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リアクション
21.ルドルフと薔薇
薔薇の学舎にて。
校長室で、
ヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)は、
薔薇の学舎校長である、
ルドルフ・メンデルスゾーン(るどるふ・めんでるすぞーん)の校務の補佐を行っていた。
これは、ルドルフのイエニチェリである、
ヴィナの、これまで以上にルドルフを助けたいという気持からでもある。
「この書類を、こちらのファイルに。
案件は未処理のものと可決済の物をまとめておいたから」
「ありがとう」
ヴィナの補佐の元、ルドルフは、てきぱきと仕事をこなしていく。
(元々、仕事のできる人だけれど。
いろいろと抱え込んでしまうところもあるから。
ルドルフさんをこうして身近で補佐していくことで、
少しでも、負担を軽減できるといいな)
ヴィナは、そう、ルドルフの横顔を見つつ思っていた。
昼食の際は、ヴィナは、あえて、学食での食事を提案する。
ルドルフが、一般学生と交流し、
学生たちの声を聞くことができるようにとの配慮であった。
午後の校務も終わり、
ルドルフとヴィナは、ティータイムを迎える。
薔薇の温室で、ゆったりと時間を過ごすうち、
ヴィナは、好きな薔薇の品種の話をしていた。
「俺は意外かもだけど、白い薔薇が好き。
特にイングリッシュローズのグラミス・キャッスルなんか好きだね。
白の次が赤だったり青だったりするけど。
あれ? フランス人じゃないのにフランスの国旗みたいだね」
ヴィナの言葉に、ルドルフも微笑を浮かべる。
「ルドルフさんが好きなのは、やっぱり赤かな?」
ヴィナの問いに、ルドルフはティーカップを置き、うなずいた。
「そうだね、君の言うとおり、赤は好きかな。
やはり、マントにもある紅薔薇には思い入れがあるね」
「そうか、やっぱりね」
ヴィナは、ルドルフの好みが自分の予想通りだったことに、
なんとなくうれしさを感じていた。
「白も、何ものにもそまらないような凛々しい美しさがあっていいね。
でも、校長になって実感したんだけれど」
ルドルフは、改めて、つくづく感じいるように言った。
「人も薔薇も同じ。
それぞれの美しさというものがある。
これからも、その美しさをより引き出せる存在でありたいな」
ヴィナは、ルドルフの言葉に、笑みを深くした。
「これからも、薔薇学をより良くしていこうね、ルドルフさん。
俺が、というより、俺達は皆あなたの力になるから、支えるから、
あなたは前を見続けてほしい」
ヴィナの言葉に、ルドルフは頷く。
「ああ、これからもよろしく、ヴィナ」