ」
「刀真は黙っていて!」
「いや、これ以上続けると、恭司の足も機晶姫製にしないといけなくなるぞ」
樹月刀真に言われて、さすがに漆髪月夜があっとなって黙った。
「よしよし、月夜はよくやったから」
そう言って、樹月刀真は漆髪月夜をだきしめて終わりにした。