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空に架けた橋

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空に架けた橋

リアクション

「ぞろぞろと出てきますね。楽しくなってきました」
 格納庫の中にて。エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)は、粘体、焔、鉄の能力を持ったフラワシに、自分達を守らせながら、機晶姫に攻撃を仕掛けていく。
「流石に囲まれたらまずい。被害を出すわけにはいかない」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は、ネロアンジェロ(強化光翼)で飛び、横に回り込んで、攻撃を放とうとした機晶姫に、奈落の鉄槌を使い動きを鈍らせる。
「行きますよ、少し離れてください」
 言って、ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)は、グラキエスが離れた途端に、ライトニングブラスト。
「眠ってていただきましょうか」
 間を開けずに、エルデネストがカタクリズム。瓦礫や機晶姫の部品が乱舞する。
 更に真空派を放ち、機晶姫の身体を砕いていった。
「探索開始は遠そうだ……っ!」
 グラキエスはブリザードを放って、ダメージを負っていた機晶姫達を機能停止に追い込んだ。

「戦う相手は、此方に攻撃を仕掛けてくる、機晶姫、機晶ロボットのみだ!」
 レーザーマインゴーシュによる一撃で、松平 岩造(まつだいら・がんぞう)は敵機晶姫の腕を斬りおとした。
「あれ、教導団じゃねぇ? 冗談じゃねぇぞ、奪われてたまるか、撃て!!」
「ぐ……っ」
 その彼の腕を、後方からパラ実生が撃った。
 しかし、岩造は振る向きもせず耐える。
「大型武器を持っている機晶姫から優先して倒した方がよさそうでござる」
 ロケットランチャーを持つ機晶姫を、武蔵坊 弁慶(むさしぼう・べんけい)が狙う。
 振り上げたレーザーナギナタを打ちおろし、機晶姫の頭部を砕くと、そのまま武器を突きだし大きく回しながら、敵を叩き飛ばしていく。
「ドアには何か装置がついているようじゃのう。キーとなるものがなければ、開けられぬようじゃ」
 武者鎧 『鉄の龍神』(むしゃよろい・くろがねのりゅうじん)は、パイルバンカー内蔵シールドで防御しながら、ブレード・オブ・リコで機晶姫に刺突。
「はあっ!」
 ジャンプからの龍腱具を用いた蹴り技で、岩造は機晶姫の頭部を破壊。
「ちと狙われてるな。気をつけろよ」
 ドラニオ・フェイロン(どらにお・ふぇいろん)は戦闘には加勢をせず、デジタルビデオカメラで格納庫を映していた。
 岩造達は完全武装をしている為、特にパラ実生達に狙われていた。
「加勢いたします!」
 ゼスタと共に訪れた、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が格納庫に降り立つ。
 パラ実生の攻撃を英雄の盾で防ぐ。
 そのまま、盾となり、ロザリンドはパラ実生、機晶姫、機晶ロボットの攻撃を受けていく。
「いくよー!」
 メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)は、計器の後ろから機晶スナイパーライフルで援護。
 武器を撃って破壊していく。
「んと……体中が武器?」
 しかし、特に警備機晶ロボットの方は、顔や腹部にも武器が仕込まれており、手に持った武器を壊しただけでは、攻撃を止めてはこない。
「寝ててねー」
 メリッサは機械の足を撃て破壊する。
「地上では、話し合いを進めているところです。悪いようにはしませんから」
 パラ実生の攻撃は、ロザリンドがひたすら受け止めて。耐えていく。
 傷ついた自分の身体は、ヒールで癒して。
「……っ」
 機晶姫が放った機晶姫用レールガンの一撃が、ロザリンドに大きなダメージを与える。
 一瞬、パラ実生に背を向けて、機晶姫に狙いを定めて、ヴァーチャースピアを繰り出す。
「よし、任せろ!」
 ロザリンドが武器を弾き、岩造がレーザーマインゴーシュを大きく振り、横から機晶姫の身体を斬り裂いて倒した。
「お願いします」
 ロザリンドは再び、パラ実生の攻撃を受ける為に盾を構える。
(番長達が、交渉頑張ってるよ。もう少ししたら、邪魔するパラ実生減ると思うから頑張ってー)
 連絡役を担っているテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)から、テレパシーが届く。
(わかりました。少しでもお役に立ちませんと……。教導団の方々には過去に迷惑かけてしまいましたから)
 シャンバラが東西に分かれて戦っていた頃のことを思いだしながら、ロザリンドは教導団員達の盾となり続ける。

(ドア、こじ開けようとした後があるけれど、開かなかったみたいね)
 琳 鳳明(りん・ほうめい)は、パートナーのセラフィーナ・メルファ(せらふぃーな・めるふぁ)に迷彩塗装で姿を目立たなくしてもらい、更に、隠れ身の能力で隠れながら、先行していた。
(鍵穴のようなものはありませんね。とりあえず、優子さんに報告をしておきます)
 セラフィーナもベルフラマント、迷彩塗装で姿を隠し、レビデートで足音をも隠して、鳳明と共に先にドアに接近していた。
 会話もテレパシーを用いることにしており、優子への連絡もテレパシーで行う。
(あの大きさのアルカンシェルが格納されていただけあって、すっごく広い格納庫だね。空いてないドアは、ここと……あっちにも一つあるようだね)
(……ええ、閉ざされた部屋の中にも、機晶ロボットや、機晶姫が配備されている可能性があります。十分注意して向かう必要があるでしょう)
 どのルートで探索を進めていくべきか、人員はどの程度必要か、ドアの解放は1つずつが良いだろう。
 鍵や、数字の入力や、カードがキーになっているわけではなさそうだ。
 サイコメトリを使ってみたが、読み取れる情報はなかった。というよりも、魔法的な干渉を防ぐ力があるようだ。
 そんな報告を、セラフィーナは優子にしていくのだった。

○     ○     ○


「後で見直した時に、何かを再発見できるかもしれんからな」
 地上でも、デジタルビデオカメラで、格納庫周辺の様子や、取引を記録している者がいる。武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)のパートナーの武神 雅(たけがみ・みやび)だ。
 神楽崎優子の許可はとってある。
 発見状況や保存状態、取引条件を記録しつつ、撮影しておけば、資料として使えるはずだ。
「それにしても、面白そうな奴らが沢山いるじゃないか。探索後の打ち上げが楽しみだ」
 カメラにパラ実生を写しつつ、雅は軽く笑みを浮かべた。

「よろしければ、お弁当食べてください。お腹が空いていては、探索できませんから。お茶もどうぞ」
 牙竜のもう一人のパートナーの龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)は、優子に確認をとった後で、弁当とお茶を配って回っていた。
 パラ実生にも、教導団員にも、そのどちらでもない者にも。立場関係なく。
「無線機もお使いください」
 インカムタイプの無線機もパラ実生にも配っていく。
「後から来たヤツらに連絡することなんてねーよ」
「発見したものについてだけではなくて、罠や警備機晶ロボットと遭遇した時に、知らせていただけましたら、助けにいけますから」
 そう優しく微笑んで、灯は不良達にも無線機を持たせた。
「発見したものの鑑定は、あちらで行わせていただきますので、何か見つけましたら来てくださいね」
 灯は鑑定所の場所を教えた後、別のグループに弁当を配る為にその場から離れて。
「変な薬とか入ってないぜ。なんなら交換してもいい。まだ機晶姫が暴れてるようだし、しばらく様子を見ながら、情報交換をしないか」
 弁当とお茶を持った牙竜がそのグループに近づき、地べたに座って弁当を食べ始める。
 竜司達から取引内容をも聞いていた不良達は、まだ少し疑っているものの、今強引に探索するよりも様子を見た方がよさそうだと、気づいていた。
 弁当を食べながら、牙竜の言葉に耳を傾けていく。
「全部でどれくらい集まってるんだ? 1つのグループじゃなよな。ここの格納庫、遺跡ってほど広くはなさそうだけど、なんで探索難航してるんだ?」
 そんな風に、牙竜は不良達に問いかけていく。
「ドアが開かねーんだよ。で、グループで開けようとしてるんだけど、邪魔が入って作業がすすまない」
 グループ数は定かではないが、30人ほどの不良達が集まっているようだ。
 協力して、時間をかければ壁を壊すことも不可能ではない。
「開かねーってことは、大事な物があるに決まってるんだけどよ!」
「まあ、大事なものはあるかもしれないが、それが価値のあるものかどうかは分からないからな。壁や柱は無闇に破壊すると、崩れる可能性あるぞ」
 もぐもぐ、弁当を食べながら牙竜はそう言う。
「ドアはこっちの技術でなんとかなると思う。その後の探索はみんなでやろうぜ。争奪戦……というか、早い者勝ちになるだろうけれど、こっちが欲しいのは金目のものじゃないし、優子さん達と奪い合いにはならないと思うぜ?」
 危険を排除し、通れるようにしてくれるというのなら、まあそれでもいいとそのグループのリーダーは言う。
「それとさ、この仕事が終わったら宴会を開こうぜ、若葉分校で打ち上げやるみたいだから、皆でそっちに顔出すのもいいかもな」
「おーそりゃいいな。エロサイトっていうのにも、興味あるしな!」
 そんな言葉と同時に、ようやく不良達の笑みが見れた。

「危ないですから、こちらの岩陰で待っていてください。危険がなくなりましたら、皆さんにも必ず声をかけますから」
 若葉分校生の関谷 未憂(せきや・みゆう)は、怪我をした不良達を岩陰へと運んだり、引っ張ってきていた。
「くっそー、壁破壊した奴ら、一発殴らねぇと気が済まねぇ!」
「……けんかは……だめ……」
 不良の手を掴んで止めたのは、プリム・フラアリー(ぷりむ・ふらありー)だ。
「……みんなで、たべて……まつ……」
 プリムは持ってきたお菓子を、不良達に握らせたり、ぽけっとに押し込んだりしていく。
「バレンタインが近いですし。チョコレートとか如何ですか?」
 未憂は治療をしながら、微笑んだ。
「お、おう。殴るのは後でいいか」
 チョコレートという言葉に、結構あっさり不良達は陥落した。
「ケガがなくても、よろしければ休憩していってください。チョコレートの他にも、パンやプリムが持ってきたお菓子もありますから」
 お菓子が入った箱を、リーダーの少年に渡して。
 未憂は怪我人を、ナーシングや応急手当の知識、リカバリ、ヒールの魔法で優しく、丁寧に治療していく。
「どーぞ、召し上がれ♪」
 リン・リーファ(りん・りーふぁ)は、ギャザリングヘルスのスープに、香辛料を入れた者を不良達に渡していく。
「これ、飲み物か?」
「うん、スープだよ♪」
 未憂に味見してもらっており、見かけはともかく、味には問題はなかった。
 リン自身も飲んでみせる。
「……のむ、あたたまる、ちからでる……」
 プリムも受け取って、一口、スープを飲んだ。
 訝しげな顔をしながらも、不良達も飲み、そしてお菓子を摘まんでいく。
「しかし、なんなんだよ、あいつらは。お前等もだけど」
「えっとねー。ここで見つかった月まで行ける船が今壊れちゃってて、シャンバラの女王さまが困ってるんだって。で、修理する部品を探して、ここに来たらしいよー」
 不良の愚痴に、リンが答えていく。
「すっごいちっちゃくても良い部品だったら買ってくれるんじゃないかなあ? 宝探しみたい。一攫千金も夢じゃないよねロマンだねー。たくさん部品を見つけて協力してくれたら、シャンバラの偉い人が大荒野でも携帯使えるようにしてくれるかもだってー」
「携帯? そんなもん、もってねぇし」
「若葉分校に、置くらしいよ。そこから電話したり、ネットしたり出来るんだって」
 リンの話を、ふーんと、不良達は聞いていく。
「よかったら、他の子達にも教えてあげてね! あ、そうそう」
 少し離れた位置で待機している者達――第七龍騎士団のルヴィルと従龍騎士の方を指差して。
「あの人たち、エリュシオンの騎士なんだってー。ちょう強いみたいだよ。あたしも前に助けてもらったこと、あるんだよー」
「強いって聞くと、倒したくなるぜ!」
「そ、それは待ってください。戦うのなら、龍騎士より、恐竜騎士がお勧めですよ! でも、今日は探索を優先しませんか」
 未憂がフォローし、プリムは幸せの歌を歌いだす。
 そうして彼女達は、可愛い女の子からのお菓子と、天使の治療という無意識な懐柔で留めておくのだった。