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リアクション
「……そうそう、神楽崎さん」
明子が優子に声をかける。
「帰ったらアレナさんに一言声掛けて上げてね。こういう鉄火場で一人だけ現場にいないって、結構あとからじわじわくるもんだから」
「ん、私はどうもそういうの忘れがちで。終わったらアレナに会いにいくよ。ありがとう」
「はい!」
優子の言葉に元気に返事をして、明子は状況の確認に移る。
この場は、携帯電話の電波がほとんど通じていない。
データは時々受信できる程度だ。
おそらく要塞内ではほぼ外部とのデータ通信は不可能。パートナー間であれば、通話は可能だが、やはりデータ通信は出来ない。
ただ、どちらにしろ、制圧前に、機器での通話、通信が出来るほど落ち着ける状況になることはないだろう。
「さて、私達は砲台辺りの攻撃時にはバリアが薄くなっていると思われる場所に、突撃するわけよね。燃えるわね!」
明子は拳を握りしめる。
「間違っても、ミサイルに拳叩き込むなよ! そこでミサイルを爆発させたら、そこでしゅーりょーなんだからな!」
明子のセーラー服……魔鎧と化しているレヴィ・アガリアレプト(れう゛ぃ・あがりあれぷと)が言うが、この姿だと何を言っても説得力がない。
「余計なことは考えなくていいの。集中しなさい、集中を」
「はいはい……っといってもな、この姿で出来ることといったら」
ぶつぶつ言いながらも、レヴィは周囲に注意を払う。周囲を見ることくらいしか出来ないのだ。
「しっかし、一体誰が要塞を動かしてんだ? 十二星華専用の要塞なんだろ。訳がわからないぜ」
国頭 武尊(くにがみ・たける)と一緒に、ジェットドラゴンで移動しながら猫井 又吉(ねこい・またきち)が呟いた。
「でもよ、あの要塞を分取れる可能性が有る訳だし、ちょっと頑張ってみるか」
そう武尊に話しかけるが、反応がない。
武尊は前方を飛んでいる神楽崎優子の背だけを見ていた。
「オレ、この要塞の制圧が終わったら、前に約束した写真を神楽崎から貰うんだ……」
突如武尊の口からでたその言葉に、又吉は何故か寒気を感じた。
「なんだか理解できねーことばかりだが、おさらいしておくか。アレナのうろ覚え程度の情報でも無いよりはマシだからな」
又吉はHCに入れた図面の確認をしておく。
自分達は突入口待機と言われているが、武尊がそこに留まるとは思えなかったし。
「教導団に留学して……またちょっと厳しい顔つきになったかな? 事態が事態だからでもあるけど、ね」
美羽も武尊とは別の理由で、優子を見ていた。
凛然たる態度で、指揮をしている優子に、美羽は安心感を覚える。
彼女と一緒なら、最大限の力を発揮し、この戦いにも必ず勝利できる。
そう確信することができた
「要塞がミサイル攻撃を始めた時。その砲台を狙って攻撃。そこからの侵入を目指す」
優子が作戦を繰り返す。
教導団の援軍は空京側から、進行を阻むための攻撃を定期的に繰り返している。
それとは別に、集まった契約者達が操るイコンが、要塞の近くを飛び回り、陽動、探り目的で攻撃を行っていた。
「生前は大物喰らいが取り柄だったけど、流石にここまでの大物は相手をしたことがないね」
明子のパートナー、九條 静佳(くじょう・しずか)がそう呟いた。
彼女が操っているジェットドラゴン、そして明子の乗る飛空艇には迷彩塗装が施されている。
『突入班のメンバー、皆攻撃態勢を整えてるよ』
静佳は後方に位置して、突入班、要塞に攻撃を加えている契約者達。支援者の動きを観察し、テレパシーで明子に伝えていく。
「了解。こっちも準備完了!」
明子はレヴィのチャージブレイクで力を溜めておく。
「うにゃー。皆落ちないでくさいよー。落ちたら、魔法で掬い上げますけど、攻撃の恰好の的になってしまうかもしれませんよー!」
静佳の操るジェットドラゴンの後ろに乗る鬼一法眼著 六韜(きいちほうげんちょ・りくとう)が、皆に声をかける。
要塞からは断続的に無差別に攻撃が繰り出されていた。
「うお……攻撃がすっげぇな……」
ラルクは、ローラーブレードのような形状のプロミネンストリックで飛びながら、攻撃を回避する。
「うぉおお!」
ただ、回避しているだけでは、背後にいる仲間に当たってしまう可能性があるため、砲弾やミサイルが発射された時には、龍の波動をぶっつけて、別の方向へ吹き飛ばす。
「コイツが何の目的で起動したのか分からないけど……もしかしたら、このアルカンシェルは後々俺達が月へ行く為の貴重な移動手段になるかもしれない」
垂は攻撃を避けながらつぶやく。
「可能なら起動可能な状態で動力炉を抑え、今後の為に使える状態で保護したい物だな」
それは非常に厳しいことは解ってはいたが。
「要塞っていうから何か機械的な敵がくるかもしれねぇな。皆も警戒しておけよ」
ラルクは攻撃を避けながら注意を促す。
それぞれ、攻撃を躱しながら、突入班は付かず離れず、様子を見……。
砲台の動きを確認した。
砲身が上がり、ミサイルが1発発射される。
「突入作戦、開始する」
優子が輝く信号弾を撃ち、開始を知らせる。
瞬時に、突入班は要塞に向かい発進。
「援軍からの攻撃、来る。その後、砲台付近に一斉攻撃」
月夜は、小型飛空艇ヴォルケーノを操り、行動予測の能力で、要塞の攻撃を避けながら接近していく。
その動きに連携して、天音のイコンから放たれたちくわサーベルが砲台に深く突き刺さり、さらに、変熊の操るイコンが、砲台の傍に突き刺さった。
バチンとバリア部分が、ショートしたかのような光と音を放つ。
「花音特戦隊、琳鳳明行くよ!」
鳳明はあえて、花音特戦隊を名乗る。
今はニルヴァーナ探索隊の一員でしかないことは解っているけれど。
花音特戦隊としての自分の任務はまだ終わっていないと思っているから。
この戦いが終わるまで、鳳明は花音特戦隊の一員であろうと決めていた。
「カメラがどこかは分からないけど、この辺り一帯に!」
鳳明は煙幕ファンデーションを使い、煙幕を張り突入班の姿を隠した。
「そんじゃ……行くぜ!」
ラルクが空を蹴って、飛ぶ。
「ミサイル発射します」
同時に、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)は2箇所に装備した六連ミサイルポッドを発射。
弾幕援護、陽動射撃で味方を隠し、要塞の攻撃を逸らさせる。
「マスターの攻撃態勢が整うまで、守り通してみせます」
それから歴戦の防御術の能力を駆使し、マスターである牙竜の盾となる。
『健闘を祈る。それから一つ、教えておこう』
精神感応で、宮殿の会議室にいる武神 雅(たけがみ・みやび)から、牙竜に連絡が届く。
『お前の大事な女だが、女王を護衛し避難予定だ』
「了解。カッコ悪い報告はできないな。こちらからも随時、状況は伝える。……そっちのことはよろしく頼む」
牙竜はそう答えると、破壊のプリズムに光を通していく。
「破壊のプリズムよ太陽の光を集め通し……その光の力を俺に与えてくれ!」
更にチャージブレイクで力を溜める。
「いってらっしゃい。私達もすぐに行くからね!」
「よろしくお願いします」
メリッサとシャロンは円達にルシンダを預けて、離脱する。要塞の目を自分達の方に引き付ける為にも。
「一斉攻撃よね? 合図をお願い」
美羽は優子に合図を求める。
「行くぞ」
優子は声ではなく、空砲を空に撃って、皆に攻撃開始を知らせる。
「穴を開けるぞ! はっ!」
垂はジェットドラゴンで接近しながら真空波を放つ。
「事態は一刻を争う。ここで焼き切れても構わぬ!」
ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が、機晶姫用レールガンを激しく撃ち放っていく。
方向は、イコンの攻撃と同じように側面から。
僅かであっても、進路をずらす為に。
「空京は我等にとって大切な街、ミサイルなど決して撃ち込ませはせぬ!」
身体への負担も考えず、ジュレールはレールガンを撃ち続ける。
「下方からビーム攻撃来るよ、回避っ。砲弾の攻撃はボクに任せて!」
カレンは皆に周囲の状況を伝え、自らは砲弾に攻撃を放ってこちらに近づけさせない。
「古代のガラクタが、見せてやるよ俺達の力を!」
刀真は一旦上空へと飛び、上空から落下するように要塞に突撃する。
行動予測の能力で、要塞の攻撃を読み、攻撃を躱して乗り物の勢い、落下の勢い、自身の体重、金剛力も乗せた力を一点に集中――。。
「頼りにしてるからね、優子隊長!」
美羽は、1度の射撃で4発の銃弾を放つ秘技を用い、ミサイル発射口にロケットランチャーを撃ち込む。
「こちらも、行きます」
パートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は、空飛ぶ箒ファルケでアルカンシェルの上空に飛んでいた。
「ミサイル発射口にだけ、当たってください!」
そして、列車型の強化光条兵器ラスタートレインをミサイル発射口に発射。
「行くよ!」
美羽をジェットドラゴンの背に乗せた、コハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)は、ファイアブレスを発射。
「早く、こっちに」
攻撃後に、ベアトリーチェに呼びかける。
「合流します!」
ベアトリーチェは即座に急降下。
「いくぜぇっ! うおりゃーっ」
ラルクは接近しながら、龍の波動を連続で打ち込む。
「一の太刀を疑わず……」
続いて、暗黒属性の虎徹を構え、バーストダッシュで飛び、機動性を上げた牙竜が要塞に突進していく。
「全身全霊の一撃で切り裂く!」
歴戦の必殺術の能力を用い、正義の鉄槌を要塞にその身体ごと、全ての力を籠めて繰り出す。
闇とバリアの光が渦巻く。
「マスター、突入援護します」
一撃を決めた牙竜をリュウライザーが回収。体勢を整える。
「うらぁあああああああ!!! ぶち破れろや!!!」
ラルクが拳をバリアに叩きつける。
バチンと音が響き、弾き返されるも、何発も連打していく。
「GO AHEAD!」
次の瞬間、刀真が百戦錬磨の経験を以て、全て大剣の剣先一点に込め鋭くバリアを突く。
ばちっと光がはじけ、刀真の剣はバリアに突き刺さり、その下の要塞の壁をぶち破る。
「……っ」
体当たり。無理やりともいえる強引さで、刀真は要塞の中へと突入を果たした。
「GO……なに言ってるのこの人、中二?」
優子と共に近づいた円はいかんともしがたい顔で、刀真のきりりとした顔で発せられた言葉に、そんな感想を漏らす。
「『ごーあへーっど!』おー!」
だけれど、円のパートナーのミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)は、気に入ったようで、同じ言葉を発しながら、梟雄剣ヴァルザドーンで、要塞の攻撃に対抗している。
「爆発とかに巻き込まれたらやーばーいー? 早く入っちゃうー?」
砲身にはバリアは張られておらず、砲台付近のバリアも薄かった。
「壊れろ! 壊れろ! 壊れやがれ!!」
ラルクが拳を、足を、バリアと砲台に叩き込んでいく。
ラルク、そして皆の攻撃は砲台と周囲に命中し、一帯を破壊して黒い穴を開けた。
「とりあえず、入ることが最初の仕事よね! はあっ!」
明子が梟雄剣ヴァルザドーンを叩き付け、空間を広げて突入。
突き刺さっていた変熊のイコンも、その衝撃で要塞の中に落下する。
「怪我は後で治すだけ、ですよね? 行きます」
「ああ」
リュウライザーは機晶姫用フライトユニット、加速ブースターで急加速、牙竜と共に要塞の中へと突入。
「よし、行くぜ!」
傷ついた手足を気にすることなく、ラルクも要塞の中に飛び込んだ。
「中で敵が待ち構えてる可能性もあるから、皆気を付けて!」
警戒しすぎても損はないはず。
そう思い、カレンは何時でも魔法を放てるよう準備しながら、接近していく。
「我等も中に入るぞ」
攻撃を終えたジュレールがカレンと合流し、彼女の背後に回る。
「これより突入を開始します」
セラフィーナは援軍に連絡を送ると、飛空艇を加速。
先に優子、ルシンダ、円達が要塞の中へ侵入。その後に鳳明、セラフィーナが続く。
「穴を広げるぞ! はっ!」
垂はジェットドラゴンで接近し、周囲のバリアに真空波を放つ。
「早く、止めるんだっ!」
「急ぐぞ、時間がない」
その後にカレン、ジュレールと続き。
美羽とコハク、合流したベアトリーチェも飛び込み。
「主、焦りは禁物です。集中を!」
「止めてみせるッ!」
アウレウスとグラキエスは武器を振るい、突入口を広げながら。
「行きますぅ〜! みんな、迂闊な行動はダメですよぉ〜」
明日香は皆に呼びかけながら、躊躇なく突入していく。
「攻撃来ます。加速して回避。そのまま突入します」
「了解、一気に行こう」
「突撃にゃう」
「油断はするな」
エメは超感覚で仲間の動きを捉え、パートナーに禁猟区をかけて状況を確認し、要塞に向かって急加速。
リュミエール、アレクス、ジュリオと共に暗い穴の中へと入っていく。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢我慢だねっ!」
ジェットドラゴンの後ろに乗るライゼはぎゅっと垂の背に抱き着いて、歯を食いしばる。
軽い衝撃を受けながら、2人も要塞の中へと進んでいく。
――直後に、鳳明が信号弾を空へと撃った。
突入成功を表す、青色の弾だった。
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