なし

リアクション

　
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　ちゃんとした舟の形をしている物は舳先がありますからなんとか水草をかき分けて進んで行きましたが、前方が平らで引っ掛かる部分が大きい筏にとってはここは鬼門のようでした。
「こういう所は、勢いが大事なんだよ」
　風術で思いっきり筏を加速して、カレン・クレスティアさんがまたもや一気に強行突破を試みました。
　当然の結果として、盛大に水草に絡まって動けなくなります。
「待っていてください。今助けてあげ……あれれれれ？」
　完全に流氷と化して丸くなりつつあった氷の筏で、鬼龍貴仁くんがカレン・クレスティアさんたちを助けに行こうとしました。けれども、途中で鬼龍貴仁くんの筏も止まってしまいました。よく見ると、水草が凍りついて筏に貼りついています。
「これは、きっついですねえ」
　二次遭難しては元も子もないと、鬼龍貴仁くんはなんとか水草を引き剥がしにかかりました。
　
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「参ったな。水草が邪魔で進めないぞ」
「なあに、障害は取り除かねばな。邪魔者は全て排除するまでのこと」
　筏が水草に絡まって止まってしまい、困ってしまった緋桜ケイくんに、悠久ノカナタさんがニヤリと意味深に微笑みました。
「ちょっと待て！　今、このへん一帯を吹っ飛ばすつもりだっただろう。あんなのやあんなのを巻き込むつもりか！？」
　まだ水草の中でもがいている瀬山裕輝くんやカレン・クレスティアさんや鬼龍貴仁くんたちをさして、緋桜ケイくんが言いました。一瞬、それが何かという表情を悠久ノカナタさんが浮かべます。その程度で死ぬような者はここにはいないだろうという考えのようです。
「二人とも、待ってください。進めた人たちもいるのですから、その後を追っていけば、ここから出られるはずです」
　あわてて、ソア・ウェンボリスさんが間に入ってきました。
「ふっ、バレバレだぜ。見つけたぞ、御主人」
　追跡の特技を駆使して、雪国ベアくんが先に進んで行った者たちの痕跡を見つけました。
「よし、では、そのルートを辿るのだ！」
　悠久ノカナタさんが、筏の前方を指さして言いました。
「いや、も少し右だから」
　そう言うと、雪国ベアくんが竹の竿を突き立てて筏を動かし始めました。
　
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「この程度の草など、障害にもなりませんね」
　戦部小次郎くんの舟が、みごとに水草を分けて進んで行きます。舳先があることに加えて、ビニールシートのおかげで水草が絡まりにくくなっているようです。
　
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「くさっぱなんて、突破なの……だ！？」
　またもや、屋良黎明華さんが草につかまって転覆しました。
『――よし、よし、よしっ』
　前転して吹っ飛ぶ屋良黎明華さんの姿に紫月唯斗くんがガッツポーズをとりますが、彼自身は思いっきり草に絡まれています。
「ええい、クイーン・オブ・ひゃっはあっ！　この黎明華に道をあけるのだあ！」
　ほとんど脅かすように、屋良黎明華さんが人の心、草の心で道をあけてもらいます。
『――好機！　悪いが、通らせてもらう』
　なんとか水草をふりほどくと、潜水した紫月唯斗くんは、水中から屋良黎明華さんのむきだしになったヒップを追いかけていきました。
　
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「余裕ですねえ」
　筏の修理を終えてお尻が痛くなくなった神代明日香さんが、妖精の領土を使って難なく水草を避けていきます。
　それに続く源鉄心くんたちもティー・ティーさんの見立てで難なく突破して行きました。
「私の心のコンパスが、行けと命じている。持てる力の全てを賭けて、行きます！」
　二人の航路をしっかりと覚えた芦原郁乃さんが、それに続きます。
　
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「そこを右！　今度は左！　ぐずぐずしない！」
「ううううう……」
　コア・ハーティオンくんの頭を股の間に挟んだラブ・リトルさんが、ぐいと身体を捻って進行方向を指示しました。妖精の領土から進む方向は分かりますが、なにせ、筏を動かしているのはコア・ハーティオンくんの身体のかたむきと夢宮未来さんの櫂使いです。
　むち打ちになりかけつつも、コア・ハーティオンくんの努力で、なんとか筏は水草地帯を抜けていきました。
　
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「うわっはははは……、踏みつぶせ！」
　ドクター・ハデスくんの段ボール戦艦が、水草などを物ともせずに進んで行きます。
「そろそろ明かりをつけないと……」
　かなりへこんできたお腹を押さえつつ、高天原咲耶さんが明かりをつけました。