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第3章 カップル誕生!

「恵美さん、好きです!」
「え?」
 突然の言葉に、高島 恵美(たかしま・えみ)と、隣のミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)は硬直した。
 彼女たちの前で真剣な顔をして立っているのは葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)
 そう、それは紛れもない愛の告白だった。

「ミーナちゃんの恋がうまくいきますように。あと、私にも素敵な王子様が着てくれますように」
「先輩と、もっと仲良くなれますように」
「えへへ」
「ふふっ」
 二人は恋愛の願掛けのため、この神社に来ていた。
 手を合わせての純粋な祈願。
 流れるほのぼのとして空気。
 そんな彼女たちに唐突に声がかけられた。

「自分の気持ちを受け取ってくださいであります!」
「はぁ……」
 とすっ。
「はうっ」
 茫然としている恵美の体がふいに跳ね上がった。
「あれ、恵美ちん背中に何か刺さってるよ?」
 ミーナが指摘するまでもなく、彼女に刺さったのは矢。
 矢恵美となった彼女の目が、ふいにぎらぎらと怪しい輝きを帯びる。
「お……王子様」
「はっ!」
「王子様じゃないけど可愛いお嬢様も大歓迎ですわぁ!」
 恵美はアブノーマルになってしまった。
 両手を組み合わせ吹雪の前に進み出る、その目はハート。
「自分の気持ちを受け入れてくれると?」
「ええ。大歓迎ですわぁ」
「ならば……行くであります!」
 ぶうんっ!
 吹雪は突然、手に持っていたバットをぶん回した!
 目の前の恵美の頭にストライク!
「きゃああ、恵美ちん!」
「きゅう」
 頭部への激しい刺激により、恵美気絶。
「め、恵美ちんに何するのー!」
「うふふふふこのまま恵美さんをお持ち帰りであります!」
 吹雪は嬉しそうに意識を失った彼女を抱き締める。
 そう、言うまでもなく、彼女も既にアブノーマルだった。
「ふふふふふお持ち帰り恵美さんいっちょお持ち帰りーっ!」
 ヤンデレと化した吹雪は、恵美を軽々と抱えるとダッシュ。
「ああっ、め、恵美ちんを離せー!」
 慌てて追いかけるミーナ。
 しかし恋する暴走特急となった彼女を止められるものは、誰もいなかった。

   ◇◇◇

「望さん、自分と付き合ってください」
時枝 望(ときえ・みつる)、俺と付き合うのだ!」
「ううううううーん、困ったなあ」

 望の目の前には、二人の男性。
 一人は、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)
 もう一人は、ドクター・ハデス(どくたー・はです)
 二人の男性から突然の求愛を受け、望はどこか嬉しそうに困惑していた。

「はぅわああああ、困った!」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)も、猛烈に困っていた。
「好きです、好きです、大好きなんです!」
 美羽のパートナー、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が、突然愛を囁き始めたからだ。
 しかも、相手は。
「落ち着いて、落ち着いてってば!」
「離してください、美羽さん! 私はこの人が……ハデスさんが好きなんです!」
 そう、ことも有ろうにハデスだった。
「ああもう悪い事言わないからその人だけは止めようよっ!」
 何ひとつ幸せの目がない!
 あまりといえばあまりだが当然といえば当然の忠告に、ベアトリーチェの動きがふと止まる。
「わ、分かってくれた!?」
 ふと見ると、ベアトリーチェの視線はハデスとは別の所を向いていた。
 その視線の先には、抱き合う全裸の男達…… そう、鬼羅と変熊。
「待って!」
 慌てて前言撤回。
「ちょっと待ってあれはあれで駄目!」
「もちろんです! この愛は止められません!」
「あっ」
 美羽の手が緩んだ隙をついてベアトリーチェはハデスの方に走り出した。
「ああハデスさんハデスさん好きですあいらぶゆーです!」
 がばりと抱き着くと、頬をすりすり。
 ベアトの大きな胸が当たって、ぽよんぽよん。
「……まあそれは置いといて!」
「置いとかれました!」
 ごめんなさいとも言わず、ハデス無視。
 何故なら彼のダイス目は1……同性が好きなのだから!
「この胸の高鳴り……これぞ、まさしく愛! やはり相手は男、望しかいない!」
 ベアトリーチェを振りほどくと望を口説きにかかるハデス。
「ククク……お前を俺の好みに改造してやろう!」
「え……そ、そんなぁ」
 口説いてる……んですよね。
 そう言いながらじゃらじゃらと改造道具を取り出すハデス。
 ドリルとかドリルとかドリルとか。
 どうやら本気で改造するらしい。
「ああ、翡翠も負けちゃいられないな」
 そんなハデスの様子を見て、レイス・アデレイド(れいす・あでれいど)が動いた。
 多分、善意で。
「ほい、外すよー」
「あっ、レイス、それは……無くしたら、覚悟しておけよ?」
 レイスの手が翡翠の胸のペンダントに伸びる。
 そっと外すと、その途端翡翠の表情が変わる。
 大人しそうだった彼の顔が、一転サディスティックな色合いに。
 どうやらペンダントは彼の人格変換スイッチだったらしい。
 酷薄な笑みを浮かべたまま、望ににじり寄る翡翠。
「覚悟しておけよ」
「ひゃっ」
 望の頬を、指がつたう。
「後で、人気のない所へ行こう。たっぷりと楽しませてやるからな」
「え、ええと……」
 エロOK指定のない方なのでお手柔らかに。
「いや、時枝 望は俺に改造されるのだ!」
 望の右手を取り引っ張るハデス。
「望さんは、自分と楽しむんだ」
 左手を引っ張る翡翠。
「さあ、どっち!!」×2

「こ、困ったなぁ……」
 望の困惑は、既に物凄く真剣な悩みとなってしまっていた。