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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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『C』 ~Crisis of the Contractors~(後編)

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六日目

 表向きでは、何事もなく進む『人材発掘プログラム』。その裏ではもう一人の『C』、コード:S^2なる敵の襲撃や、怪異、エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)が現れるという出来事があった。
 そんな中で、プログラム過程もよいよ終盤へと差し掛かる……。

 予選会の始まる前の教室。教壇にはレイ、新風 燕馬(にいかぜ・えんま)サツキ・シャルフリヒター(さつき・しゃるふりひたー)フィーア・レーヴェンツァーン(ふぃーあ・れーう゛ぇんつぁーん)の姿があった。
「みんな聞いてくれー」
 燕馬が教室内の生徒に呼びかける。
「これから予選会な訳だけど、参加者を対象に健康診断をさせてもらおうと思う」
「健康診断? しかし、また急な話だな」
 燕馬の言葉に反応したのは、トーマス・ハミルトンだ。
「ま、単なるメディカルチェックだよ。せっかくだから万全の状態で受けてもらいたいからね」
「学校側に許可は取ってあるからみんなちゃんと受けるように! 体調不良で調子が出ませんでしたとか言っても遅いからね!」
「体調不良の人は早めに申告すること。あ、診断結果次第ではドクターストップかけるからそのつもりで。特に! イコンパイロットは念入りにアルコール検査するからな!」
 ビシッ! と言い放つ燕馬。
「それじゃ、保健室でやるから順番に来てくれー。二人とも案内よろしく」
「分かりました」
「了解ですぅ」
 準備のため、一足先に燕馬が教室を出て行った。
「それでは前の方から順番に保健室へ。戻ってきたから次の人お願いします」
 指示を受け、生徒達が保健室に向かい始めた。
「飲酒する人なんているのかしら……?」
「案外、いるかも知れませんよ?」
「……飲酒運転、ダメ、絶対」
「そうね。さてと、私たちの番かしら」
「そうですね。では姉さん、行きましょう。パトリシアさんも行きますか?」
「えぇ。行きましょ」
 順番が回ってきたのを確認し、パトリシア・ブルームフィールドサーシャミーシャが保健室へと向かう。
「んじゃ、行って来るか」
 その少し後、トーマスが席を立つ。
「行ってらっしゃい」
「ん? ケビンは行かないのか?」
「僕は予選会に参加しないからね。参加者を対象にするなら僕はする必要がないでしょ?」
「それもそうだな。じゃあ、行ってくる」
「うん」
 見送るケビン・サザーランドを背に、トーマスが保健室へと歩を進めた。
「ふぁ……暇だなぁ……」
 ケビンと同じように受ける気のないレイは、暇そうに外を見ていた。
「さて、そろそろですねぇ……」
 その様子をジッと見ていたフィーアが、案内をしていたサツキへと近寄っていく。
「ほら、そこのクライベイビー! もっと、きびきび案内するですぅ!」
 サツキは急に声を上げたフィーアに、ビックリした。
「……なんなんですかいきなり」
「さっきから、見てたら。のろのろとしてるからですぅ! 早くしないと予選会始まっちゃうですよぉ!」
 チラッとフィーアが目配せした先には、ケビンとレイがいる。
「……チッ、分かりましたよ」
 意図を理解し、サツキは誰にも聞こえない程度に舌打ちした。
「さっきから黙って聞いていれば……。そういうならペタンポポ。アナタこそ、じっとしてないで案内したらどうですか? 何もしないでいるアナタよりか私は仕事をしているつもりですが?」
「むむむっ! そんな事言うクライベイビーには……! こうですぅ!」
 どこからか取り出した注射器をサツキに向けて投げくる。
「っと、保健室から勝手に持ってきましたね……」
「避けるなですぅ!」
「それは無理な話です。そもそもそのようなもの投げつけるものではありません。何を考えているのですか?」
 サツキは回避しつつ、さりげなく位置を調整した。
「ちょっとちょっと! 教室内でそんな危ない喧嘩しないでくれる!?」
 さすがに見かねたレイが止めに入ってくる。
「こしゃくな、ですぅ!」
「あぶなっ!」
「わっ!?」
 フィーアの投げた注射器がレイとケビンの近くを掠めた。
「こらーっ!! いい加減にしなさーい! もう少しで当たりそうだったじゃない!!」
 レイが怒鳴ったところで、二人は動きを止めた。
「わわっ、ごめんなさいですぅ!」
「お怪我はありませんか?」
「びっくりしたぁ……。ちょっと掠めたけど、大したことないみたい」
「いえ、一応見てもらいましょう。もし後で、大事になられても困りますので」
「えっ! いや別に僕は……」
「レイさんも」
「えっ、別にいい……」
「それじゃ、フィーアが困るですぅ。じゃあ行くですよぉ!」
 若干無理やりながらもサツキとフィーアは、レイとケビンを連れて行った。
 
「……全く、二人とも何してるんだ」
 ケビンとレイの状態を見ながら、燕馬はため息をついた。
「ごめんなさいですぅ」
「申し訳ありません……」
「注射器なんか使うなんて……、ないとは思うけど感染病のこともあるから採血もさせてもらうよ」
「もう……。二人とも今後は気をつけてよね」
「俺からもきつく言っておきます。よし、終わり。戻って良いですよ」
「余計な手間かけてくれるんだから……」
「では失礼します」
 二人が保健室を出て行く。
「……これで全員分は採血できたな」
「……成功ですぅ!」
「これで収穫なかったらどうしてくれよう……」
 燕馬の狙いは血液検査にかこつけた採血。DNA情報の入手にあった。
「後は、これを分析して……、『C』の手がかりになれば良いけど……。とりあえず、フィーア。お手柄だけど、注射器は持って行かないように」
「はぁいですぅ……」
「それじゃ、分析を始めるか。二人とも手伝いよろしく」
「はい」
「了解ですぅ」
 いそいそと採血した血の分析準備を始める三人だった。