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リアクション
19.代王の職務
シャンバラ宮殿にて。
イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)は、
代王である、セレスティアーナ・アジュア(せれすてぃあーな・あじゅあ)を訪ねていたが。
「すまない、イーオン。これから仕事なのだ!」
そう答えられ。
「そうか。なら、ぜひ、キミの仕事ぶりを見学したいものだが……」
こうして、セレスティアーナの職務を見守ることになったのだった。
セレィティアーナは、執務室で、
書類に捺印をする仕事をする。
「大変だが、私にかかればどうということはない!」
たくさんの書類にハンコを押していくのは、単調だし、
大変だろう。
しかし、イーオンが見守っているためか、
セレスティアーナは、普段よりもテンションが上がっているようだった。
「早くやっつけて、イーオンと遊びたいからな!」
「ふふ、そうか。
大丈夫、俺はゆっくり待っているよ」
セレスティアーナの言葉に、イーオンは微笑を浮かべる。
やがて、公務で、
要人との謁見をすることになったが、
基本的には、おつきの者が補佐してくれているようだった。
「こういう席では、
セレスティアーナ様はあまりしゃべらないように、と言われたぞ。
その方が立派に見えるからだそうだ。
退屈だが、これも、代王の役目だからな!」
謁見の前、こっそり耳打ちしてきたセレスティアーナに、イーオンは苦笑した。
「ああ、そうだな。
キミはいつもどおり堂々としているだけでいい」
「そうだろう。じゃあ、行ってくるぞ!」
セレスティアーナは、胸を張って、謁見室へと向かっていった。
セレスティアーナの性格を考えて、
うまく、代王の仕事を務められるよう、周りが考えてくれているらしい。
そして。
セレスティアーナもまた、成長しているのだ。
シャンバラ宮殿から、民衆に手を振るセレスティアーナの姿を見て、
イーオンは、そのことを実感していた。
(昔と比べてだいぶ立派になったな。
あまり、パニックを起こしたりもしていないようだし)
代王としての仕事は人前に出ることも多く、大変だろうに、
セレスティアーナは予想以上になんなくこなしている。
イーオンは、かつて庇護しようと誓った少女が、
今では自らの足で立って歩いている様子に、感嘆した。
私室に戻ってきたセレスティアーナは、
いつものように満面の笑みを浮かべる。
「さあ、今日の仕事は終わりだ!」
「よくがんばったな」
イーオンが、セレスティアーナの髪をなでる。
「今日だけでなく、毎日、
代王などという重責をこなしてるのだ。
何かしたいこと、欲しいものがあるなら、俺の力の限り応えよう」
「本当か!?」
セレスティアーナが、ぱあっと顔を輝かせる。
「遊びに行くでも、お菓子の差し入れでも、
この前の続きでも構わないぞ? おでこの次は、どこかな?」
イーオンは、いたずらっぽく笑ってみせる。
先日、イーオンは、セレスティアーナのおでこにキスしたのだ。
「ななななななな……!?」
セレスティアーナは真っ赤になり、おでこを押さえて飛びすさる。
「そそそ、そんなことをいうイーオンはきらいだっ!」
すねたように顔を背けてしまうセレスティアーナに、イーオンは笑みを浮かべる。
「わかった、すまなかった。
だが、君が愛おしくてたまらないんだ」
「……」
セレスティアーナは、顔を紅潮させ、
イーオンの顔を見つめる。
「わかった。
じゃあ、また遊びに行こう、約束だぞっ!」
そう言い、セレスティアーナは、イーオンと指切りをした。
イーオンは、セレスティアーナの、小さくて白い手のぬくもりを感じ、
あらためて、彼女を守っていきたいと、決意を新たにした。
「ああ。キミが笑顔になれるのなら、
俺は、なんだってしてみせよう」