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死の予言者

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死の予言者

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 5 

「どうしてこんな事になるんです?」
 隠代 銀澄(おぬしろ・ぎすみ)は走りながら叫んでいた。
 背後から物騒な連中がが追いかけて来る気配が、ビンビンに伝わって来る。
「やはり、あの占い師は本物だったという事ですか?」

 そう、思い返せば3日前。
 銀澄は葦原の町を散策していた。人との待ち合わせのためだ。
 待ち合わせ相手は樹龍院 白姫(きりゅうりん・しろひめ)ではない。彼女はマホロバ大奥から基本出かけられないのでここには来られない。では、誰と待ち合わせなのかと言えば……まあ、そんな事はこの際あまり問題でないので省くとしよう。
 それより、その時、銀澄の前に怪しい占い師が登場したのだ。
 穏やかな葦原の午後には妙に不釣り合いなダークなオーラをかもし出した老人。
 よせば良いのに銀澄は興味を持ってしまい、
「人との待ち合わせまでもう少しありますね。占いでもヒマつぶしにしてもらいましょう」
 などと呑気に構えて占ってもらったところ、
「お嬢ちゃんは3日後に死ぬよ」
 と宣告された。
「拙者が3日後に死ぬですって?」
 驚いたものの、さほど真剣には受け止めなかった。占いなど、当たるも八卦、当たらぬも八卦なのだから。
「一応気をつけます」
 それで、話は終わったはずだった。
 なのに、どうしてこんな事に。
 これでは、まるで、あの占いが的中したかのようではないか。

 不意に前方から忍びが襲いかかって来る。
 どうやら、先回りされていたようだ。
「なにやつです!」
 銀澄は叫ぶと、後の先的な技の『抜刀術『青龍』』で迎撃!
 覆面の男が悲鳴をあげて地上に倒れる。
 この素早さ、そして、あの技はどうやら忍びのようですね、と銀澄は見当をつけた。
 見当をつけたところで、また襲いかかられ、とっさに『真空斬り』で覆面だけ斬って顔を見ると、その顔を心に刻む。
「一体、何人倒せばいいのでしょうか?」
 銀澄は『見鬼』『ディテクトエビル』で周囲を警戒しながら先へ進んで行った。
 しばらく行くと、小さな神社にたどり着いた。
 『清里神社』とある。
 ここならば安全ではと、境内に入って行ったが、周囲の殺気はますます強くなって行くようだ。
 いけない、引き返しましょう。そう思ってきびすを返した時、いかにもただ者でないオーラを纏った一団がこちらにやってくるのが見える。先頭にいるのはいかにも百戦錬磨といった感じの隻眼の男だ。

 またもや敵のようです……!

 境内を満たす邪悪な雰囲気と、男の容貌を見て、銀澄は完全な早とちりをした。
 それで、刀を抜いて隻眼の男の前に立ちはだかった。
「私を殺したければ、正々堂々と戦いなさい」
 と。
 そして、いきなり男に斬り掛かった。

「何者だ?」
 隻眼の男……十兵衛はとっさに刃を抜いて銀澄の一の太刀を受け止めた。
「それは拙者のセリフです」
 叫びながら銀澄は二の太刀を繰り出す。
「あなた方は一体何者ですか? 集団で執拗に命を狙うとは武士の風上にもおけませんよ! 一体、目的はなんですか? もしかして、あの占い師もグルなのですか? そうでしょう」
「まてまて」
 十兵衛は銀澄の攻撃を避けつつ叫んだ。
「今の言葉が本当ならば、我々はお主の敵ではない。味方だ」
「え?」
 その言葉に銀澄は剣をおさめた。
「本当に?」
「本当です」
 竜胆が言った。
「私達もその占い師と、一味の事を探っているのです」
 そして、銀澄に風太郎の一件を話した。
「なるほど」
 銀澄はうなずく。
「つまり敵は甲賀の忍びと言う事ですか。しかし、任務の為とは思うけれど、罪なき民を殺すのは許せません。私も事件解決に協力させてください」
「それは願ってもない事だ」
 十兵衛が言う。
「実は護衛の数が足らなくて困っていた。助力願えるなら、屋敷まで案内しよう」
「是非」
 こうして、十兵衛は銀澄を連れて日下部邸に帰って行った。


 後に残った竜胆達は、引き続き調査をするために神殿に入って行った。
 神殿の中にはご神体である像が置かれていて、その前に鏡が置かれている。
「あの鏡を動かしていたんだよ」
 レキが言った。
「確か、右に二回。左に三回だったよ」
 レキに言われたとおり、竜胆は鏡を回してみた。
 すると、目の前の像が開き、目の前に階段が現れる。
「行きましょう」
 こうして、竜胆達は階段を降りて行った。
 石でできた薄暗い道を両側に点されたローソクの光だけを頼りにうねうねとした道を進んで行く。
 しばらく行くうち、一同はだんだん不安になってきた。一体、この道はどこまで続くのだろうと。
「おかしいですね」
 竜胆はつぶやいた。
「いくらなんでも、これは長過ぎる」
 竜胆は懐から破邪の笛を取り出すと、試しに吹いてみる事にした。
 たおやかな音色とともに、一同の視界が徐々に開けて来る。
 そして、気がつくと小さな部屋に立っている自分達に気がついた。
 目の前には一人の青年が悠然と座って。
 白い衣を纏い、長い銀髪を高く結い上げ、紫色の優しげな目で一同を見ている
「あなたがオズノですか?」
 竜胆の言葉に青年はゆっくりとうなずいて言った。
「よくここまで、たどり着けましたね。とりあえず褒めて差し上げましょう」
 その時には既に一昼夜が過ぎていた事に一同はまだ気付いていない。