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白百合革命(第2回/全4回)

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白百合革命(第2回/全4回)

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第8章 力を借りて

 2023年10月某日。
 シャンバラと地球の各地で、自爆テロが発生した。
 テロを起こしたのは、全てダークレッドホールから帰還した若者だった。
 シャンバラに住まう者は、保護者の元を抜け出して、銃を購入し乱射事件を起こしてから。
 地球に住まう者は、刃物や車で無差別殺人を起こしてから、自爆した。
「本人じゃないんです。パートナーは無事ですから!」
 百合園女学院に戻った白百合団員は、ティリアの指示の元、事件のあった各地へ連絡を入れていた。
 教師の祥子の提案により、直前に白百合団員は現場から離れていたため、被害に遭ったという報告は届いていない。
 また、ロザリンドやシリウスの提案により、調査と注意の呼びかけを行っていたため、多少の被害は抑えられたようだ。
 記憶喪失の百合園生や、ゼスタを帰還させなかったことで、百合園の生徒や、優子、ロイヤルガード宿舎の者達が被害を受けることもなかった。
 特に、ダークレッドホール付近については、ルーシェリアがイングリットと共に精力的に任務にあたっていたため、空の港町の便のほとんどが運休しており、町に残っていたものも少なかった。
 生存者の話によると、この港町に現れた行方不明者はアルコリア……の姿をした者であったらしい。
 小夜子と、リンの姿をした者は、保護されたツァンダの病院で自爆したとのことだ。
 ここに、彼女達を愛する百合園生が残っていたら――取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
「陰陽師のエリシア様、ご無事とのことです!」
 イングリットが声を上げた。
 空の港町で遠隔操作をしていたエリシアは、工房を破壊される被害に遭っていたが、自身の怪我は軽傷で済んだらしい。
 今は、レグルスに保護され、彼の家で治療を受けながら、遠隔操作を続けているとのことだ。
「ダークレッドホールの中のことも、少しずつわかってきましたわ。あのホールをくぐると、どこか別の空間に飛ばされるようです……そして、出口は多分、ありません」
 エリシアからダークレッドホールの中の状況を教えてもらい、イングリットがティリアと団員達に報告をする。
 ダークレッドホールは吸い込み口――入口でしかない。
 ツァンダの東の森に、吐き出し口――ホワイトホールがあるのではないかと思われていたが、それは違った。
 ツァンダの東の森で発見された人々は、本人ではない。恐らくは何ものかに……テロリストに送り込まれた生命体だ。
 別の空間に入った者に帰還の手段があるのなら、テロリストは偽物を送り込んだりはしないだろう。
「私達白百合団の最優先の任務は、百合園生の救出と保護。決してそれを忘れないで」
 ティリアは厳しい顔つきで白百合団員と協力者に言った。
 ……団長であり、親友の瑠奈のパートナーのサーラは、パートナーロストの症状で倒れたという。
 そして、ティリアのパートナーのモニカは、姿を消してしまっていた。
「私も、いつまでここで指揮をとっていられるのかわからないわ。――先輩達の力を借りましょう。
 他校の力も借りましょう。友達を助ける為に」
 ダークレッドホールの事件は、百合園の事件ではなく、シャンバラの事件だ。
 しかし、これまでの間に――パラ実生を除き、百合園生が一番被害に遭い、行方不明になっていた。
 また、行方不明者の一人の崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)はテロ組織加担容疑で拘留中との知らせも入っていた。
「話し合って、団結していきましょう」
 ティリアの指揮により、百合園女学院にて、ダークレッドホールの対策会議を開くことになった。

○     ○     ○


「食事、持ってきたよ」
 弁当を手に、レグルスが戻ってきた。
「ありがとう……。あ、材料買ってきてくれたら、自炊、するわよ。居候させてもらってるんだから、家事ぐらいさせて……」
 ヴァルキリーの女性の言葉に、レグルスはくすっと笑みを浮かべる。
「料理、あまり得意じゃないだろう? いいよ、気にしなくて。……それより、落ち着いた?」
「落ち着かないわ。いつ、私もどうなるか、わからないもの」
 女性は、自嘲的な笑みを浮かべた。
「ごめんね、迷惑かけて。あなたは凄いし、上手だなって思う」
「ずるいとか、狡いって言ってくれて構わないよ。それでも表向きは全力を尽くすし、どちらかに勝機があれば全面的に協力するしね」
 彼の言葉に、女性はこくんと首を縦に振った。
 そして、彼が用意してくれた弁当を、食べ始めたのだった。

 ――白百合革命第2回 完――