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空に架けた橋

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空に架けた橋

リアクション

「龍騎士か、相手にとって不足はない……!」
「まてまてまてまてー!」
 ドージェ信者のパラ実を名乗る者達に、神崎 荒神(かんざき・こうじん)が突っ込んでいく。
「勝負なら、俺が相手になるぜ! 決闘でも、チキンレースでも、野球拳だろうが、麻雀だろうが、何でも相手になってやる! 俺に勝ったら龍騎士でも何にでも挑めばいいさ」
 言って、荒神は楽しそうに、じゃれつくように不良達に飛び掛かる。
「よっしゃ、地球の遊びに倣って、脱衣マージャンといこうぜ。脱がせー。晒せ―」
 不良達も荒神にとびかかっていき、服に手をかける。
「いやまて、多勢に無勢すぎる〜。ハンディをくれ〜」
 などと言いながらも、不良の手を躱して、荒神は不良の持つ鉄パイプを弾き落したり、上衣や帽子をひっぱって落していく。
「だがお前等、これは麻雀じゃなねぇぞ? 麻雀に興味があるんなら、今度教えてやる〜。うおおっ」
 パラ実生の突進を受けて、荒神は転倒。
 組み敷いた彼のジャケットにパラ実生が手をかける。
 即座に、荒神は振りほどいて脱出。しかし、マントをパラ実生に奪われてしまった。
「危ない、お前等結構やるじゃねぇか。油断できないぜ。そうだ、チームを組まないか! 探索とかやりたいやつにやらせておけばいいし、打ち上げまでここでゲームしてようぜ!」
「そりゃいい考えだ。だが、お前を倒して、剥いだ荷物売りつけりゃ、更に儲かるよな!?」
「倒せ倒せ、やっちまえー!」
「うわっ!」
 荒神にパラ実生が押し寄せる。
「逃がすな、あいつを追え」
「暇な奴らは加勢しろ〜!」
「うおっ、どんどん人数が増えていくような……!」
 服や荷物を死守しながら、荒神は逃げまどい――賑やかな追いかけっことなっていく。

「……なんだか、色々とおかしなことになっていないか」
 優子が眉を顰めながらつぶやいた。
 優子とゼスタがただならぬ関係だとか、ロイヤルガードのなんとかが額に入れられて飾られてるとか。
 とんでもない会話が聞こえた気がする。
 そして、何故か走り回ってる者もいる……。
「いや、全然普通だし」
 隣で、ゼスタは普段通りへらへら笑みを浮かべていた。
「格納庫の方も、随分落ち着いてきたようです。パートナーと代わり、自分も地下へと向かいます」
 後方の車で、通信を担当していた白竜が優子に、状況の報告をする。
 羅儀からテレパシーで届いた情報によると、格納庫と、破壊された壁の向こうにいた機晶姫、機晶ロボットは全て取り押さえたらしい。
 現地人のパラ実生も契約者のパラ実生や若葉分校生、恐竜騎士団員の話を聞き入れ、とりあえず襲っては来なくなったそうだ。
「表情が硬い! 軍人にしかみえないぞ。リラックスリラックス」
「いえ、緊張は全くしていません。素です……やはり、目つきや顔に現れてしまいますね」
 ゼスタにそう答えて、白竜はパラ実生を刺激しないよう、ターバンで顔をぐるぐる巻きにしてから、格納庫に向かっていった。
「これは普通の机ですね。ただ、中に入っている資料は何かの役に立つかもしれませんので、買い取らせてください」
「こちらは機晶姫の部品のようですね。こちらで買い取ることも出来ますが、お持ち帰りいただいても構いません」
 灯と、マリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)が、パラ実生が持ってきたものを、鑑定や機晶技術、博識の知識で調べていく。
 ただ、発見された書物の多くは古代の文字で書かれており、読めないものが多い。
 そのため、アルカンシェルの資料と思われるものは、全て買い取ることに。
「資料なんかは、中身が分からなきゃ、重要性はわかんねーよな。どういう物が高く売れるんだ?」
「例えばそうですね」
 マリカは現地人パラ実生の質問に少し迷いながらも、事前に伝えておけば意欲を与えることも出来るかもしれないと、こう答えておく。
「物にもよりますが、設計図があれば非常に重宝するでしょうし、その分値も張れるかもしれませんね」
「ふーん。図面とかを探せばいいんだな。よし、行くぞ!」
 鑑定を終えた少年は仲間をひきつれて、格納庫の方へ向かっていく。
「資料はこっち、部品はこっちに持っていてね」
 宝の預かりと、報酬の支払いの窓口は、亜璃珠が担当している。
「亜璃珠、無理はするなよ」
 時々、優子が案じて声をかけてくる。
「何かありましたら、すぐに声をかけてください」
 メイドのマリカも、殺気看破で周囲に警戒を払い、亜璃珠の体調のことも常に気にしていた。
「ありがとう」
 亜璃珠は2人に礼を言った。
 彼女は先の戦いで、瀕死の重傷を負った。
 まだ、本調子には程遠い状態であり、それに優子も気づいているようだった。
「自分の体の事は分かってるんだけど、皆がんばってるし、私もじっとしていられなかったわ」
 亜璃珠は、資料の仕訳をしながら、そう答える。
 あと、優子に心配されたくて来てしまったというところもあるのかもしれない。
「大丈夫、無理はしない。……けど、その分優子さんが守ってね?」
 亜璃珠のそんな言葉に、優子は「何かあったら、ちゃんと連絡しろよ」と軍人ではなく、友を案じる女性の目で言った。

「わわ! こっちのものすごくお役たちで超貴重なお宝がありますの」
 イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)は、開いているいる部屋に入り込んで大声を上げた。
「高い性能と美しさをフフフン…な素晴らしい逸品ですわね……」
「なんだぁ?」
 イコナがちらっと外を見ると、パラ実生のグループが興味を持って近づいてくる。
 格納庫の中にいた機晶姫、機晶ロボットの対処はほぼ終わっており、パラ実生、恐竜騎士団員、若葉分校生らの説得により、現地のパラ実生も随分と落ち着いて、契約者達がドアを開くことを待っていた。
「フフン、どうですか!」
 イコナは胸を張って、得意げな表情でパラ実生を迎え入れる。
「この部屋の金目のモンは全て運び出したはずだが」
「……どこにあるんだよ?」
「よくごらんください」
 イコンはペンと自分の胸を叩く。
「ここにありますわ。すっごいお宝が。そう、もちろんわたくしのことですの!」
「…………」
「…………」
 パラ実生達のテンションが一気に下がる。
「な、なんですのその顔は……!」
「よし分かった。売ろう」
「そうだな、本人がそう言うからには、取引の対象だよな! すっげーーーー額で換金してもらおうぜ!!」
「え、えっ……ええーーーーっ! きゃっ」
 パラ実生達はイコナを取り囲み抱え上げて、換金所へと連れていく。
「あれ? イコナ?」
 戦闘を終えて、探索に力を貸そうと思っていた鉄心は、パートナーが連れて行かれることに気づき慌てて後を追い。
 すっごい額で、イコナを買い戻すことになった!

「これでドアを開ける方法がなかったら……面倒なことになるな」
 尋人は、格納庫の中で、皆の動きを見守っていた。
 一応、機晶姫、機晶ロボットの脅威はなくなったが、こちらが探している物が主に設計図であることは、パラ実生にも伝わっているだろう。法外な額を要求するため、または闇市で売るために設計図を持ち逃げしようとする者が現れる可能性がある。
「ゆっくりしている場合じゃないはずなんだが……」
 尋人は地上にいるゼスタや、別の場所にいる友人達を思う。
 アルカンシェルが地球に留まっている期間は、僅か数日。
 その数日間に、皆、すべきこと、したいことがあるはずだ。
 仕掛けて来る者もいるかもしれない。
 だから、出来ることならこの依頼も早く終わらせたい、のだが。
「結構のんびりしてるんだよな、ゼスタ」
 軽くため息をついて、尋人は皆を見回し続ける。
「まだかよ!」
「壊せばいいだろ。凶悪な武器持ってんだろ!」
 パラ実生達は野次を飛ばしながら、ドアの解放を待っている。
「あー、こちらテレサ。何だかさー、敵とドカーンとバチーンとやって、その後調べ物で書類とか紙束とかバサバサでさー」
 連絡役……のはずの、テレサの説明に尋人は眉を寄せる。
 彼女はテレパシーを送っているようだが、全く説明になっていない。
「ロザリー! 優子さんの傍にいるシャロンが、もっと詳しく説明しろって言うんだけど」
 地上で優子の傍にいるシャロン・ヘルムズ(しゃろん・へるむず)に、叱られたようで、テレサは書類をまとめているロザリンドの元に走り寄った。
「格納庫や開いている部屋の物は、ほぼ持ち出されてしまっていますが、お金になりそうもない書類などは残っています。私は今、そちらを束ねているところです。台車などがあるといいんですが」
 ロザリンドは、敵の対処が終わり、探索が始められていることと、必要な物についてテレサに話していく。
「飛空艇とか持ってる人、下してくれないかな。あ、資料を持ち逃げしない人限定でね」
 テレサはロザリンドの言葉をそのままシャロンに伝えて、荷物を運び出すための乗り物をお願いする。
 その近くで。
「後で治してもらったら、今度はお友達として会おうねー」
 メリッサは、壊れた機晶姫に話しかけていた。
 殺気看破や超感覚で警戒しているけれど、今はもう危険はなさそうだった。
 機晶ロボットにも、「もしかしたら、ごめんなさい」と話しかけた。
 不法侵入者として、自分達のことを捕まえようとしただけかもしれないから。

「テレサさん。報告は手短に、そしてきちんとわかりやすく。擬音語や擬態語はいりませんから」
 神楽崎優子の傍にて。連絡役のテレサに小言を言いながらも、シャロンはノートパソコンのキーボードを打つ手を止めない。
「……そのドアはなんらかのエネルギーに反応して開くドアのようですね」
 集まった情報をもとに、シャロンはそう判断し、整理した情報をHCを持つ者に送っていく。
「アルカンシェルの格納庫となれば、ブライドオブシリーズ……もしくは、十二星華の光条兵器、だろうか」
 呟いた優子の脳裏に言葉が響く。
(こっちで試してみるんで、神楽崎はそこで待機しててほしい)
 格納庫に向かった朝霧 垂(あさぎり・しづり)からのテレパシーだ。
(わかった。開きそうになかったら、私も行くよ)
 優子はそう答えて、シャロンを通してロザリンドにもその旨伝えておく。