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死の予言者

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死の予言者

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 7 


「洋孝、防衛計画にて敵の動きを予測、エリス、みとは私とともに直接護衛」
丸山風太郎の潜む部屋の側で、相沢 洋(あいざわ・ひろし)がてきぱきと指示を下していた。
「了解です。まあ、忍びもこれだけ厳重であればなんとかなるでしょう」
 乃木坂 みと(のぎさか・みと)が答えた。
 口調をいつもと変えて完全な女性将校として敬礼もしておく。これは、変装の得意な鳶ノ段蔵対策だった。しかし、
(必要があるとは言え、口調を変えるのは苦手ですわ。まあ、問題ないでしょう。任務さえ済ませればいいのですから)
 内心みとは思っていた。
「防衛計画……どー考えても24時間完全隔離しかねえ……隊長ー。本当にやるんですかー?」
 相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)が子供っぽい声を上げながら洋に質問する。いつも使うじーちゃんという呼び名はげんこつをくらった時だけにして、真贋鑑定に用いるとする。
「必要なら屋敷を破壊してもいい。護衛対象を逃がすことも検討する」
 洋は答えた。
 どう見ても暗殺だろうが、最悪の場合は殺させるよりは逃がす方を選ぶことにしておく。
「作戦自体は基本に忠実、頑迷固陋なる教導団風味ですね」
 エリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)が言った。彼女も今回は真贋鑑定のために以上という口癖は可能な限り封印している。

 こうして彼らは洋の指示に従い、配置についた。
 だが、しばらくは、何も起きなかった。
 不気味なほど静かだ。
 やがて、洋が言った。
「それでは休憩だ、交代は必ず2人1組だ。襲撃あれば爆発させろ。それだけでもこちらへの警告になる」
 まずは女性陣二人が休憩をとることになった。
 エリスとみとは二人チームを組み、偵察を兼ねて厠に向かう。
「エリス……問題はないかしら?」
 周囲を警戒しながらみとがいう。
「さあ。不気味なほど静かですが、油断は禁物です」
 しかし、結局何事もおきず無事に洋達と交替する事になる。
「それでは見張りを変わりましょう」とエリス。
「じゃあ、偵察いきますかねー」
 洋孝は洋とともに偵察を兼ねた休憩に向かった。
 そして、渡り廊下にさしかかった時
「段蔵が逃げたぞ」
 という声がどこからか聞こえてきた。
「何?」
 洋達はその言葉に反応する。
 その時、がさりとどこかで何かが蠢く音がした。そして、何か……人影のような者が庭を突っ切っていく。
「敵だ!」
 洋孝は人影を追って走り出した。
 後を追おうとした洋の前に何者かが立ちはだかる。
 忍びだ。

 バシュ!

 洋はとっさにラスターハンドガンを撃った。
 忍びの者は声もたてずにその場に崩れ落ちた。
 しかし、洋孝の姿を見失ってしまう。
 まずい状況だ……と洋は思った。
 もし、今、変装した段蔵が現れたら……。

「逃げられた……」
 洋孝が戻って来る。
「……」
 洋は洋孝を見つめた。怪しい所はないようだが。

 ガン!

 洋はおもむろに洋孝の頭を殴った。

「いってええ! 何するんだよじーちゃん!」
 洋孝は怒って反撃してきた。どうやら、本物のようだ。
「わるい、わるい」
 洋は洋孝に謝る。
 と、不意に背後に気配を感じた。
 ふりかえると、みとが立っている。
「みと? なぜ、一人で?」
 洋の言葉にみとは血相を変えて答える。
「敵が現れました!」
「なんだって? ヤバいじゃん」
 洋孝が慌てて駆け出そうとする。
「待て!」
 洋が止めた。
「え?」
 洋孝がふりかえると、洋はみとに手を伸ばし、その唇にセクハラ替わりのキスをした。
「いや、やめて……」
 みとが顔を赤くして抵抗した。そして、洋の手をふりほどいて逃げる。
 その仕草を見て洋は敵だと仮定する。
 そして、みとに銃を向け発砲した。
「ラスターハンドガン、これなら……問題あるまい」
 最初の攻撃はダメージを与えないようにしておく。
 すると、みとは。いや、みとの姿をした者は、素早く銃弾を避けて刀を抜いた。
「やはり、偽物か」
「何を言うのですか? わたしはみとです」
 みとは首をふった。

 一方、風太郎の部屋の前で見張りを続けていたみととエリスの前にも異変が起きていた。
 なにか禍々しい気配がとともに、忍びがついに襲いかかって来たのだ。
「敵!」
 みとはファイアストームで爆発を起こした。
 その音に洋孝と洋も気付く。
「あれは?」
「ここは、私にまかせてあちらを援護しろ」
 洋は洋孝に指示する。
「わかった」
 洋孝はうなずくと風太郎の部屋に向かった。
 その後を忍び達が追いかけて行く。
「くらえ!」
 洋孝はとにかくまずは銃を乱射してでも護衛対象に近づく敵を阻害しようとした。
 しかし、それでもすぐ眼前に風太郎の潜む部屋が見えて来る。
 いや、部屋は激戦で破壊され、風太郎の姿がそこにあらわになっていた。
「見つけたぞ」
 忍びの凶刃が風太郎に迫る。
「ちくしょう」
 洋孝は舌打ちすると、最後の手段にでた。
「奥義、挺身防御ってな……あんまりやりたくないから……封印していたっての! 零距離! アンボーンテクニック!」
 そして、洋孝は身を挺して風太郎を守る。

 一方、エリスは光条兵器を対戦車ライフルモードで起動、乱射していた。
「これであれば問題なく敵を殲滅できるはずです。これより殲滅戦を開始します。以上」
 そして、冷酷に建物を壊すことも覚悟の上で警護対象への護衛を行なっていく。
 忍び達はライフルの弾に当たって次々に倒されて行った。
 全てを倒してしまうと、エリスは額の汗を拭って言った。
「忍者相手は流石に疲れます……以上。……ところで、洋様は?」
「あっちで、みとの偽物と戦ってるよ」
 洋孝の言葉にみとが驚く。
「わらわの偽物ですって?」
「そうだよ。多分、鳶ノ段蔵が化けた奴だ」
 その言葉に、みとが廊下を駆け出した。
 エリスと洋孝は風太郎の警護のためにそこに残る。

 みとが、たどり着いた時、洋と偽みとの死闘は続いていた。
 みとは洋を巻き込むことを覚悟の上でブリザードを放った。
 偽みとはいきなり背後からブリザードを撃たれて一瞬の隙をみせる。
 それを見逃さずに、洋がラスターハンドガンを撃った。肩に命中。偽みとは肩から血を流しながらその場に倒れる。
 洋は、偽みとに近づくと、その顔にかぶった仮面を剥いだ。暗い目の男の顔が現れる。やはり段蔵だった。
 洋は段蔵の額にラスターハンドガンを向けて言った。
「任務のためならば、味方も殺す。それぐらいの冷酷さが将校には必要だ。それが軍人というものなのでな。降伏しろ。とだけ言っておく。忍びには捕虜になる気も資格も無かろう」

 風太郎の潜んでいた部屋が破壊されてしまったので、場所を移動する事になる。
 しかし、風太郎は目の前で繰り広げられた忍びとの戦いを見て、すっかりおびえていた。
「私は死ぬ。どうせ助からないのだ」
「兄上様」
 弱気になった兄を必死でしほりが慰める。
「気を強く御持ち下さい」
 しかし、風太郎の混乱はひどくなる一方だった。
「ああ……ああ。摩利支天が……摩利支天が……」
「摩利支天?」
 しほりは兄の口から飛び出した言葉に首を傾げた。