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お風呂ライフ

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お風呂ライフ

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 エールヴァントやアルフ達とは別の巨猿の手に、エクスは捕獲されていた。
「ひゃっはー! ようやく天使に触れたぜぇぇ!!」
 ノゾキよりも三姉妹の裸に興味を持ったモヒカンの男が叫ぶ。
「エクスを離しなさい!!」
 セラフが非難の声をあげる。
「あん? それが人にモノを頼む態度かよぉぉ!!」
「……」
「ひ、卑怯だわ!」
 腕で胸を隠すディミーアが叫ぶ。
「うるせぇ! ノゾキに卑怯もクソもあるか!」
「……ごもっともね。で、どうすればあたしの妹を離してくれるのかしらぁ?」
 怒りを押し殺しつつセラフが問いかける。
「そうだなぁ……てめぇら、そこで踊りでも踊りやがれ」
「はぁ!?」
「勿論、邪魔な腕はオープンにしてだぁぁ!」
「セラフ姉さん……」
 恥辱に、ディミーアが目に涙を溜めてセラフを見る。尚、この時の凶司は「モヒカンにしてはよく言った! これで売上が伸びる!!」と、一人喜んでいたらしい。
「いいわ……踊ればいいのね?」
 セラフの言葉に、捕まったエクスが叫ぶ。
「やめて! セラフお姉ちゃん! ボクの事はいいから!!」
「おいおい。お前は俺たちの手の中だって忘れるなよぉ!」
 モヒカンが命じると、巨猿はエクスを掴んだまま、彼女の胸の上あたりに押し当てている親指を動かす。
「ひぃ!? ひゃぁぁ……や、やめてぇぇ!?」
 胸の上をモゾモゾと動く巨猿の指使いに、エクスが顔を赤らめる。
「ひゃっはー! 小せぇ胸だな。押しつぶし甲斐もねぇぜ!」
「やめなさい!」
 セラフが一喝し、エクスに笑いかける。
「エクス、妹なんだからたまにはあたしに甘えなさいよ?」
「お、お姉ちゃん……」
「わ、私もします!」
 ディミーアが声をあげ、セラフの傍にやって来る。
「ディミーア、あなたまで……」
「いいえ、私も、エクスの姉なんですから!」
「ひゃっはー! 双子姉妹のストリップショーとは最高だな! ポールが無いのが勿体無いくらいだぜぇぇ!!」
 発狂寸前のテンションのモヒカンがそう言った時、
ブゥゥンッ!!
 巨大な影が彼と巨猿を覆い、
「あ? ……おわああぁぁぁ!?」
ズズゥゥゥーンッ!!
 落下してきたのは巨大な岩であった。
「誰だ!?」
 砂煙の中、岩の上に乗った人物のシルエットが見えてくる。
「ルイ☆スマァイル! はははは、皆さんお疲れ様です。凶司さんからの要請を受け、只今到着しましたよ!」
 マッスルポーズを決める、その人こそ、魔王軍の資金難のためのバイトに来ていた褌一丁の警備員、ルイ・フリード(るい・ふりーど)であった。
「巨猿さん達、良い筋肉をしてますよね。やはり野生で過ごす分、扱う筋肉が違うのでしょうか
うぅむ……」
 岩の上からピョンと飛び降りるルイ。
「ルイちゃん? あなた、温泉の警備だったはず……どうやってここまで?」
「なぁにセラフさん。簡単ですよ。私は自分で投げた岩の上に乗ってやってきただけですから」
「そう。え……?」
 物理法則を問いただそうとするセラフの返事を待たず、ルイは巨猿に向き直り、ムンッと全身の筋肉に力を込める。
「さぁ、自然が育んだネイチャーマッスルと対峙する貴重なチャンスです。巨猿さん? 褌一丁の私のナチュラルマッスルを見てもらいましょう!」
 ルイはそう言うと、拳に力を込め、ポーズを決める。
「全力アピール!!!」
「はっ……男の裸なんて興味ないぜぇぇ、踏み潰せ!!」
 モヒカンが巨猿に命じる……が。
「クオオォォ!」
「て、てめぇ!? 命令を聞け!!」
 モヒカンが初めて自分の命令に背く巨猿に慌てる。
「ムンッ!! ハァッ!! ヌゥ!!」
 次々とポーズを決めては、白い歯をニカッと見せるルイ。
 純粋な筋肉アピールを行うルイに触発された巨猿は、掴んでいたエクスを放り出し、ルイに対抗して胸をガンガンと叩く。
「ほう! 私とやる気ですか? では、お互い筋肉の素晴らしさを語り合いましょう!! ムンッ!!」
「グゥオオッ!!」
「ほう! 立派な胸筋です! ですが、これはできますか?」
 ルイは前かがみになり、胸の筋肉をピクッピクッと上下動させる。
「グオオォォ!?」
「はははは!! 驚いていますね?」
「ゴオオォォアア!」
 巨猿は背面をルイに見せ、肩甲骨辺りの筋肉を動かす。
「むぅ!? ならば私も……!!」
 次々とポーズを決めていくルイと巨猿。
「……巨猿の世界にも、筋肉マニアっているんですね」
 ディミーアがポツンと呟く中、放されたエクスがセラフに抱きつく。
「お姉ちゃーん! ありがとうー!!」
「いいのよぉ。エクスは妹なんだから……」
 セラフはエクスを受け止めつつ、巨猿から落ちて逃げていくモヒカンをチラリと見る。
「(元凶は他にいるし、見逃してあげるわぁ……)」

「……よし。映像は撮れたし、撤収するか」
 自分が助けを呼んだルイにより、助けられた三姉妹を確認した凶司は、ビデオカメラを片づけていた。
「しかし、パージ機能は上手くいったな。今後も何かあれば……ん?」
ズズゥゥゥーンッ!!
 凶司の付近に、一本の大木が突き刺さる。
「ふぅ。中々便利な移動手段ですね」
「あ、ルイさん。ありがとうございました」
「いえいえ、凶司さん。私の方こそ、貴重な経験でしたよ」
「え?」
「基本覗き犯と言ったら男性が多めですよね。そうなると必然的に女性の湯の方が危険がいっぱいです。しかし、私は男ですから、女性の湯の警備はアウト。男性の湯を覗く女性は、まぁ少数でしょうし、丁度暇を持て余していたところだったんです。はははは!」
「あの、どちらへ?」
「なぁに、私は決められた事を行い、ただ実行するのみです」
 ルイは凶司に片手を挙げ、去っていく。
「(ふむ……筋肉ダルマも侮りがたいか……)」
 カメラを片づけ終わった凶司。その見つめる地面に、3つの影があった。
「キョーウージ?」
「凶司、さん……?」
「凶司ちゃぁぁーん?」
「無事戻ってきたか……」
 凶司が振り向くと同時に、三姉妹の息のあったお仕置きが開始されたのであるが、その内容は彼の名誉のため割愛する。
 ただ、後日、ネット上にボロボロの凶司が荒野にハリツケにされた意味深な動画がアップされていた事との関係性については、鋭意調査中とだけ述べておこう……。