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リアクション
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「お肉! お肉はまだ残ってる!?」
砂浜に駆けつけるなり、カレン・クレスティアさんが叫びながら走ってきました。
「これ、そんなに急ぐと転ぶ……」
ジュレール・リーヴェンディさんが注意するまでもなく、びったーんとカレン・クレスティアさんがすっころびます。
「だから、言わぬことではないのだ」
あちゃあっと、ジュレール・リーヴェンディさんが手で顔を被います。
「大丈夫だよ。さあ、思いっきりいくからねー」
めげずに立ちあがると、カレン・クレスティアさんがまだ残っていた各種お肉をザーッと鉄板の上に広げました。
★ ★ ★
「どうやら、間にあったようだな」
「そ、そうですね」
連れだってやってきたジェイコブ・バウアーくんとフィリシア・レイスリーさんですが、なんとなく態度がぎこちないです。どうやら、必要以上にお互いの視線を意識してしまっています。
「ふあ、おじじょうばま、ぶひひゃつだんでぶがあ」
リース・エンデルフィアさんが、口にいっぱい食べ物を詰め込んだまま、ジェイコブ・バウアーくんが紐でくくってぶら下げていたアガレス・アンドレアルフスさんに気づいて言いました。アガレス・アンドレアルフスさんは、まだ気絶しているようです。
「えっと……」
何を言われたのかよく聞こえなかったジェイコブ・バウアーくんが聞き返します。
「ゴックン……。あの、お師匠様を回収していただいて、ありがとうございました」
ぺこりと、リース・エンデルフィアさんがお辞儀をしてお礼を言います。
「えっ、これ、あなたのお師匠様だったんですか。わたくしは、てっきりいい食材かと……」
フィリシア・レイスリーさんが驚いたように言いました。危ないところでした、危機一髪でアガレス・アンドレアルフスさんは鳩の蒸し焼きをまぬがれたようです。
「じゃあ、後は頼むぜ」
リース・エンデルフィアさんにアガレス・アンドレアルフスさんを渡すと、ジェイコブ・バウアーくんはフィリシア・レイスリーさんと一緒にバーベキューに参加していきました。
「なんとか、残っている物をかき集めてきたぞ」
まだまだ豊富な海老カニホタテを皿いっぱいに取ってきたジェイコブ・バウアーくんが、それをフィリシア・レイスリーさんに手渡しました。
「あ、ありがとうございます」
受け取ったフィリシア・レイスリーさんが、すすすすーっと、浜辺におかれたベンチに引っ込みます。その隣にジェイコブ・バウアーくんも座りますが、なんとなく視線を合わせられなくて、黙々と食べる二人でした。
★ ★ ★
「やったで、生きて辿り着いたでー」
全行程川流れを達成した瀬山裕輝くんが、比較的元気に叫びました。
もうお腹いっぱい食べた人たちは、ゴロゴロと砂浜に寝そべって夏の夕暮れの海岸を堪能しています。水着から除く素肌が夕日に照らされて、綺麗です。
「美味しい食べ物、綺麗な水着、やっと目の保養やあ」
川下り中はいっぱいいっぱいで女の子の水着を堪能する余裕のなかった緋山政敏くんでしたが、今は至福の時のようでした。
★ ★ ★
「やっと辿り着けたのね」
少し息を切らしながらも、コルセア・レキシントンさんがほっとしたように言いました。
「おかしいなあ、もっと早く到着する予定だったのでありますが……」
解せぬと、葛城吹雪さんがつぶやきました。
「誰のせいよ。馬鹿正直に正面突破なんかし続けたからでしようが。さあ、食いっぱぐれないうちに、何か食べましょう!」
「了解であります!」
突っ込むコルセア・レキシントンさんにそう答えると、葛城吹雪さんは被っていた紙袋を脱ぎ捨てて駆け出しました。
★ ★ ★
「――トップでゴールしました。たくさんの豪華海鮮を二人占めできて大満足です。……送信っと。ちゃんと送ったよー」
ノーン・クリスタリアさんが、お留守番の御神楽 陽太(みかぐら・ようた)さんにメールを送ったことをエリシア・ボックさんに告げました。まあ、ほとんどうそなわけですが……。
「御苦労様でしたわ。せいぜい、陽太には、美味しい物を食べていると思わせて、悔しがらせてあげませんと。でも、わたくしとしては、コウイカがバッチリ残っていたので満足ですわあ。イカは逃しはしませんわ」
はぐはぐと、コウイカのバター焼きを頬ばりながらエリシア・ボックさんが言いました。
「終わったね。みんなで甘ーい物食べよー。マンゴーとかスイカとかメロンとか、美味しいよね」
デザートもまだふんだんに残っていたので、ノーン・クリスタリアさんも満足のようです。意外と、安上がりな二人なのでした。
★ ★ ★
「あれえ、兵学舎のみんなは? どうやら、俺が一番乗りのようですか。はっははははは」
嬉しそうに笑う鬼龍貴仁くんでしたが、全体としては真ん中以下です。そろそろ高級食材からなくなり始めています。
「いけません。さあ、食べないと。やる気出しましょうか。まずは、冷えましたから、暖かい物がほしいですね」
我に返って、バーベキューに飛びつく鬼龍貴仁くんでした。とりあえずは、アオサのお味噌汁といつの間にか戦部小次郎くんが作っていたブイヤベースからです。
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「やったあ、ついに私は航海王になったよ!」
「なってない、なってない」
遅ればせの到着なのに勝ち誇る芦原郁乃さんに、秋月桃花さんがそれはないと顔の前で手を振りました。
「だいたい、もう高い物はほとんど残ってないじゃないですか」
「航海王なのに、みんなのお腹を満たせないなんて……。みんな、ごめん」
「いきなり、そんなに反省されても……。心配ないです、大丈夫です。さあ、食べ物が残っているうちに食べましょう」
そう言うと、秋月桃花さんが芦原郁乃さんの手を引いてバーベキューにむかいました。