リアクション
浅瀬地帯 再び時は戻ります。 先頭を行く秋月葵さんたちのタライ舟は、浅瀬にコツンと引っ掛かりました。 「溶けたところは水を入れて凍らせつつ、滑っていくぞー」 「すーいすーい」 また少し水を入れて凍らせつつ、底が氷であるのをいいことに、フォン・ユンツト著『無銘祭祀書』さんと秋月葵さんが、浅瀬を滑らせるようにしてタライ舟を押していきました。 すでにずいぶん上げ底状態になってきていますが、はたしてゴールするまでにタライの形状を保っていられるのでしょうか。 ★ ★ ★ 「ようし、一気に追い抜くぞ……あっ!?」 秋月葵さんを追うジェイコブ・バウアーくんたちでしたが、浅瀬に入ったとたん、筏の底が突っかかりました。 つんのめったジェイコブ・バウアーくんの上に、フィリシア・レイスリーさんが倒れてきます。 「こ、これは……」 背中に触れた柔らかい感触にジェイコブ・バウアーくんがフリーズしました。 「だ、大丈夫ですか?」 動かないジェイコブ・バウアーくんに、フィリシア・レイスリーさんが、どこか怪我でもしたのかと驚いて訊ねました。まさか、むにゅんとしたフィリシア・レイスリーさんの胸の感触のせいだとは言えず、ジェイコブ・バウアーくんはそのままでいます。 とは言っても、このままでは動けません。 「だ、大丈夫だ。い、行くぞ。うおおおおおおおおぉ!」 やにわに筏を担ぎあげると、ジェイコブ・バウアーくんが浅瀬を猛ダッシュしていきました。 ★ ★ ★ 「集中、集中じゃ……」 アガレス・アンドレアルフスさんが、何やらぶつぶつとつぶやいています。 どうせ、また後ろの女の子の水着姿をガン見しているんだろうと、リース・エンデルフィアさんはアガレス・アンドレアルフスさんを無視して超賢者の杖で浅瀬に乗りあげないように注意しながら進んで行きました。 「集中……」 相変わらず、アガレス・アンドレアルフスは後ろにいる葛城吹雪さんとコルセア・レキシントンさんの身体に視線をむけていました。だって、顔から上だと、紙袋を被った葛城吹雪さんが怖いんですもの。 そのまま、リース・エンデルフィアさんたちと、葛城吹雪さんたちは、無事に浅瀬を突破していきました。 ★ ★ ★ 「総員上陸用意。水中行軍を行う」 このまま進むと底が乗りあげそうだと判断したリブロ・グランチェスターさんが、全員に命令しました。船体は大丈夫そうでも、アウトリガーを損傷する恐れがあります。こういうときの判断に、躊躇はありません。即断即行です。 浅瀬に降り立つと、舟の前後を二人で持ちつつ、一気に突破していきます。 ★ ★ ★ こつん。 「あっ、やっぱりぶつかってしまいましたか」 すでに、氷山というか流氷と化している鬼龍貴仁くんの舟なので、さすがに水面下の部分が浅瀬に引っ掛かりました。 「仕方ない。やる気、出しましょうか」 いったん降りると、氷術で氷が小さくなりすぎないように調節しつつ、秋月葵さんたちのように浅瀬を滑らせて進んで行きます。 ★ ★ ★ 「浅瀬のようですよ」 先行する人たちが次々に引っ掛かったりしているのを見て、マティエ・エニュールさんが言いました。 「よおしぃ、降りて運ぶよぉ」 事前の打ち合わせ通り、曖浜瑠樹くんが筏を飛び降りました。浅瀬をズブズブと歩きながら、筏を運んで突破します。 ★ ★ ★ 「よし、一気に乗りきるぜ」 浅瀬に竹の竿を突き立てると、一気に雪国ベアくんが筏を押し出しました。 ずごっ。 あっけなく筏が乗りあげて、緋桜ケイくんたちが筏から投げ出されます。 「もう、ベアったら、何をやってるんですかあ」 顔から水に突っ込んだソア・ウェンボリスさんが、ぺっぺっと水を吐き出しながら怒りました。 「おかしいな。そうか、また太ったカナタが重くて筏のケツが……うぼあっ!」 悠久ノカナタさんの鉄拳を食らって、雪国ベアくんが吹っ飛びます。 「喧嘩しちゃダメです」 あわてて、ソア・ウェンボリスさんが間に入りました。 「そんなことしてないで、筏を担いで突破するぞ!」 何をしているんだと緋桜ケイくんが言い、一同は筏を持ちあげて浅瀬を渡っていきました。 ★ ★ ★ 「この程度の浅瀬なら、いけるよ」 吃水の低い丸太筏と浅瀬を見比べて、コハク・ソーロッドくんが言いました。 「レッツゴーだよー」 小鳥遊美羽さんが、一気に突破を指示します。 「こちらも続きます」 「えっ、それは……」 後に続こうとした戦部小次郎くんをリース・バーロットさんが止めようとしましたが、間にあいませんでした。吃水の高い段ボール舟が案の定浅瀬に乗りあげます。 「仕方ない、修理しながら進みますよ」 舟を逆さにして頭から被ると、戦部小次郎くんが予備のビニールシートとガムテープを渡して言いました。 「ここでですかあ!?」 唖然とするリース・バーロットさんに、戦部小次郎くんがうなずくように段ボール舟をこっくりとさせました。 ★ ★ ★ ゴツン。 「いっ痛ぅ〜……」 ラッコのようにペットボトルをかかえて川流れしていた清泉北都くんでしたが、あっけなく背中から浅瀬に乗りあげてしまいました。 「よいしょっと」 すかさず、リオン・ヴォルカンくんが、サイコキネシスで自分と清泉北都くんを立ちあがらせます。 「ここは浅瀬のようですね。駆け抜けましょう」 「面倒事は……嫌いなんだけどねぇ」 リオン・ヴォルカンくんに言われて、仕方なさそうに清泉北都くんが歩き出しました。 |
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