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夏合宿 どろろん

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夏合宿 どろろん

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「この組み合わせには、何者かの悪意を感じますら」
「そうかあ、俺様のリクエストだったんだが」
 ドスドスと森の中を歩いて行くのは、キネコ・マネー(きねこ・まねー)くんと雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)くんのペアです。何やら、最初から険悪な様子ではありますが。
「ここいらで、はっきりさせておくのもいいと思ってな」
「ほお、いい度胸ですらね。何をはっきりさせるですら。どちらが、最高に可愛いゆるマスコットで、どちらが最低なダメキャラかっていうことですら? もちろん、もう答えは出ていますらね」
「ああ、答えは出ているよな。きっちりと」
 バチバチと、雪国ベアくんとキネコ・マネーくんの視線が火花を飛び散らせてぶつかりあいます。
「ふふふふふ、ですら!」
「はははははは、だぜ!」
 いったい、この二人は何をしに来たのでしょう。
「どうやら、駄クマとは、意見の相違があるようですらね」
「おうおう、デブ猫には言われたくないぜ」
「やるですら?」
「やるか!」
 互いに睨み合ったまま、二人が走りだしました。
ダークネス、ベアクロー!
「百両猫パ〜ンチ!」
 走りながら、必殺技の応酬です。
『ひいぃぃぃっ〜』
 何やら、森の中で悲鳴のような声がしましたが、全然二人の耳に入ってはいません。
「あれえ? ボリューム小さかったのかなぁ」
 デジタルビデオカメラに怖い声を記録して流していたヒメリ・パシュート(ひめり・ぱしゅーと)さんが、二人が駆け抜けていった道の脇の茂みで小首をかしげました。
 ドドドドド……。
「あ、二人とも来ましたね。仲良くしていてくれるといいんですが」
 木から吊したゆる族の抜け殻を持ったソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)さんが、木の上からタイミングを計ります。
「えいっ!」
 近づいてきた雪国ベアくんたちの上に落とそうとしますが、失敗です。それよりも早く、二人は駆け抜けて行ってしまいました。
「ベアは、何をやっているんです!?」
 唖然とするソア・ウェンボリスさんでした。
「来たわよ。一気に躍り出て、脅かすんだもん」
「でも、僕は……」
 こちらは小鳥遊美羽さんとコハク・ソーロッドくんですが、まだ、コハク・ソーロッドくんは乗り気ではありません。
「その格好で、脅かさないなんて、ないんだもん。ほらあ!」
シャイニングベアクロー
「千両箱、アターック!」
「うきゃあああ……」
 本家雪国ベアくんの前に躍り出た小鳥遊美羽さんとコハク・ソーロッドくんでしたが、暴走する二人に気づいてもらえずに弾き飛ばされました。
「今、何か、いたか?」
「そっちが怪我して血を出して腐っているヴィジョンなら見ましたら」
「幻だ。俺様はピンピンしているぜ」
「早く、腐ってしまえばいいですら!」
「あたたたたたた!」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
「コノろ……。ウガア!?」
 続いて脅かそうとした夢宮 ベアード(ゆめみや・べあーど)くんが、間に挟まれて粉々にされます。ポータラカ人でなかったら、危ないところでした。
「さてと……」
 身体中に芋虫の粘液で種モミをくっつけた種モミマンと化した久我 浩一(くが・こういち)くんが、囮のゲーム機を茂みにおいて待ち構えています。ゲーム機のインジケータの明かりに気づいて近寄ってきたところを後ろから脅すつもりなのですが……。
「あたたたたたた!」
「にゃにゃにゃにゃにゃ!」
 当然のごとく、雪国ベアくんとキネコ・マネーくんはそのまま通りすぎていってしまいました。
「気づいてくださいよ!」
 久我浩一くんの叫びもむなしいだけです。
 海岸に出ても、二人の戦いは終わりません。波打ち際の水をバシャバシャと撥ね飛ばしながら、砂浜を駆け抜けて洞窟に飛び込んでいきました。
 洞窟で待ち構えていたのは、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)さんです。メモリープロジェクターで、洞窟が行き止まりのように見せかけています。
「どうやら、ここが終点のようですらね」
「ああ、決着をつけようぜ」
 ジュレール・リーヴェンディさんの作りだした壁の前で雪国ベアくんとキネコ・マネーくんが立ち止まって対峙しました。
 そのときです。
 ずるり、ずるりと、奇妙な音が聞こえてきました。突然、ズンと岩壁から手が突き出て、二人の足を掴みます。
「よこせえ、着ぐるみよこせえ。早くチャックを開けて、あたしを中に入れてえ〜」
 長い髪を振り乱した幽霊が、二人の着ぐるみを掴んでズルズルと這い上ってきます。
「ひえ〜!?」
「ですら!?」
 ふいをつかれた二人が、びっくりしすぎてぱったりと倒れます。
「あー、あー、こちら洞窟。二名脱落。回収を請う」
『了解、すぐにむかいますよぉ』
 ジュレール・リーヴェンディさんが無線で本部に連絡すると、清泉北都くんの声が返ってきました。
「これで大丈夫……、こら、カレン、本当にチャックに手をかけるでない!」
「入れてえ、中に入れてぇ」
 なんだか、鬼気迫る形相で、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)さんが、本当に雪国ベアくんのチャックを開けようとしています。
「だから、プラシーボ薬まで飲んで役になりきるのは危険だと言ったのだ。こらあ!」
 きれいな髪の毛でできたカツラを引っぱるとすっぽりと脱げてしまったので、ジュレール・リーヴェンディさんがあわててカレン・クレスティアさんを羽交い締めにしました。