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【猫の日】猫の影踏み――消えたお菓子と契約者――

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【猫の日】猫の影踏み――消えたお菓子と契約者――

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『準備を済ませ、いざ屋敷へ』

●アピシニア:入口

「うーん、お祭りの雰囲気っていいわよね。あっ、あの衣装かわいい〜」
 アピシニアの入口から通りを進んだ所で、お祭り用の衣装に目を輝かせたルカルカ・ルー(るかるか・るー)が思わずそちらへ足を向けようとして、コード・イレブンナイン(こーど・いれぶんないん)に制される。
「ルカ、俺達の目的を忘れてはいないな?」
「もちろん。忘れてたわけじゃないわよ。
 『猫隠し事件』……ダリルが居なくても、ルカ達でやれるってとこを見せちゃおう」
 ルカルカの言葉にコードも頷き、そして二人は手始めに、町長の所へ向かう。

「研究者の名前はカルタス・ニャーゴ。研究内容は『猫の気持ちを理解する装置の開発』ってことみたいだけど……どう? 何か出てきた?」
 町長のゴランドから聞き出した情報を基に、コードが端末を操作して他の情報を得られないか探る。
「……名前はヒットしたが、研究内容は『新エネルギーの開発』とあるな。機晶石と同等の質の、エネルギーを生み出す材質を発見した、とあるが、その後のことはさっぱりだ」
 該当するページをルカルカも見る、確かにそのような事が書いてあった。
「うーん、実際にどっちをやっていたかは……多分こっちね」
 ルカルカが端末の画面を指して言う。
「……その根拠は?」
「特に無いわ。強いて言えば……女のカン?」
 ふふ、と微笑むルカルカに、コードがまたか、という顔をする。しかしこれが結構当たってしまうのだから、コードも特に何も言わなかった。
「気になるのは、じゃあ何で猫の気持ちを理解する装置の開発、なんて嘘を吐いたのか、という点ね。何でもいいはずだから、こう言ったってことは決して考えなしってわけじゃないと思うのよね」
「それは、実際に中に入ってみないと分からないな。
 新エネルギーの開発……中で危険なことが起きていなければいいが」
 得た情報をネットワークに流し、他の契約者も閲覧出来るようにして、二人は問題の屋敷へ向かっていった。


「豊美さんと魔穂香さんは屋敷で、現れた猫に触られて消えてしまったのですね?」
「ああ、そうだ。聞いた話では直接触れるだけでなく、影を踏まれても消えてしまうようだ」
「普通の猫が如何にしてその能力を得るに至ったかは、分からずじまいだ。
 去年の猫の日が関係してるという噂話があるが……真相は、屋敷に行ってみないと分からないだろうな」
 飛鳥 馬宿高天原 姫子から事件の経緯、飛鳥 豊美(あすかの・とよみ)馬口 魔穂香馬口 六兵衛が“消えた”という話を聞いた非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)がふむ、と考えを巡らせ、発言する。
「夜は普通にある、それに木や建物が消えたという報告はない。つまり猫は、消せるものに限りがある。……ボクとしては、新月の夜、明かりが無い時に屋敷へ向かう案を推したいけれど」
「近遠ちゃん、夜は猫の方があたしたちの事をよく見れると思いますわ。触られてもダメなんですから、影のあるなしだけでは選べませんわ」
 近遠の意見に、ユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)が指摘を入れる。夜の行動は契約者であっても、猫の方に分がある。
「となると、昼間ですわね。……猫は飛ぶ事が出来ないのですから、上空から屋敷に近付くのはいかがでしょう? アルティアの乗り物であれば、皆さんを乗せて行けます」
「だが、それだと影が地面に出来てしまうだろう。木や建物は無理かもしれないが、我々四人分ぐらいなら影を踏めば消せてしまうのではないか?」
 アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)が屋敷への接近方法を提案し、そこにイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が指摘を挟む。上空からならば猫は猫ゆえ、直接の接触はギリギリまで防げるが、影の問題がある。
「……ボクの闇術と、ユーリカの光術を使えば、影を地面に作らなくすることが出来ると思う。
 着陸する時の対処は……少し、眠ってもらう事になるのは仕方ないかな」
「その方法だと目立ってしまいますから、マタタビを持っていくのはどうかしら?
 対処する猫は少ない方がいいはずですわ」
「ええと、まとめますと……移動にはアルティアの乗り物を使用。
 近遠さんとユーリカさんの術で、地面に影を作らないようにする。
 予めマタタビを撒いて、猫の注意を逸らす。着陸する時やって来る猫は近遠さんが術で眠らせる。
 ……ですわね?」
「ふむ、方針は理解した。
 もし屋敷で何かあった際、マタタビで酔った猫や眠らされた猫も助けてやれるようにしないとな」

 四人で意見を出し合い、方針を決定した近遠一行は、早速準備に取り掛かる。