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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

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ガラクタ屋敷攻略大作戦!

リアクション

 ガラクタだらけの家の正面へ次々と人やトラックが集まる。
 佐那具のガラクタに悩まされていた住民達は「いよいよか」という表情で作業を見つめていた。
「よーし、そうだコード。そのままゆっくりと持ち上げろ」
『了解、ダリル』
 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はイコンの輸送車から通信機で指示を送る。
 それを受けてパワードスーツジンに乗り込んだコード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)は慎重にマニピュレーターを操作して、上に積まれたガラクタを纏めて持ち上げるのであった。
「あのイコンを操縦しているのがさっき言ってた……『コード』だっけか?」
 それを見ていた長曽禰 広明(ながそね・ひろあき)は、傍らに立って自分達の作業の説明をしているルカルカ・ルー(るかるか・るー)に問いかけた。
「はい。ニルヴァーナで出合った新しい『家族』なんですよ」
「ふぅん……まだまだ動きがぎこちないな」
「練習中ですから。この仕事が終ったら、ぜひあの子にパワードスーツ指導をお願いしますね」
「そのうちな。俺もこことニルヴァーナを行き来しなきゃいけないから暇がねぇんだ」
「大変なんですねぇ……あ、コール!ガラクタはこっちにトラック用意するからここまで持ってきてね!」
 そう言ってルカルカはポケットから『ぽいぽいカプセル』を取り出す。
「えーっと……この辺でいいかな」
 ルカルカはパートナー達が持ってきた分のカプセルもぽぽい、と道路に放り投げた。
 小さな爆発が起きたかと思うと、次の瞬間目の前には4台の『創世運輸トラック』が出現した。
「へーえ」
 ジンの中でそれを見ていたコードは興味津々といった様子で声をあげる。
 その瞬間、コードが操るパワードスーツの手からガラクタがこぼれ落ちた。
「しま……おわ!?」
 慌ててコードはガラクタを拾い上げようとするが、逆にバランスを崩して倒れそうなってしまうのであった。
『危ない!!』
 近くでジンに乗って片付け作業をしていた夏侯 淵(かこう・えん)が咄嗟に近づくと、コードの機体を後ろから抱えあげる。
 同時に落としたガラクタをキャッチすることで、なんとか事なきを得るのであった。
「だ、大丈夫コード!?」
『無事か!?応答しろ、コード!』
『怪我はないか?』
「ああ、大丈夫だ。迷惑をかけてすまん」
 申し訳なさそうに言うコード。
 その言葉を聞いたルカルカは、
「よかったー。コードが大丈夫なら、それでいいよー!」
 地上から大きく手を振り、笑顔で応えるのであった。
「中佐へのあいさつも済んだし、ルカもパワードスーツでお手伝いするね!ちょっと待っててー!」
 そう言ってルカルカは楽しそうにパワードスーツの待機場所へ向かう。
 そんな後姿をモニターで見つつ、
「……ルカルカは何をやっても楽しそうだな、何故だ?」
 コードはぽつり、と呟いた。
『何事も楽しんだ方がよいではないか』
 そんな彼の囁きに答えるように、スピーカーから淵の大らかな声が響いた。
「そんなものか?」
『そんなものさ。俺達は家族でチーム。遠慮はいらぬ、仲良くしていこうな』
「家族……それを望むのなら」
 悪くはないな。
 そうコードは思うのであった。
『おまたせー』
 すぐ目の前に、ルカルカの乗ったパワードスーツが現れる。
『じゃあ、作業の続きを始めましょうか。あ、あとコード』
 通信機越しに聞こえるルカルカの声はやはり楽しげである。
 どこか悪戯っ子のような含みを持たせると、
『ルカルカじゃなく、ルカって呼んでねー』
「聞いてたのか……」
 コードは戸惑うように呟くと、少しして「分った」と返答を返すのであった。
「新堂、早く残す物と捨てる物を決めてくれ」
「そんなこと言われてもなぁ……」
 ダリルの急かす言葉に、新堂佐那具は戸惑いの声をあげる。
 ダリルは事前に「納屋に残すものを幾つか選ぶといい」と言っていたのだが、新堂にとってここにあるガラクタすべて「その内使うつもり」でいたのだ。
 選別は遅々として進まず、いまだ半分以上が未選別の状態で積み重なっていた。
「これはアレに使えそうだし……これなんかここをいじれば……」
「……技術者としては廃棄の残念さは分からなくもないが」
『ダリルはどうなの、その辺』
 ルカルカは何とはなしに聞いた。
「俺?必要不可欠な物だけを整頓して保管してある。さて、こちらとしてもルカやドッペルゴースト達に指示を出さねばならないんだが……まだか、新堂」
「ふーむ……」
『はっは、ダリルが他人の面倒を見ておるわ』
「……」
 通信機から聞こえる淵の笑い声にしばし沈黙するダリル。
 少し赤くなっているように見えるのは気のせいか。
「とにかく、じきに他の片付け要員達もやってくるんだ。その時になってまだ選別ができないようだと、いつまで経っても終らないぞ」
「あぁ、分かってますって……えっと……」
 そう言って再び頭を抱える佐那具。
 そんな彼の元に、
「私にも分かるよ、なかなか捨てられないよねー」
 と明るい声がかけられた。
 赤いポニーテールを揺らして積み上げられたガラクタを眺めるファニ・カレンベルク(ふぁに・かれんべるく)は、材料のひとつを手に取ると「うんうん」と頷く。
「ほら、これなんて上手く加工すれば、機晶姫の応急補修パーツにできるし!」
「あ、わかります?もともとは機晶ロボットの部品にするつもりだったんですけど……」
「へー、お宝こそ無いけど、なかなかどうして応用の利くものが……」
 こうして選別作業そっちのけでファニと新堂が喋っていると「おい、ファニ!」と大きな声が響いてきた。
 それは広明に挨拶をすませ、ガラクタの片づけを始めようとしていたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)であった。
「お前、いつまでも意気投合してるんじゃないッ!さっさと作業始めるぞ!」
 そう言うとエヴァルトはファニの首根っこを掴むと、
「わーっ、ごめん!真面目にやるよぉ!」
 ずるずると引きずるように作業現場に向かうのであった。
「さて、さっそく『ドラゴンアーツ』で……と言いたいところだが」
 エヴァルトは積み上がったガラクタの山を見上げた。
 それはすでに彼の身長を遥かに凌駕し、家の天井まで届きそうである。
「なんというガラクタの量だ……幸いイコンを持ってきてるヤツもいるみたいだし、大量運搬はそっちにまかせるかね」
 その言葉と同時に彼はガラクタに向けて『アブソリュート・ゼロ』を発動させる。
 ガラクタを纏めて包むように凍らせると、それをルカルカたちパワードスーツ隊に渡す。
「これならちったぁ効率も上がるだろ。イコンの装甲並みのゴミ袋とでも考えてくれればいい。運搬時に破れることはまずありません!カラスにつつかれても大丈夫!臭いも出ないので不満も無し!ってな」
「でもこれ、どうやって溶かすの?」
「……」
 ファニの突っ込みにエヴァルトは沈黙する。
 どうやらそこまでは考えていないようだった。
「ま、放っておくか炎をかければ溶けるんじゃね?とにかく次々!」
 特に深く考えないようにしつつ、彼は再びガラクタを纏めて凍らせる。
 そして、とあるガラクタ入りの氷を持ち上げたときだった。
「おわ!?」
 エヴァルトは思わず氷を落とし、全力で後ろに飛び退った。
 氷の中に、ガラクタと一緒に凍らされたGがいたのだ。
「あー、エヴァルト君こういうの苦手だったっけ」
 ファニは氷に近づかないように遠巻きに見つめ呟く。
 エヴァルトもその氷をもう一度持ち上げようという気にはならないらしい。
「ガラクタだけだと思って油断したぜ……そうだよな、こんなんじゃ生ゴミも放置されてる可能性もあるよな……嫌なんだよな、一般に虫と言われるようなやつは全部ッ!」
「そうだねぇ……あ、そうだ!」
 ファニは自分の荷物をゴソゴソと漁ると、3頭身の美少女型に改造された一体の戦闘用イコプラを取り出した。
 「行け!猛撃滅虫!Eジェットさん!」
 その戦闘用イコプラは物理的に害虫を駆除するようプログラムを組まれている。
 ファニの手から降り立ったEジェットさんは積まれたガラクタの山や家の構造をインプットするため駆け出したのであった。