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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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蠱毒計画~プロジェクト・アローン~

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  第3章 EJ・周辺


 同じように、EJ社の外も騒がしさを増していた。
 怒涛のごとく押し寄せる兵器を、イコンたちが撃墜。爆音がニルヴァーナの空に轟く。
 空は、まるで地上の血を吸ったような赤。日が暮れ始めている。
 兵器の大群は、壊しても壊しても湧き出す。
 陽動班の疲弊も、限界が近づいてきた。

「こうなったら、僕たちのアガートラームで一点突破してやる!」
 榊 朝斗(さかき・あさと)が、敵陣を見据える。
「ええ。この子は決して弱くない。例え旧型機でも……この子だから出来る戦い方を教えてあげるわ!」
 サブパイロットのアイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)も呼応。
 アガートラームは、古い機体だ。型番はコームラント。第一世代のイコンである。
 しかし、装甲の厚さと底力は、他の機体にも引けをとらない。

「平和を守る為……。そんな能書きで、子供の命を好き勝手にする。僕のいちばん嫌いな考え方だ」
 朝斗は【ディメンションサイト】で状況把握。敵軍が、最も集中している箇所はどこだ?
――見つけた。
 戦闘機鳳蝶が飛び交う一帯。そこを突破すれば、味方のイコンはかなり動きやすくなる。
 被弾は覚悟の上。
「助け出せる可能性があるのなら、やってみせるわ。命は一度きりしかないのだから……」
 朝斗のフォローをしながら、アイビスは祈る。子供たちには未来を見てほしい――。
 幼い命が、明日を生きるために。アガートラームが夕日を駆ける。

 最大限まで加速し、敵の前衛に突っ込むアガートラーム。多連装ロケットシステムを搭載した大蝙蝠の一斉射撃をうけながら、【ドージェの鉄拳】。
「命を弄ぶ輩を……打ち砕いてやるさ!」
 もうもうと立ち込める、爆煙の向こうに。突破口は開かれた。
 大蝙蝠の一斉射撃。被弾。被弾。被弾。
 アガートラームは耐える。
 耐え続ける。
 そうだ。こいつが頑丈なのは装甲だけじゃない。
 朝斗が、愛でるようにレバーを引く。
――こいつには、鋼の精神力がある。
 戦火の中。臆すること無く、古豪のアガートラームが、リミッターを解除。
「打ち砕き! 撃ち貫く! 止められるなら止めてみせろッ!!」
 むき出しになった敵の中軸を、全てを解き放つ【大形ビームキャノン】が、灰燼に変えた。



「さて。こちらも派手に行くとするか」
 ゴスホークの操縦席。暴れまわる柊 真司(ひいらぎ・しんじ)が、残りのエネルギーを確認。
 まだいける。この虫たちを蹴散らすまで、休んでられるか。
 ゴスホークを発奮させ、孑孑竈馬といった小型の車両に【プラズマライフル内蔵型ブレード】を浴びせていく。
 まさに害虫駆除だ。
 爆風で裏返り、タイヤを空転させる車両を見下ろして、真司はニヤリと笑う。
 だが。いくら潰しても、敵は次から次へとなだれ込んでくる。
「いったん、戻りましょう」
 計器に目をやるヴェルリア・アルカトル(う゛ぇるりあ・あるかとる)が、帰還を訴える。エネルギーが残り少ない。真司はまだ暴れたりなかったが、いちど機動要塞ウィスタリアに戻ることにした。

「さぁて。俺の出番がきたみたいだ。修理修理修理ィ! ってね」
 柚木桂輔が、ウィスタリア内を駈けずり回った。
 彼の懸命な補給作業により、ゴスホークは、良質な黒曜石に似た潤沢を取り戻す。

 撃つ。斬る。叩き潰す。
 戦線に復帰した真司は、地上の敵を全力で破壊していく。
 ヴェルリアの指示する場所へ、ライフルを掃射。
 その射程から離れた敵には。
 EJ社が誇る虫たちの、どんなに長い触覚も及ばない、【レーザービット】をお見舞いする。


 臓物から流れ出る腐液のような、薄茶色のガソリンを垂れ流して。
 ついに、小ざかしい虫たちが殲滅する。
「やったな」
「やりましたね」
 パイロット席で、ふたりが呼応する。
 BMIを搭載するゴスホーク。それに乗る、真司とヴェルリア。
 敵を倒した爽快感もまた、一蓮托生だった。