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リアクション
第3章 要塞突入開始
機晶都市ヒラニプラの西にある草原に、教導団率いるイコン部隊が配備された。
要塞を追っている探索隊と連絡をとり、距離をとらせた後で、一斉攻撃が開始される。
その攻撃の殆どは要塞を覆っている薄い青色のバリアーに阻まれてしまったが、要塞の進行に明らかに影響が出る。
「すぐにこの場所から離れてください! ヒラニプラの方に向かってください!!」
空飛ぶ箒スパロウに乗って、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)は草原近くの民家を回っていた。
「未確認飛行物体が迫ってるんだ! 爆発音聞こえただろ?」
パートナーの雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)は、小型飛空艇ヘリファルテに乗って簡単な説明と避難呼びかけをしていた。
それから。
「荷造りをしている時間はありません。早く避難お願いします」
教導団に所属しているミクル・フレイバディ(みくる・ふれいばでぃ)が、バイクを走らせて家々を回っていた。
教導団員が運転するトラックも数台近くに止められており、団員たちが、人が住んでいるかもわからない古い家々を回っていた。
人々の反応は様々だった。
着の身着のまま飛び出してくる人もいれば、家がなくなったらどうせ生きてはいられないなどと言い、家の中に留まる人。
呼びかけても反応のない家――。
「お願いです。逃げてください。もうすぐ教導団の攻撃も始まります。流れ弾がこちらに降ってくる可能性もあります」
「空京方面には行くなよ。どうもそっちの方に向かってるみたいなんだ!」
ソア、ベアの必死の呼びかけに、反応のなかった民家からもぱらぱら人々が顔を出しだした。
幸い、この付近には民家はほとんどない。
「急いでください。ヒラニプラで受け入れ準備をしています。そちらにはイコンも配備されていますので、皆さんをきちんとお守りできます!」
パンパパパパ……
遠くの方からミサイルを発射したと思われる音が響く。
「攻撃を開始したようです。あ……」
そして、南の空に目を向けたソアは、大きな浮遊要塞を目にした。
「あれが、アルカンシェルか……っ」
ベアはちらりと見ただけで、すぐに遅れている家族の元に急いだ。
次の瞬間、爆発音が響く。
ミサイルが要塞に直撃した音だ。
シャンバラのイコンからの攻撃が終わった直後に、今度は要塞の方が攻撃を始めた。
「待ってください」
ソアは声を上げながら、逃げる家族の傍に近づいて盾となる。
「ご主人!」
ベアはさらにそのソアの盾に。
「僕の大盾の後ろに隠れてください!」
ミクルはバイクに括り付けていた盾を手に、皆の元に駆け寄った。
要塞から放たれた光の矢が、この辺りにも降り注ぐ。
ドーン
光の矢は流星のように、大地に大きな穴を開けていく。
家族は身を寄せて抱きしめ合い、ソアとベア、そしてミクルは懸命に皆を守ろうとする。
幸い、攻撃は直撃することはなかった。
「反撃に無差別攻撃をしてきました。次の攻撃を遅らせることはできませんか」
ミクルは無線で仲間に連絡をするが、返ってきた答えは不可。
「逃げましょう、早く」
「重量オーバーだけど、なんとかなるさ!」
ソアとベアは家族を2人ずつ、無理やり乗り物に乗せて、ヒラニプラの方へと運んでいく。
「ミクル、あっちの岩陰に隠れてる人のこと、頼むな!」
「はいっ!」
ミクルは岩陰で腰を抜かしている老人の元に走り寄って、バイクの背に乗せた。
次々にミサイルが発射され、弾幕が要塞を包み込んでいく。
「要塞の速度が弱まったようです。引き離してしまいましょう」
もう少し南側で避難誘導と要塞監視を行っている教導団員からソアを含む仲間達に連絡が入っていた。
「鉄道の状況はどうでしょうか?」
列車が巻き込まれることを心配し、ソアは教導団本部に連絡をとる。
列車は現在運行中とのことだった。空京からヒラニプラに避難してくる人もいるとのことだ。
「ミサイルの射程内に入らないうちに、運行を停止した方がいいと思います。……この辺りなら大丈夫でしょう。ヒラニプラに向かって走ってください!」
意見を出した後、ソアは家族を降ろして次の民家の元へと戻っていく。
「まだ残っている人がいたら、出てきてください。急いで避難してください!」
「けど、単独で移動するなよ! 教導団の乗り物に乗せてもらうんだ!」
ソアとベアの必死の呼びかけは続く……。
そしてミサイル攻撃と、光の雨も続いていた。
援軍の攻撃が始まったことにより、浮遊要塞アルカンシェルの進行速度は小型飛空艇の速度同程度まで低下していた。
味方の攻撃に巻き込まれないよう、注意を払いながら神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)率いる、探索隊と協力者達は要塞を追っていた。
「優子さ……」
ヴァイシャリーからレッサーワイバーンに乗って駆けつけた崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)は、優子の隣に軍服姿の男の姿を見た。
優子の乗る飛空艇に乗り込んで、密に話をしている。
「まさか男を抱え込んで……」
そんな不安に駆られながら近づき、振り向いた男を見て亜璃珠は苦笑。
「ああ、なんだ刀真か。御神楽環菜に振られたから鞍替えかしら?」
優子の傍らで相談をしていた男――樹月 刀真(きづき・とうま)は不敵ともいえる目で、答える。
「なんだとはご挨拶だな……別に御神楽さんを引き合いに出さなくても亜璃珠ちゃんの大切な優子ちゃんはとりませんよ?」
からかい口調だった。
「ふふ、あなたには色々聞きたいこともあるけれど、今はそれどころじゃないわね」
亜璃珠も軽く笑みを見せた後、優子に真剣な目を向ける。
「突入、考えてるのよね? サポートさせてもらうわ」
「助かる。どのタイミングで出来るかは、軍側の成果次第だな」
優子は厳しい目を要塞に向けている。
「内部から止めるのが目的だよね? それともう一つ、平行して要塞のコントロールルームに行き、なんとか進路を変更することを目指してみる必要がありませんか?」
近づいてそう提案するのは桐生 円(きりゅう・まどか)。
「十二星華の元住処のようですし、アレナくんが操作方法を知ってるのでは?」
もしくは操作方法をしっている者に心当たりがあるだろう。
最悪の場合は、動力炉の破壊も考慮すべきだとは思うけれど、要塞の規模から考えると落下時に相当な被害が出る。
「回避できるのなら、回避すべきじゃないかと、ボクは考えてるよ」
「目指せる状況であるのなら、それが一番だな」
「ところで優子さんの電話、調子悪いの? アレナくんとテレパシーでなら会話できると思うけど」
円がそう言うと、優子は必要に応じて自分の代わりにアレナと連絡を取ってほしいと円や周りにいるアレナの知り合い達に指示を出す。
「携帯電話は乱気流に入った時に、落としてしまったんだ。それから調子が悪くてな」
言って優子は携帯電話を取り出して電源を入れてみるが、電源は入らなかった。
それ以来、彼女は直接会話が必要な時にはゼスタや仲間の携帯電話を借りて、アレナや多方面と連絡をとっていた。
「落された優子隊長の携帯電話、拾ってくれてましたよね?」
円のパートナーのオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)は、円達の様子を見つつ、優子の隣に乗っていたルシンダ・マクニースに、問いかける。
「ええ、床に激しくたたきつけられたので、壊れてしまったようです」
「そうですか。でも、必要なら私の携帯電話をお貸ししてもいいですしねぇ。ところで、ルシンダさんは戦闘を得意としてないと聞いていますが、やはり要塞までは護衛したほうがよろしいでしょうか?」
「……はい、助けていただけますと助かります」
オリヴィアの言葉に、ルシンダは素直にそう答えた。
「それなら、こっちに乗らない? 刀真からあなたのこと頼まれたし」
刀真のパートナーの漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が、自分の小型飛空艇ヴォルケーノの背を指差す。
刀真は禁猟区をかけた『銀の飾り鎖』を、ルシンダに渡した上で、月夜に護衛を頼んでいた。
「そうねー。私のヴォルケーノでもいいですよ? 腕は確かよ、ロザリンドさん達も護衛に入ってくれると思うわ」
オリヴィアはもう言う。
「助かります。作戦次第ではありますが、お世話になります」
ルシンダは2人に頭を下げた。
「一旦、地上に降りて速やかに作戦を立てる。班編成後、援軍と連携し突入するぞ」
優子が声を上げ、通信士やパートナーのゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)が、通信機、拡声器を用いて仲間達に伝えていく。
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