First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last
リアクション
EJ社・内部
鳴り響く警報ブザーの中。
フェリークス・モルスが、隠し扉のピッキングを続けていた。
「このブザーは俺たちを警戒している。ってことは……よほどのことらしいな」
そう呟いて、周囲を警戒するイーオン・アルカヌム。
金鴻烈。
扉の向こうに、CEOのいる可能性がますます高い。
ブザーが鳴っても、人がくる気配はなかった。イコンでの陽動が功を奏しているようだ。
「開いたわ」
フェリークスが立ち上がる。解錠は成功だ。
だがその時。遅れてきたEJ社の警備隊が到着した。
「俺が奴らを止めるよ」
踏み出したのは、十文字宵一だった。彼はパートナーのコアトーを刀に変え、迎撃の構えをとる。
「ちょうどいい。私は暴れ足りなかったんだよ」
宵一の背後から、冷ややかな女性の声が聞こえた。
リデル・リング・アートマンである。
「こんな施設は根こそぎ破壊してやる」
彼女の隣では、帝釈天インドラが【雷術】を放つ。
それは怒りの証明だった。文字通り、インドラの雷が、警備隊たちに落ちる。
ひるんだところに、『ロケットシューズ』で加速したリデルが敵陣に突っ込む。相手の視界内に【ミラージュ】を張りながら、近接戦で殴り倒していく。
「回復が必要なら、俺に任せてくれ!」
リデルたちに話しかけたのは、囮として施設内を走り回っていた、千返かつみだ。
彼もまた、この戦いに加勢する。
歴戦の果てで学び得た回復術。彼は、傷ついた契約者を癒していった。
かつみが、CEOを探す契約者に向けて言う。
「ここは俺たちでなんとかする。おまえたちは、その扉の向こうが知りたいんだろう」
「しかし……」
「大丈夫! 早く行くんだ!」
「……頼んだぞ」
イーオンが、重々しく応えた。
隠し扉の向こうへ、彼らは踏み込んでいく。
「金鴻烈への扉が、破られたようだな」
コンピュータ制御室で監視していた、佐野和輝が言う。
イーオンたちが侵入したのは、彼らの狙い通り、CEOのいる部屋だった。
最高責任者の居場所がバレた以上、もはや長居は無用である。
「撤退だ。アニス、予定通りに動くぞ」
「任せておくのだ〜♪」
アニスはすぐに、逃げ出す準備をする。
「防衛支援はサービスだから、最後まで付き合う気はないもん」
箒にリモンを乗せると、彼女は廊下に向け飛び立った。
「残念だけど。君たちを逃がすわけにはいかないねぇ」
そこへ駆けつけたのは、月谷 要(つきたに・かなめ)と、月谷 八斗(つきたに・やと)だ。
襲撃を受け、アニスはすかさず方向転換する。【ホワイトアウト】で雪の壁をつくりながら、廊下とは反対の窓から脱出した。
残された和輝が、月谷たちと向き合う。
「大丈夫よ。私がいるかぎり、貴方に傷ひとつ付かないわ」
魔鎧として身を守るスノー・クライムが囁く。和輝の身体を包みながら、彼女は微笑んだ。
――わかってる。だから君にこの身体を預けたんだ。
彼もまた、スノーだけに聞こえるよう囁くと、状況を確認する。
和輝は、外で見守るアニスと【精神感応】していた。自分が動けば、彼女が【雪使い】で壁を作るはずだ。
大丈夫。抜け出せる。
彼らはそう確信すると、出口の向こうに向けて【ポイントシフト】。
そこから先の戦いは、瞬間だ。
月谷要が『スプレッドカーネイジ』を発射。
アニスは雪で壁を作る。
スノーを弾丸がかすめる。
和輝の放った【放電実験】がコンピュータを焼く。
その間。0,1秒。
「……すばしっこい鼠だったねぇ」
獲物を取り逃がした要が、悔しさを押し殺す。
一方。
廊下を走り抜けた和輝は、追手がないことを確認してから、素性を隠すための『獅子の面』を外した。
自分たちがいた証拠は、何も残していない。
EJ社を後にして。彼はそっと呟いた。
「俺たちは、誰にも捕まえられないさ」
First Previous |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
17 |
Next Last