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リアクション
★ ★ ★
「では、参りましょうか。まずは、御挨拶代わりに花一輪」
エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)くんが、レティーシア・クロカス(れてぃーしあ・くろかす)さんにすっと薔薇の花を差し出しました。
「あっ、ありがとうございます。では、一気に行きましょうー」
花を受け取って優雅に会釈をすると、一転してレティーシア・クロカスさんが先頭に立って歩き出しました。
「あっ、いや、俺が先導します」
あわてて、エース・ラグランツくんが後を追いかけました。
「うん、でも、このくらいなら大丈夫ですわ」
「肝試しが好きなんですか?」
「好きというわけでは……。でも、面白いじゃありませんか」
ニッコリと笑うレティーシア・クロカスさんは、ちっとも雰囲気に呑まれていません。まあ、いろいろ乗り越えてきましたから、逞しくなってきているのでしよう。
「やれやれ。でも、ここはレディファーストとはいかないな。露払いは俺がやりますよ」
そう言うと、エース・ラグランツくんがレティーシア・クロカスさんの前に立ちます。そこへ飛んできたコンニャクが、べちゃりとエース・ラグランツくんの顔に命中しました。
「やったね」
ソア・ウェンボリスさんが勝ち誇りました。命中です。
「ふっ、大丈夫でしたか?」
「いえ、あなたの方が大丈夫でした?」
ちょっとピクピクしながら地面に落ちたコンニャクを脇に蹴り飛ばして聞くエース・ラグランツくんに、レティーシア・クロカスさんが逆に訊ねました。
「来たねぇ、来たねぇ。さあ、驚かすよぉ」
二人がやってきたのに気づいた永井 託(ながい・たく)くんが、待ってましたとばかりに紐を引っぱりました。
だらんと、いきなり首つり死体が落っこちてきます。コピー人形を吊しただけの物ですが、光術で不気味に光らせて雰囲気はバッチリです。
「まあ、怖い」
いや、レティーシア・クロカスさん、全然怖がってません。
「それならこれはどうだぁ」
永井託くん、今度は火術で火の玉を作りだし、風術でふわふわと二人の方へと流していきました。
「む、今度は火の玉かよ。大丈夫です、追っ払いますので」
エース・ラグランツくんが、風術で火の玉を押し返そうとします。
「むむむむ、やりますねぇ。せっかくの火の玉を……。勘弁してほしいなあ。これでどうだい」
永井託くんが、再び風術でもう少し強く火の玉を押し出しました。
「逆らうだと!? これならどうだ!」
エース・ラグランツくんが対抗します。なんだか、お互いに風術で火の玉の押し合い合戦になってきました。
「頑張れー」
レティーシア・クロカスさんとは言えば、ちょっと楽しそうです。
しばらくして火の玉が消えてしまい、魔法合戦もおしまいです。あまりぐずぐずしてもいけないと、二人は先に進んで行きました。
率先して仕掛けに引っ掛かるエース・ラグランツくんのおかげもあってか、無事(?)に森を抜けました。
「ほんと、怖い物知らずなんですねえ」
エース・ラグランツくんは、レティーシア・クロカスさんに感心然りです。
「このくらいでしたら……」
レティーシア・クロカスさんが微笑んだときでした。波打ち際を、誰かが水飛沫を上げて走ってきます。
「うわあああああ、どこに行ってもお化けだらけだあ! うわあああああ!!」
なんだか、恐ろしい雄叫びをあげて、身体中から何か千切れかけた長い物を引きずりながら、誰かが走ってきます。あれは、臓物か何かでしょうか。
「そこのおぬし、わしと一緒に……、化け物に……一緒になる……うがああああ!!」
もの凄い勢いで、それが迫ってきます。
「きゃあああ、さすがにあれはダメです! 無理、無理ぃ!!」
「ああ、待ってください。一緒に逃げましょう!」
ワカメやら昆布やらを引きずったまたたび明日風(木曾義仲)くんから、二人は一目散に逃げだしました。
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