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【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

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【ぷりかる】みんなの力で祖国を救え!

リアクション

「地球ではさ、皆と協力する前に。掛け声かけると縁起がいいらしいよー」
 幽霊城正面突破の段取りが落ち着いたタイミングで、桐生 円(きりゅう・まどか)が声を上げた。
「そうなのか?」
「うん。験を担ぐって、大事な事かもしれないよ」
「そうか。突入の合図にもなるし、ちょうど良いな」
 円の言葉にソフィア・アントニヌス(そふぃあ・あんとにぬす)はうんうんと頷く。
「では、幽霊城入り口前でな」
 ソフィアの言葉を合図に、一同は一斉に立ち上がると密かに幽霊城の入り口近くまで移動した。
「じゃあ、ボクが掛け声をかけるね」
 円陣を組んだ一同を見回すと円が小さな声で伝える。
 次の瞬間。
「みんなで協力してテミストクレスを倒すぞー!」
「おー!!!」
 大人数の声が宵闇の中に響き渡った。

 木を隠すなら森の中、という諺があるが、ペルム地方の森林はジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)が用意した移動トーチカをカムフラージュするには打ってつけと言えた。
 ジャジラッドはソフィアと従龍騎士ピウスの話を元に、サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)に幽霊城の模型を作らせ、偵察に出たコントラクターの情報に合わせて見張りなどを配置し、立体的な攻略図を作成していた。
「では、オリカがソフィアの実母というのは間違いないのですわね?」
「私は選定神アントニヌスの娘だ。選定神アントニヌスの妻であるオリカは、私の実の母に間違いはない」
 あまり時間のない中、サルガタナスはソフィアに、母オリカについてヒアリングをしていた。
 祖国の救難を告げに来た従龍騎士ピウスは、使命感からソフィアに伝えに来たと考えられるが、それすらも龍騎士テミストクレスの計算の内ではないか、
「幽閉されたオリカが実は黒幕で魔女でした」
「絵に描いたような仲の良い理想の家族を演じているだけで、中身はドス黒い陰険腹黒の女性」
 等々、サルガタナスはオリカの存在そのものに懐疑的だった。
 参謀は考えうる限りの事態を想定して事に臨まなければならない。
 疑い過ぎて損はないのだが、ソフィアから話を聞く限り、オリカが黒幕という線はまず間違いなく無い。
 明るく優しい、でも自分にも他人にも厳しい性格で、ソフィアのように真っ直ぐで、少なくとも策を弄するような人物ではないだろう。
「ここなら幽霊城の正門の戦いの様子が分かるようにしてある」
 ジャジラッドは攻略図を指さした。
「指揮官たるもの、何時如何なる時も冷静に戦況を見極め、些細な変化も見逃さず、常に適切な指示を出す必要がある。そのためにはここで指揮を執り、兵を駒として考える事が出来なければならん」
「私は……」
「勇ましく前線に立ち、味方を鼓舞しつつ戦うつもりなのだろ? それは青臭い二流の指揮官のやる事だ」
 ソフィアの言葉を待たず、ジャジラッドはそう言い捨てた。
「それに敵の狙いはおまえ自身でもある。昔、25000の軍に対し、2000の軍で合戦を挑み、勝った武将がいたが、奴が採った戦法は紀州で指揮官の首を取るというものだ。指揮官を失った軍ほど脆いものはない。今回とて例外ではない、それは分かっているだろう?」
「……青臭い、か。そうかもしれない。だが、私はまだ龍騎士にもなっていないんだ、青臭くても構わない。それにこの首は私の友や仲間が守ってくれる。故に私は友や仲間を守る! 指揮官はあなたに任せよう」
 顔を上げたソフィアの表情は清々しい程に微笑んでいた。
 ジャジラッドは肩を竦めると、ソフィアに配置の指示を出すのだった。

「何事だ!?」
「こっちか!?」
 慌てた警備兵たちが次々と城から飛び出してくる。
「よし、扉が開いたな。行くぞ!!」
 その隙に、ソフィアたちは開いた扉から城内へ向かい走り出す。
 気づいた兵士たちが、ソフィアたちを抑えようと動き始めた。
「始めようか」 
 そこに、清泉 北都(いずみ・ほくと)が放った弓が次々と飛び込み、兵士たちの動きを混乱させた。
 その様子を見たソーマ・アルジェント(そーま・あるじぇんと)が潜んでいた小型飛行艇でそのまま入口へと突っ込む。
 入口近くまで来ていた兵士たちが大騒ぎする中、ソーマは再び飛空艇で飛び上がった。
 従龍騎士たちが一斉にソーマに向けて攻撃を開始する。
 ギリギリのところで避けるソーマを、北都が弓矢で援護した。 
「もう少しかな……」
 北都は飛び上がったソーマの飛行艇をちらりと見上げそう呟くと、再び弓矢を構えた。
「北都!」
「みんな、下がって!」
 上空から従龍騎士たちの攻撃を躱しつつ魔力を集中していたソーマからの合図に、北都がソフィアたちに合図を出す。
 仲間たちが一度下がったのを確認した北都は素早くホワイトアウトを放った。
 強い光で一瞬視覚を奪われた兵士たちの上に、ソーマが特大の雷を落とす。
 周囲に凄まじい音が響き渡った。

「先に行け!」
 ソーマの声に仲間たちが一斉に入口へと飛び込む。
「そなたたちはどうする?」
「しばらくここで抑えとくよ。ソーマがいるから、陽動も多少の回復も問題ないからね」
「そうか……頼む!」
 振り返るソフィアに、北都が矢を放ちながら答える。
 その答えを聞くと、ソフィアも幽霊城へと突入した。
「っと……やっぱり何人かは中に入っちゃったか」
「これ以上は入れないようにするしかないな!」
 ソフィアたちを追って警備兵が何人か城内に戻るのを確認した二人は悔しそうに言葉を交わすと再び門前の敵兵たちに向かい合った。

 城内では、入口からの警備兵たちと、城内にいた警備兵たちとで、ソフィアたちは挟み打ちにされた状態になっていた。
「後ろは私とともに数人で対応する。皆はそのまま押し込んで欲しい!」
 ソフィアの言葉に頷くと、前線は兵士たちをなぎ倒し前進を始める。
「意外と後ろの数が多かったな」
「もう少し外で潰してきたほうが良かったかもしれませんね」
 ソフィアと共に、背後の兵士たちの応戦をしながら白峰 澄香(しらみね・すみか)が同意する。
 その手にはワイヤークローに変形したオクト・テンタクル(おくと・てんたくる)が握られていた。
「行くぞっ!!」
 その横をすり抜けるようにして敵軍に突っ込んだキールメス・テオライネ(きーるめす・ておらいね)が零距離射撃を連発する。
「すごい勢いだな」
「本来は狙撃向きなんですが……」
 そんなキールメスの様子に、ソフィアとオクトは思わず一瞬顔を見合わせた。
「今日ばかりは遠慮なしで行くぜ!!」
 敵兵の間を走り回りながらキールメスが声を上げる。
「私があまり戦闘に慣れていないので、これまであまり前線に出なかっただけなので……」
「そうか、頼もしいな」
 それぞれの武器で敵兵の攻撃を薙ぎ払いながら、ソフィアと澄香もキールメスを援護する。
「ちっ!」
「キールメス!」
 数の多い敵兵に完全に囲まれたキールメスを見た澄香は、すかさずオクトをかざすとキールメスの背後にいた兵士に攻撃を加える。
「よし!」
 その隙を逃さずキールメスは輪から飛び出すと、再び攻撃体勢に入った。
 澄香もオクトを振りかざし、慣れないながらもソフィアとキールメスを援護する。
「くそ、キリがないな!!」
 地道に攻撃を加えながらも、敵兵の数は多く、いつ片が付くとも分からない状況を見てキールメスがごちる。
「ソフィア、ここは私たちで抑えます。先に行ってください」
「しかし……」
「こっちは大丈夫だぜ! 澄香にも怪我させねぇように動くしな!!」
「キールメス……彼もああ言ってますし、大丈夫です。ね?」
「ありがとう……頼むぞ!」
「はい」
 その場を澄香たちに任せると、ソフィアは前線で戦う仲間たちの元へと走った。

「お、そっちどうだったんだ?」
「澄香たちに任せた。こちらはどうだ?」
「意外と雑魚が多くて地味な交戦が続いてるってとこだな」
 先へ進むためのカラクリを攻略する仲間たちを庇いながら、敵兵と交戦していたローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)は追いついたソフィアの姿を見つけると声をかけた。
「このままだと楊霞たちが動きにくいな……もっと派手にならないものだろうか?」
「ものだろうかって……おまえな……」
 真顔で尋ねるソフィアにローグは一瞬固まった。
「どうした?」
「いや……まぁ、やるしかないってことだよな。コアトル!」
「ああ」
 ローグの声にコアトル・スネークアヴァターラ(こあとる・すねーくあう゛ぁたーら)も同意すると、ソフィアとともに敵兵へと向き直る。
「テミストクレスは何処だ!」
 鋭いソフィアの声に、敵兵が一瞬たじろぐ。
「はあああああっ!!」
 その隙にローグが攻撃を再開した。
 ローグは仲間たちの動きを察知しながら、うまく護れるように攻撃を繰り出す。
「おいソフィア、こっちのが派手なんじゃないか?」
「たしかにな……コアトル、力を借りるぞ!」
「面白い。我を使いこなしてみるが良い」
 武器へと変形したコアトルを手にしたソフィアは、滑らかな動きで振り回した。
 突然動きの変わった攻撃に敵兵がざわつく。
 
 と、ゴンという鈍い音とともに壁が外れ、奥へと連なる道が現れた。
「お、やったか」
「そのようだな」
 ローグとソフィアは顔を見合わせると、同時に敵兵へと攻撃し、ひるんだ隙に先へ続く道へと駆け込んだ。 
「ソフィア殿」
「ブラダマンテ……」
 その先でソフィアを待っていたのはブラダマンテ・アモーネ・クレルモン(ぶらだまんて・あもーねくれるもん)だった。
「ソフィア殿。テミストクレスに思う事が無い筈はありませんわよね。それは理解しております。しかしながら、その上で敢えて言いますわ……平静でありますように、と。心静かならずして勝てる相手では、ないのでしょう?」
「……ああ……そう、だな……」
 静かに語られる言葉にソフィアは熱くなっていた心を一度落ち着かせようとする。
「くれぐれも、自らの御命と引き換えに刺し違えても……などとは考えられませぬ様に。未だソフィア殿はシャンバラで学び、見る事が沢山ありますわ。一緒に、還りましょう」
 ブラダマンテの顔を見つめたソフィアは、一つ、大きな深呼吸をした。
「ソフィア、もう我慢しなくていいからね」
「俺達が共に行く」
 先行してカラクリを解いていたルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が隣に並ぶとそう声をかける。
「ありがとう。大丈夫だ、行こう」