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リアクション
★ ★ ★
「だいたいこんな感じの物を作りますよ」
折り紙で作った、舟の完成模型をリース・バーロット(りーす・ばーろっと)さんに見せて、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)くんが言いました。長方体にちゃんと三角で舳先がついているオーソドックスな舟の形です。
「分かりましたわ」
リース・バーロットさんが、段ボールを日曜大工セットの中のボンドで貼り合わせて厚くします。それを戦部小次郎くんがガムテープで貼り合わせて舟の形に組み合わせると、リース・バーロットさんが呼び出した炎の聖霊が溶かしたキャンドルを全体にくまなく塗りました。さらにその上から戦部小次郎くんがしましまビニールシートを巻いてガムテープで固定しました。さらに、その上からも蝋をコーティングします。
これは、防水に関してはかなり完璧です。ただ、かなり手間をかけたので、ペットボトル筏なみに時間がかかってはしまいました。
「遅れを取り戻します」
「はい」
リース・バーロットさんをうながすと、戦部小次郎くんが先行組を追いかけて川に入っていきました。
★ ★ ★
「ぺったん、ぺったんと。いやあ、楽しいですねえ」
深緑のハーフパンツ水着姿のリオン・ヴォルカン(りおん・う゛ぉるかん)くんがガムテープと段ボールで舟を作りあげたころ、清泉北都くんが戻ってきました。こちらの舟も、舳先を持つ完全な舟型です。
「よおし、仕上げだねえ」
さっそく用意されたペットボトルを蔓草でぐるりと縛ると、せっかくできあがった段ボール舟の底に木の枝で等間隔に穴を開けていきました。そこへ、ペットボトルの口の部分を突き刺します。舟の底に突き出た口を蔓で縛って固定すると、その上に段ボールを敷きました。これで浮力はバッチリです。
「じゃ、出発だよぉ」
できあがった舟を水に浮かべると、前の方に乗った清泉北都くんと後ろの方に乗ったリオン・ヴォルカンくんが段ボールをそのまま櫂代わりにして川に漕ぎ出しました。ちょっと、櫂の耐久性が心配です。
★ ★ ★
「おかえりなさーい」
ジェイコブ・バウアーくんが木材を取って戻ってくると、シャンバラ教導団女子公式水着姿のフィリシア・レイスリー(ふぃりしあ・れいすりー)さんが出迎えました。
「よし、組み立てるぞ」
ジェイコブ・バウアーくんが丸太で木枠を作ると、すでにフィリシア・レイスリーさんが三本ずつガムテープで纏めておいたペットボトルをならべます。その上に段ボールを五枚重ねにして、全体をロープでグルグルと縛りあげました。強度重視と言うことですが、実際にはロープが文字通り命綱です。森で拾ってきた枝に輪切りの木を縛りつけたオールも、予備を含めて四本積み込みました。
「よし、行くぜ!」
できあがった筏をジェイコブ・バウアーくんが一人で運ぶと、バシャンと川に投げ入れました。オールで、川の中央へと漕ぎ出します。
★ ★ ★
「こいつを使ってみましょう」
丸太を持って帰ってきた鬼龍貴仁くんが、丸太を井形に組むと拾ってきた蔓草でしっかりと結びました。その中にペットボトルを隙間なく縦にならべます。そこへ汲んできた水をかけて、氷術で固めました。それを何度か繰り返して、ペットボトルをすっかり氷でつつんでしまいます。これなら、しっかりと浮くでしょう。
丸太を真空波でスライスして板を作ると、段ボールと合わせてガムテープで貼り合わせます。それをできあがった筏の上に敷きました。直だとやっぱり冷たいみたいです。
「はいはい、いきますよー……。冷てえ!!」
筏を川に浮かべて乗ったのはいいですが、やっぱり冷たいようです。そこは、根性で我慢します。
スライスした木の板をオール代わりにすると、鬼龍貴仁くんは頑張って漕ぎ始めました。
★ ★ ★
そのころになると、森に丸太などを取りに行った人たちも次々に材料を持って帰ってきました。そうなると、残った段ボールやペットボトルの取り合いとなります。
本来はそれでも充分な数があるはずだったのですが……。
「仕方ないさかい、自分で舟を……。なんでやねん、材料ないやんけ!!」
あれほど山と用意してあったはずの段ボールとペットボトルの山がほとんどありません。いったい、何があったというのでしょうか。
「ああ、その段ボール……」
ちょうど、最後の段ボールを神代明日香さんと神代夕菜さんが持っていくところでした。
「えっ?」
何かしらと、二人が振り返ります。
「そこのたっゆんなお嬢はん、よければその段ボールを分けてくれはるか、一緒の舟に乗せて……」
神代夕菜さんの胸に視線を注ぎながら、瀬山裕輝くんが言いました。
「敵ですねえ。夕菜ちゃん、早く逃げるですぅ」
「ああ、ちょっと待ってや……」
キッと瀬山裕輝くんを睨みつけると、神代明日香さんが神代夕菜さんの手を引いて逃げて行ってしまいました。
「はみごにされてもうた……。仕方ない。こうなったら最後の手段や」
瀬山裕輝くんは、ゴミとして残っていた輪切りの丸太を拾うと、それをかかえて川に飛び込みます。そのまま、川を流されていきました。
★ ★ ★
「こんな感じですか」
なぜか水を入れたペットボトルを込みあわせて三角形の舟を作ったのは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)くんです。
前後はペットボトルで埋められ、一面だけ真ん中がちょうど顔を出せるぐらいに開いています。ガムテープでペットボトルを巻いて形にはしてありますが、あちこち隙間だらけでなんとも変な舟です。これでは浮かばない可能性もあります。
「さあ、出港です」
守護狐の面を被ると、紫月唯斗くんは舟を川に浮かべ……沈みました。ある意味当然の結果なのですが、紫月唯斗くんは動じません。そのまま乗り込むと、完全に川の中に沈んでいってしまいました。
★ ★ ★
「キリキリと縛りあげますわよ」
集めてきた丸太をロープで縛りあげながら、エリシア・ボックさんが言いました。ノーン・クリスタリアさんの方は、真空波で丸太を削ってオールを何本か作っています。
「完成ですわ。さあ、行きますわよ」
シンプルな筏ですが、その分、丸太筏組の中では早く完成しました。
二人とも用意していた浮き輪を装着すると、さっそく出発していきました。
『――きましたね』
二人の筏に近づく、怪しい影があります。紫月唯斗くんです。川の深いところで待ち構えていた紫月唯斗くんは、まるでコバンザメのようにエリシア・ボックさんたちの筏の下を掴んでくっつきました。そう、あの変な舟は、潜水艦――らしき物――だったのです。
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