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リアクション
★ ★ ★
「やっぱり、この洞窟の中が本命だったな。何かいいお宝がありそうだぞ」
「それはそうだけれど……」
ぎゅっと月崎 羽純(つきざき・はすみ)の手を強く握り締めながら、遠野 歌菜(とおの・かな)が答えました。
確かに、肝試しに使った洞窟は結構入り組んでいますし、宝を隠すには絶好の場所のように思えます。
とは言っても、幽霊騒ぎの方の発生源であるとも考えられているわけで、遠野歌菜としてはびくびくものなのでした。
もっとも、遠野歌菜が幽霊を怖がるのは月崎羽純としても計算済みです。怖がると同時に、自分を頼ってピッタリとくっついてきてくれます。ちょっと意地悪かもしれませんが、遠野歌菜の可愛い姿が目一杯見られるので、月崎羽純としては全部オッケーです。
洞窟の62番区画まで進むと、別の方向からリカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)とまたたび 明日風(またたび・あすか)(木曾 義仲(きそ・よしなか))がやってきました。
前回の肝試しのとき、奈落人である木曾義仲が気がついていたらまたたび明日風に憑依できていたのでした。
リカイン・フェルマータにすれば、たまたまだったんじゃないのと言うことですが、木曾義仲としては絶対に何か理由があるということで、宝探しに参加しつついろいろと調べようと言うことのようです。
「と言うわけで、お宝の方は、お先にどうぞ」
いきなりリカイン・フェルマータに言われた月崎羽純たちですが、はっきり言って何が「と言うわけ」なのかまったく分かりません。
「何か出る前に、早くお宝を掘り出そうよお」
遠野歌菜に急かされて、仕方なさそうに月崎羽純が周囲を探しました。
なんだか、いかにもとってつけたような岩が壁際にあります。触ってみると、やっぱりフェイクでした。中から宝箱が出て来ます。
「何が入っているのかな?」
興味津々で、またたび明日風(木曾義仲)とリカイン・フェルマータものぞき込みます。
宝箱を開けてみると、中から出て来たのは、『イコプラ・イツパパロトル』でした。茨ドームでの戦いで、オプシディアンが乗っていたイコンです。シバーヒーをベースとした漆黒のイコンで、先端がへこんでビーム砲になっている大剣と、リフレクターになっている魔導球のマントを装備しています。
なんだか、ちょっとほしそうな視線のリカイン・フェルマータでした。
「リア充な二人は爆発するに任せて、わしらは先を急ぐぞ。祠とやらはこの先にあったはずだ」
またたび明日風(木曾義仲)がリカイン・フェルマータを急かして、洞窟の奥の方へと続く道の一つを先に進んで行きました。
★ ★ ★
リカイン・フェルマータたちを先に行かせた後、お宝をどうするか話し合っていた月崎羽純と遠野歌菜でしたが、さすがにイコプラは男の子むきと言うことで、月崎羽純の物となりました。続いて、遠野歌菜のためのお宝を探して奥に進みます。
「さすがに、洞窟の中は探しにくいなあ」
しっかりと遠野歌菜にひっつかれたまま、月崎羽純が65番区画の怪しい岩などを調べていきました。
「どいてどいてどいてー。お宝は、しっかりかっきり、私がゲットするんだよー!!」
洞窟の中に声を響かせて、小鳥遊美羽が駆け込んできました。
もう、勢いだけでも宝箱を炙り出しそうな勢いです。
その瞬間、高笑いと共に洞窟の天井が崩れました。巨大な岩塊が、遠野歌菜や小鳥遊美羽の頭上に降り注いできます。
「危ない!」
とっさに、月崎羽純が遠野歌菜の身体の上に被さって守りました。
けれども、小鳥遊美羽は落ちてくる岩塊を無視して、無謀にもそのただ中へと突っ込んでいったのです。
「去年、あれだけみんなが暴れても平気だった洞窟が、簡単に崩れるものですかあ!」
確信を持って突っ込んでいった小鳥遊美羽の動きに、洞窟の中にいつの間にか充満していた霧がかき乱されました。次の瞬間、落石の幻がかき消えます。
「そこっ!」
その場に現れた幽霊めがけて、小鳥遊美羽が強烈な蹴りを見舞いました。あっけなく、幽霊が月崎羽純たちの頭の上を吹っ飛んでいき、洞窟の岩壁に激突します。
「本当に出たのか。逃げるぞ、歌菜」
面倒なお邪魔虫の幽霊はやる気満々の小鳥遊美羽に任せて、月崎羽純はそのまま遠野歌菜をお姫様だっこして洞窟の奥の方へと逃げ込みました。本来なら外にむかえばいいのですが、出口側で小鳥遊美羽と幽霊が戦い始めてしまったために、奥へ逃げるしかなかったのです。
「お宝の邪魔をする者は、誰であろうと潰すよ!」
すでに身体の輪郭が崩れかけている幽霊にむかって、小鳥遊美羽が百獣拳を放ちました。とても形を維持できなくなって、幽霊は消えてしまいました。
★ ★ ★
「それにしても、本当に、祠と義仲君が関係しているの?」
「そうとしか考えられないのだが。他に理由が思いつくか?」
リカイン・フェルマータの言葉に、木曾義仲が思いっきり聞き返しました。
実際には、木曾義仲が気がついたらまたたび明日風な憑依していたと言うだけで、ここに何か霊的な道のような物があると決めつけているだけなわけですが。
当時は、リカイン・フェルマータも夏合宿に参加していましたし、彼女を通して無意識に奈落人たる木曾義仲が出て来てしまっただけと考える方が自然のようにも思えます。偶然だったのは、あまり遠くないところにいたまたたび明日風がたまさか気絶中であったということだけです。おそらくは、過去に憑依したことがあることから、自然とそちらに引き寄せられていったのではないでしょうか。
あるいは、学生たちが祠をいじって封印を乱したため、その乱れがたまさかナラカとの繋がりを強めたのかもしれませんが、それこそ偶然の産物ですから、再現するのは不可能です。
「まあ、どうでもいいけれど。でも、一応は、お宝も探さないとねえ」
「しかたないな」
66番区画で足を止めて周囲を探すリカイン・フェルマータに言われて、またたび明日風(木曾義仲)も足許の岩などを調べてみました。
「この石、ちょっと怪しいわね」
「こいつ、動くぞ」
リカイン・フェルマータに続いて、またたび明日風(木曾義仲)が怪しげな石を見つけました。
リカイン・フェルマータが石をどけると、何やらスピーカーつきのデータレコーダが出て来ました。自然とスイッチが入ったようです。
一方のまたたび明日風(木曾義仲)の方は、宝箱が出て来ました。中を確かめると、『ビュリ・ピュリティアと遊べる券』が出て来ます。一応、おまけで掘ったので、またたび明日風の物とします。そのへん、変な気配りをする木曾義仲でした。木曾義仲の気になっている場所は別の所なのです。
と、そのとき、リカイン・フェルマータの見つけたデータレコーダから、カンテミール選帝神ティアラ・ティアラの凄まじい歌声が響いてきました。
「うきゃあっ!!」
狭い洞窟の中ですから、その破壊力は絶大です。思わずリカイン・フェルマータが咆哮しました。すぐさま一目散に気絶したまたたび明日風(木曾義仲)を引っかかえてその場から逃げだします。
幸いだったのは、咆哮が脅威の音源の音を相殺し、そのままデータレコーダを破壊してくれたことです。そうでなければ、そのまま洞窟内にいた者たちは発狂してしまっていたかもしれません。
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