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空に架けた橋

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空に架けた橋

リアクション

 もう一つの部屋も、昴、朋美、永谷、ラルク、アルコリアが、鳳明、セラフィーナの協力により、ロックが解除され、ドアが開いた。
「お待ちください! 敵がいます!」
 だが、パラ実生が入るより早く、殺気看破で警戒を払っていた昴が、中にいる存在に気付く。
 ドアを開ける為に、精神力をほぼ使い切ってしまった契約者達は、疲れを感じながらも武器をとる。
「まずは、わらわに任せてもらおうか」
 昴のパートナー、英霊の九十九 天地(つくも・あまつち)がまず、部屋へと踏み込んだ。
「シンニュウシャハイジョ」
「話し合うことができぬのなら仕方ありませぬ!」
 薙刀状の武器、魔刃『魂喰』【蝕】を振るい、武器を向けてきた機晶ロボットに突進してライトニングランス。武器ごと腕を落し、深い損傷を与える。
「機晶ロボットは3体。部屋の明かりをつける」
 永谷は素早くダークビジョンで中を確認し、敵の数と照明のスイッチを確認し、明かりをつけた。
「これで最後だろうな」
 ラルクは、中に置かれている者を傷つけないよう注意しながら、機晶ロボットに急接近し、振り上げた両手を、頭上から振り下ろして、大きなダメージを与える。
「攻撃、来る! 皆避けて」
 そう言った後、鳳明は金城湯池、神速の能力で機晶ロボットの射撃を避けて、瞬時に接近する。
「ここで、暴れられたら困るんだ! 精神力が尽きてたって……やれる!」
 大型の武器をとった機晶ロボットを、強い打撃の連続攻撃で打ち砕いていく。
「不本意だけれど……黙っているわけにはいかないわ」
 昴も、歴戦の立ち回り、ウェポンマスタリーといった身に着けた技術を用いて斬り込み、機晶ロボットの足を破壊して倒した。
「まだかよ!?」
「お宝、壊すなよ」
「もう少しまって。安全が確認されてからだ」
 ドアの前に集まって押し合っているパラ実生に、永谷はそう言って、機晶ロボットの状態を確認。
 危険がないように、縛り上げてから合図を送る。
「それじゃ、開始!」
「うおーーーー!」
「右上のパーツは俺んだっ!」
 開始の合図と共に、パラ実生が押し寄せる。
 そして、アルカンシェルの修理パーツと思われる物が次々に持ち出されていった。
「わわわ……凄い意欲だね」
 鳳明はパラ実生達奪い合いながら持ち出していく様子に、ただ驚いていた。
「C級四天王の優子さんが直接来てたら、先に調べさせてもらえた……かもしれないけど」
「難しいよな、優子さんを危険な目に合わせてしまうかもしれない」
 鳳明、永谷は彼らを刺激しないよう注意しながら見守る。
「優子さん自身がキレて手を出さないとも言えないしね……」
「不義とか、嫌いそうだしね」
 弱く笑い合った。
 これでよかったのかなと、少し不安に思いもしたけれど、設計図さえ手に入れば任務は達成なのだ。
「万が一の為に、図面らしきものを持ち出した人のことは、覚えておかないとね」
 鳳明は大きな紙が閉じられているファイルを持ち出したパラ実生を注意して監視。
 だけれど……。
「それ設計図じゃね?」
「先に見つけたのは俺だ!」
「奪うぞ!」
 教導団側と対立することはなくても、グループごとに争いは続いていて。
 図面は抜き取られ、破れ、大変なことになっていく。
「ううっ」
 鳳明達教導団側としては争奪戦に加わって力で押さえつけるわけにはいかないので、見守るしかなかった。
(こちらの状況ですが……)
 セラフィーナは、優子に格納庫内で奪い合いが行われていることを報告していく。
「もし、奥にドアがあっても開けたりはしないでくださいね。また警備機晶ロボットが出てくるかもしれませんから」
 昴はそうパラ実生に声をかけながら、自分も倉庫の中を探していく。
「疲れちゃって殺気看破とか使えないしね。注意して調べないと!」
 明美は昴にくっついて、倉庫の中をきょろきょろ見回す。
「籠手型HCに届いた情報によると、もう1つのドアの向こうに、普段使われているデータや書物はあったみたいね。設計図はどうだろ。ここで作られたのなら、この倉庫で保管されている可能性も?」
 ひとつ、書物を手に取って開いてみる。
 中には分からない文字がぎっしりと並べられている。
 図はなかったので、目的のものではなさそうだ。
「うぉおお、これか、これなのかー!」
 パラ実生が巻かれている紙を広げた。
 中に描かれていたのは、アルカンシェルのイラストのようなもの。
「よし、鑑定だー!」
 図面を懐の中に入れて、倉庫から飛び出していく。
「……なんだか楽しそうですね」
「活き活きしていますね。でも朋美、争奪戦に混ざってはだめですよ」
「混ざらないよ〜。あっ、それあたしが先に見つけたのに!」
 天地に混ざらないと言ったばりだったのに、朋美は発見した物がパラ実生に持って行かれそうと知ると、彼らに混ざって奪い合いを始めた。
 喧嘩に満たない、ワゴン商品の取り合い程度の奪い合いだ。
「喧嘩になる前には、引きはがしませぬと」
 天地は注意して見守りながら、探索を続けていく。
「まてよ、逆にパラ実生が欲しそうで、アルカンシャル側がいらなそうなものがあったら、交換という形で取引できるんじゃないか?」
 光条兵器を持たないグラキエスは、パラ実生に紛れて倉庫になだれ込んでいた。
「そうですね。交渉材料になりそうなものも、確保しておきましょう」
 ロアはサイコキネシスで物を浮かせて、棚の奥を確認する。
「この構造の棚だと、更に奥がありそうだ」
 トレジャーセンスの能力をもつグラキエスが言い、ロアは浮かせた箱を下して、更に奥を覗けるようにする。
「ふふ……楽しそうですね」
 エルデネストは、邪魔なガラクタや、下した木箱をパラ実生の方へ押してどかしたり。その程度の手伝だけして、グラキエスを眺めていた。
 探索には興味がない。
 無邪気に探索したり、戦闘をしたりしているグラキエスに興味があるだけで。
「ああ、なんか武器類が入ってるな……。結構価値のあるものかもしれなが、アルカンシェルには使えない」
 それでも、グラキエスは手に入れたその武器が入った箱を確保しておき。
 その他、数個の箱を手に、部屋から出て、格納庫内にいるパラ実生との交渉に移ることに。
「格納庫の片付けも必要だな。キースは選別しててくれ」
 格納庫は壊れた機晶ロボット、機晶姫や、瓦礫や、占拠していたパラ実生達が出したゴミで、かなり散らかっていた。
 探索を続けるために、グラキエスは片づけを。
 キースは倉庫から持ってきた物の選別。
 そしてエルデネストは――。
「こちらの武器と、そちらの部品、交換しませんか? この切れ味の良さそうな剣などどうでしょう? 古代の武器ですから価値がありますよ。部品の方は私達以外に売ろうとしても鉄塊の価値しかありませんから」
 心理学の知識を用いて、巧みに交渉を行ていき、その場にいたパラ実生と物々交換を行うのだった。

(地上は随分落ち着いてる。駆けっことか脱がしあいとか温泉ツアーの話し合いとか不思議な現象も起きてるけど!)
 地上を歩いて回りながら、羅儀が地下に居る白竜にテレパシーを送る。
(そっちはどう? 笑顔笑顔だぞ?)
(それは、極めて難しいが努力する……。問題も多く、順調とは言えないが、教導側とパラ実側の衝突は起こっていない)
 白竜からはそんな返事が返ってくる。
 パラ実生は競い合って格納庫や閉ざされていた部屋の中にあった物を持ち出しているようだ。
 そして、格納庫の中で奪い合いも行われているようだが、パラ実生が仲裁に入ってくれている。
 とはいえ、簡単には落ち着くはずがない。ヒャッハー、パラ実生だから。

「傷がついてるもの多いなー。もっと注意してもってきて! もったいないし」
 十七夜 リオ(かなき・りお)が残念そうに言う。
 部品の買い取りを行うという話を聞き、リオは機械修理、イコン整備、機晶技術、先端テクノロジー、そして博識の知識を用いて、パーツのチェックを担当していた。
「これなんか破れてるし……大事に扱ってよ」
 劣化して壊れているものは仕方がないが、明らかにここに持ってくるまでの間に壊れたり、破れたりした物が多い。
(とはいえ、それを理由に買い取らないこともできる、か。金出すのは政府なんだろうけど、経費は出来るだけ抑えておいた方がいいだろうしなぁ)
 パラ実生達は、わらわらと発見した物を持ってくるが、制御室の修理に必要と思われるものはそう多くはない。
「こっちのはそのまま使えそう。こっちのは要修理っと。あ〜、こっちのは完全に壊れちゃってるなぁ」
「壊れてても買い取ってくれるんだろ!?」
 パラ実生達は必死の形相だ。
「ジャンクと同価格くらいでいいなら……って、あくまで価格のことは目安な。実際に金だすの僕じゃないし」
 リオは、使えるか使えないかを判断し、鑑定の方は他の契約者に任せることに。
「千切れた図面は、残りも見つかるかもしれません。特にきちんと撮っておかないと」
 パートナーのフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)は、集まったパーツや図面らしきものを、デジカメで写していく。
 あらかじめ神楽崎優子の許可はとってあるし、メモリは優子に提出予定だ。
 リオが欲しがってはいたけれど、持ち出しは出来ないようだった。
 とはいえ、修理を手伝う際や、乗組員として協力する際に、閲覧は可能だろう。
「これは……なんでしょうね」
 パラ実生が抱えてきた、凄く大きな部品を見て、フェルクレートは首を傾げる。
「推進機器、かな?」
 リオは持ち上げて確認するが、何の部品だかはわからない。
「分からないとは思いますが……」
 フェルクレートは触れて、サイコメトリで探ってみる。
「うーん、実際に使われたことはまだないみたいです」
 部品に関しては、サイコメトリで読み取れる情報はなかった。
「こちらは……」
 図面の切れ端と思われる紙切れにも、サイコメトリ。
「なんだか複雑な感情が流れてきます。描き手の思いでしょうか」
 何の図面なのかは分からなかったが、細かな文字も読み取れるよう注意を払いながら、写真に収めておく。