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【真相に至る深層】後日談 過去からの解放

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【過去からの解放――物語の終わり】




「―――沈んでく」

 誰ともなく、呟きが漏れた。
 契約者が海上へと出るのを待っていたかのように、海中遺跡が沈下を開始したのだ。
 かつて空気の層だったものは、細かく分かれて泡となり、光を受けてきらきらと輝きながら、解けた魂たちと共に、水面へと浮かんでくる。先日見た蛍のような光は、自身から力を失わせていっただけだったが、今度は違う。確かにその魂が自らから離れて、海へ、大気へと還っていくのだ。
 内側から確かに何かが解けて、するりと抜け出していくような感覚に涙を流すものもいれば、ただ暖かな微笑でそれを見送る者もいたが、別れの寂しさや切なさは、等しく胸に揺れる。
「この思いも……いつか、忘れてしまうのかしら」
 蛇々が切なげに呟いた。
 きっともう、残された書物や歌声のデータを再生させても、その意味を理解すること出来ないだろう。彼らとの一万年という正しい時間の隔たりが、戻ってるのだ。物語は正しく古い伝承の中へと戻り、受け取った記憶もやがては色あせていくだろう。だが。
「……忘れたりなんか、しないさ」
 そんな中、クローディスが不意に呟いた。
 彼らの残した思いも、願いも、生きた証も。たとえ形に残らなくても、自分たちが繋がったその意味を失わないために、この先へ繋げていくのだと。その意思と言葉に、皆で頷いた、その時だ。
 沈んでいく海中都市を眺めていた契約者たちの耳に、潮騒に紛れるようにささやかな、もうその言葉の意味も判らなくなってしまった歌が響いた。
 だが、言葉がわからなくても、伝わる。愛情を、感謝を、喜びを――そして、ほんの少しの別れの悲しさを歌うそれに、最初に歌菜が、そしてかつみが、応じるように口を開いた。やがてそれは何人もの声を束ねると、幾重にも思いを重ねて歌として紡がれ、水底からの声が聞こえなくなってしまうまで続いた。



 そうして――……一万年と数百年も時を隔てて、蘇った物語は幕を閉じたのだった。
 その続きの物語を、それぞれの魂へと残して――……




【真相に至る深層】後日談 過去からの解放――完


担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

ご参加された皆さま、大変お疲れ様でした
気がつけば随分長い時間が過ぎておりましたこのシリーズも、ついに最後です
振り返ればあっという間だったようにも思いますが
こうしてきちんと最後まで描きとおせたことを純粋に嬉しく思います

過去の物語は、参加者様方のアクションで、ここまで運んできてもらいました
それだけに終わってしまうのがとても切なく感じますが
同じだけ切なく感じ、同時に記憶に残っていただけたら、これ以上のことはございません
気の利いたことが言えないのが心苦しいですが
本当にここまでのお付き合いを、ありがとうございました……!



※一部リアクションにつきましては、革酎マスターのご協力をいただきました
 大変ありがとうございました!
※尚、今回一部アクションにつきましては、ガイドに明記してありました都合上
 厳しい判定となった部分もございました
 最後に野暮な話となってしまい恐縮ですが、ご了承いただきますようお願いいたします