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リアクション
(はぁあ、胸のドキドキが止まらないよ……)
遠野 歌菜(とおの・かな)と月崎 羽純(つきざき・はすみ)、二人きりの貸切温泉。
夫婦なのに。
それなのに、こうやって一緒の温泉に入ることが、今更ながら恥ずかしくてたまらない……!
そんな歌菜の心の奥を見透かしたように、羽純は歌菜に切り出す。
「背中、流してやるよ」
「はうっ!」
(全く、期待を裏切らないな……)
歌菜の初々しい反応をひとつひとつ堪能しながら、お互いに背中を流しあう。
そして、互いに背中を向けたまま一緒に温泉へ。
とぷり。
「はぁ……」
「ふぅ……」
背中を預け合ったまま、温泉を堪能する歌菜と羽純。
「気持ちいい、ね……」
「ああ、気持ちいいな。ぬるぬるして」
「体が熱くなってきて……」
「くすぐったくなってきて……」
そこまで言って、二人ははっと気づく。
「……って、これは……」
「もしかして……」
「「ラフィルド!?」」
(はい?)
どこかからか、声が聞こえた。
「ラフィルド、駄目よ、こんなことしちゃ……あっ」
(でも、きもちいい?)
「いやたしかに気持ちいいが、そういうんじゃなくてな……」
(どういうの?)
「……はぁっ、ん……」
「……いや、いい」
歌菜の口から漏れるか細い声。
ラフィルドの刺激が、その声が、羽純の理性を削ぎ落としてゆく。
「あ……んっ、羽純、くん……」
「もうそれは、どうでもいい……」
羽純の手が、歌菜の両肩を掴む。
やや強引に、自分の方を向かせた。
歌菜の、紅潮した顔が見えた。
◇◇◇
「ほら翡翠、もっと早く早く!」
「フォルトナ、そんなに引っ張らなくても温泉は逃げませんよ」
「温泉は逃げなくても、時間は有限よ。早く行ってのんびりするんだから!」
フォルトゥーナ・アルタディス(ふぉる・あるたでぃす)に手を引かれたまま、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)は苦笑する。
同じく苦笑いしながら追いかけるのはレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)。
フォルトゥーナの顔にも二人と同じように笑顔が浮かんでいるが、その笑顔の裏にはほの黒い闇が隠されていた!
「翡翠ー、レイスー。早くこっちにいらっしゃいよー」
そして湯に浸かり、翡翠を呼ぶフォルトゥーナ。
(うふふふふ……ここで、思いっきり悪戯してやるんだから。楽しみ楽しみ)
悪い笑顔を隠そうともせず二人を呼ぶ。
しかしその笑顔は、翡翠の体を見てすうと消えた。
翡翠の体には、生々しい傷跡が残っていた。
「あら、これ何なの? ねえ翡翠、どうしたの? あたしのせい? ね、どうしてもっと早く言ってくれなかったの?」
そう言いながら、翡翠の体に指を這わせる。
特に、傷口には念入りに丁寧に。
「いや、あのちょっと恥ずかしいのですが……」
翡翠はといえば、あれこれ聞かれるよりもまず彼女の指から伝わる刺激の方が刺激的で。
「あ、そこは……」
特に傷口が一番弱く、触れられるともうたまらない。
最初は翡翠に「顔色悪くないか?」と心配していたレイスも、フォルトゥーナの接近と接触にだんだん穏やかではいられなくなってくる。
「おいちょっと、接近しすぎじゃ……」
と、声をかけた時にはもう遅かった。
次第に激しくなってきたフォルトゥーナの指が、翡翠の背中の傷をなぞる。
「あぁあっ、そこ、は……」」
「危ねえっ!」
とうとうあまりの刺激の強さに意識を手放し、温泉へと落ちる翡翠。
それを無事キャッチしたのはレイス。
レイスの腕の中に、翡翠が抱えられる。
「間一髪、だったなあ。溺れるトコだったよ」
「す……すまない」
「フォルトナ、翡翠は背中弱いんだから触るなよ」
「あら、弱いの?」
レイスの注意にもフォルトゥーナはどこ吹く風。
そんなことより、と、フォルトゥーナは次の矛先をレイスに向けた。
「それよりも……女の直感て、信じる?」
「は?」
「あなた最近、相手がいるでしょ? お付き合いしてる……」
「ぶはっ!?」
突然向けられた攻撃に、つい口に含んでいた酒を拭き出すレイス。
むせて咳き込むレイスを翡翠が介抱する。
そんなレイスに、ほらほら白状なさいと楽しそうにせっつくフォルトゥーナ。
彼女のお楽しみはまだまだ続きそうだ。
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