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リアクション
オリカを救え!
古くさい石造りの壁が無言の威圧感でこちらを圧迫してくるような錯覚を覚えながら、オリカを救出するために隠密行動を取っている楊 霞(よう・か)たちはまっすぐに廊下を歩いていた。
「唯斗様、トラップの方は大丈夫でしょうか?」
楊霞はトラップ探知を担当している紫月 唯斗(しづき・ゆいと)に声をかける。
「大丈夫ですよ、トラップを探しているのは俺だけじゃないんですから」
そう言って唯斗は自分と並んで慎重に歩きながらトラップを警戒しているコントラクターに視線を送った。
と、
「……皆さん、少し止まって下さい」
静かに、だが全員に届くだけの声量で唯斗は全体の足を止めると、屈んで石造りの壁の隙間をジッと見つめる。
「あそこの妙な隙間は、おそらくアロースリットですね。床も少し盛り上がっているところがありますし、十中八九トラップでしょう」
「解決策はあるんでしょうか?」
「そりゃ、もちろんあるだろうさ」
楊霞が唯斗に質問をすると、答えたのはマーツェカ・ヴェーツ(まーつぇか・う゛ぇーつ)に憑依されたテレジア・ユスティナ・ベルクホーフェン(てれじあゆすてぃな・べるくほーふぇん)だった。
「それは有り難い。俺はトラップを解除する技術はありませんから。……それで、どのような方法を取るおつもりなんですか?」
唯斗の問いにすぐに答えずテレジアは真っ直ぐに廊下の先を指差した。長い廊下の先は広い空間になっているのが見える。
「味方が罠に掛からないようにトラップを解除する装置は必ずあるはずだ。そして、侵入者に解除出来ないようにするにはこの道の先に解除装置を設けるしかない」
「なるほど……ですがトラップを解除するにはトラップを越えなければいけないようですが?」
「それなら心配するな」
そう言うとテレジアは地獄の天使を使って背中に影で出来た翼を使って宙に浮いて見せた。
「多分この手のトラップは床を踏むと発動するだろうから、楊霞と一緒に解除装置を探してくる」
「申し訳ありません……僕は空を飛べないんです」
「心配するなって」
テレジアはニイッと笑みを浮かべると楊霞の手を掴んでお姫様抱っこをする。
「なるほど、これなら安心ですね」
「だろ? それじゃあ行ってくるぜ」
そう言うとテレジアはサッと長い廊下を飛行して広間のような空間に出る。廊下を出口の近くには分かりやすいレバーが壁から飛びだしていた。
「なんだ、もっと分かりやすくなってると思ったから楊霞も連れてきたのに」
「本来なら常駐の兵士がいたでしょうから、このくらい分かりやすい方が良かったんでしょう」
楊霞は答えると、そっとレバーを下ろす。廊下の壁に開いていた妙な隙間は埋まるようにスライドした石壁に隠れ、うっすらと隆起していた床のいくつかが低くなった。
「これで大丈夫みたいですね」
楊霞は手招きをして他のコントラクターを呼ぶと、廊下の先を見つめ直す。
広い部屋には向かって北、西、東にそれぞれ扉が一つずつ設けられていた。
「ここで扉が三つになるんだね……楊霞さん、どうしようか?」
マッピングしながら歩いてきたレキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)は楊霞に声をかける。
「そうですね……まずは三つの扉を開けてから結論を出すのはどうでしょうか?」
「あ、それいいね! じゃあ開けてくる!」
レキはそう言うと、周囲を警戒しながら東の扉に近づきノブを捻った。
「……あれ? 鍵が掛かってるのかな開かないよ?」
「鍵が掛かってるならその扉は違うんじゃないアルか?」
チムチム・リー(ちむちむ・りー)はレキに声を掛けるが、レキは黙って首を横に振る。
「ううん、ボクはこっちだと思うんだ」
「なんでそう思うアル?」
「女の勘だよ」
レキは自信満々にそう言い切るとチムチムはため息をつく。
「仕方ないアルね。なら鍵を開けてあげるアル」
チムチムはレキを横にどかすと鍵穴に針金をいれてピッキングを始めた。
「どれくらいかかりそう?」
「う〜ん……まあ、出来る限り早くやるアル」
そう言いながらチムチムはもそもそと身体を動かしながら鍵穴に向かって、解錠を試みる。
と、
「ッッッグウッァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
まるで城全体に木霊するような獣の叫び声が響き、コントラクターたちは思わず身構えた。
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