リアクション
○ ○ ○ 秋月 葵(あきづき・あおい)は、ダークレッドホールに視察に訪れていた。 神楽崎優子の呼びかけに応え、ダークレッドホールの抑え込みに動いてくれている者がいたが、現在はかなり数が少なくなっている。 中には白百合団員を含め、故意か不注意か、ダークレッドホールに飲み込まれてしまった者もいるそうだ。 優子はパラ実生に対処に当たってもらえないかと思っていたようだが、応じてくれたものはおらず、代わりに葵が様子を見に訪れていた。 葵は空飛ぶ魔法で、ダークレッドホールの対処に当たってくれている女性に近づく。 「大丈夫ですか? とても疲れてるみたい」 「うん、大丈夫……。状況も分かって来たわ」 その女性は、かつて白百合団に所属していた。 そして今は、エリュシオン帝国の第七龍騎士団に所属する、地球人の御堂晴海(みどう・はるみ)だった。 元々有名人ではないことと、変装をしているため気付いている者はいないはずだ。 「エリュシオンの秘術書が原因なのかな?」 「間違いないと思う」 晴海は側に、魔道書の男性を従えている。 その魔術書は、シャンバラ古王国時代の戦争で、シャンバラに大きな被害を与えたエリュシオンの風の秘術書『ヴェント』だ。 同種の魔道書のうち、行方不明となっている火の秘術書『ヒュー』の力が、このダークレッドホールに関係しているのではないかと、エリュシオンでは密かに話し合われていた。 晴海は調査し、可能であれば止めるために訪れている。 「その魔道書と話しあって、契約出来たらシャンバラが安定するかな……。どこにあるのか分からない?」 「少なくても近くには存在しないと思う。ヴェントが何も感じてないみたいだし」 晴海は深く考えながら言う。 「人為的に魔法の発動で発生させたものではなくて、過去……そう、過去の封印が解けかかっている。そんな風にも思える」 ヒュー本人や、ヒューの力を行使できる人物ならば、威力を減らすことが出来るかもしれないが。 「私達と集まった人達だけでは、広がらないよう抑えるだけで精一杯」 「もっと、沢山の人に来てもらえるよう、お願いしてみるね」 頑張ってという言葉と、ありがとうという言葉を残して。 葵は、報告の為に戻っていく。 |
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