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リアクション
14.グランマート 宮殿都市アディティラーヤ店
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)の経営する、
グランマート 宮殿都市アディティラーヤ店。
ここは、コンビニであると同時に、
ファーストフードが店内で食べられるというお店である。
高原 瀬蓮(たかはら・せれん)は、
お店の名物である、超ミニスカートの制服を着て、
美羽の指導を受けていた。
前回、パートナーの
アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)のために、
ハンバーガーセットを作った瀬蓮だったが、
天然お嬢様であるため、
料理下手が炸裂し、
ハンバーガーもポテトもシェイクも大変なことになっていたのである。
それでも、アイリスは、優しく笑って食べてくれたのだが。
だからこそ。
「瀬蓮ちゃん、今度こそ頑張ろうね!」
「うん、美羽ちゃん。
ふつつかものですが、よろしくお願いします」
美羽の指導の下、瀬蓮が今度こそ、ハンバーガーセットをちゃんと作れるように、
そして、完成品をアイリスに食べてもらえるように。
そう、2人は決意していたのだった。
「ひとつずつ、手際よく作っていけば、失敗しなくてすむからね。
まず、パテはこうやって焼くんだよ」
美羽が、実践して見せるのを、美羽はじっと見つめる。
「じゃあ、瀬蓮ちゃんもやってみようか」
「はーいっ!」
元気よく返事した瀬蓮だったが。
「瀬蓮ちゃん、焼きすぎ、焼きすぎっ!」
「ええっ!」
またも、パテを黒コゲにしてしまう瀬蓮だった。
「気を取り直してもう一度やってみよう」
「うんっ」
そうやって、がんばっている様子を、
アイリスは、客席から、微笑を浮かべて見守っている。
「シェイクだけど、この間はなんで吹き出ちゃったんだろうね……。
機械のポタンを押すときは、慌てずに落ち着いて……そう、そんな感じ!」
「本当? よかったあ」
「って、瀬蓮ちゃん、カップを斜めに持っちゃダメー!」
「ええっ!? きゃああああああ」
またも、シェイクをこぼしてしまう瀬蓮であった。
「ご、ごめんね、美羽ちゃん」
「大丈夫だよ。次はがんばろうね」
「うん、アイリスに、絶対、おいしいハンバーガーセットを食べてもらいたいから、
瀬蓮、がんばるよ!」
美羽は手際よく、瀬蓮のこぼしてしまったシェイクを片付ける。
瀬蓮は、決意を新たに、両手を握りしめた。
そして、前回、揚げすぎになってしまったポテトだが……。
「しっかりタイマーを見ていれば、ちょうどいい揚げ時間がわかるから大丈夫だよ」
「うん、しっかり、タイマーを見ていれば……」
美羽にいわれ、瀬蓮はタイマーを凝視していたが。
「って、瀬蓮ちゃん、タイマーを見てるだけじゃダメだよ、ポテトをすくい上げなきゃ!」
「ええっ、また揚げすぎになっちゃった!? ご、ごめんね、美羽ちゃんー!」
ドタバタと、キッチンで、悲鳴や歓声が聞こえてくる。
アイリスは、客席で、
ゆったりとパートナーたちを待ってくれていた。
「つ、ついに、完成だね!」
「やったあ、ありがとう、美羽ちゃんのおかげだよ」
何度も何度も失敗して、パテやポテトを焦がしたり、シェイクをこぼしたりしたものの、
ついに、瀬蓮が、自分の手で、ハンバーガーセットを完成させることができたのだ。
「ほら、はやく、アイリスに持って行ってあげて!
きっと、お腹すかせてるだろうから!」
「うん、ありがとう!
アイリス、ハンバーガーセット、お待たせしました!」
瀬蓮が、アイリスに向かって、駆けだすが。
繰り返しにはなるが、瀬蓮は天然である。
さっき、シェイクをこぼしたときに、床を掃除したのだが、
そのために、床がつるつるになっていた。
その場所を、瀬蓮はうっかり走っていってしまい……。
「きゃああああああああああああ!?」
「瀬蓮ちゃあああああああああああん!?」
「瀬蓮!?」
アイリスの目の前で、
ハンバーガーセットをひっくりかえしそうになった瀬蓮を見て、
美羽が慌てて駆け寄り、
床に落ちそうになったハンバーガーセットをキャッチする。
一方、瀬蓮のことは、アイリスがとっさに支えていた。
「大丈夫? 瀬蓮」
「うん、ありがとう、アイリス。
……あ、ハンバーガーセットは!?」
「大丈夫だよ、私がキャッチしたから!」
「ありがとう、美羽ちゃん!」
笑顔を向ける、美羽に、瀬蓮が明るく笑みを返した。
「本当に、よくがんばってくれたね。瀬蓮。
美羽も、瀬蓮と僕のためにどうもありがとう」
「ううん、アイリスこそ、ずっと待っててくれてありがとう。
美羽ちゃんも、瀬蓮にいっぱいつきあってくれてありがとうね!」
「ふふ、当たり前じゃない。私達、友達なんだから。
アイリス、お腹すいたでしょ?
さあ、召し上がれ!」
美羽が笑顔で言う。
「うん、召し上がれ、アイリス!」
「ありがとう、いただくよ」
瀬蓮にも言われ、アイリスは、笑顔でハンバーガーセットを食べ始める。
優雅にハンバーガーを口に運んだアイリスは……。
「とってもおいしいよ。ありがとう。
瀬蓮、美羽。
これまで食べた中で、一番、おいしいハンバーガーだよ」
心からの賛辞を述べてくれたのだった。
瀬蓮と美羽は、顔を見合わせ、手を取り合う。
「ポテトも食べてみて、アイリス。
今度は美羽ちゃんのおかげで揚げすぎないで成功したんだよ」
「シェイクも飲んで、アイリス」
「うん。
……ポテトの塩加減もちょうどいいし、
シェイクも甘くておいしいな。
本当に、がんばったね、瀬蓮」
アイリスが、笑みを深くする。
瀬蓮と美羽は、飛び上がって喜んだ。
「これで、瀬蓮ちゃんは、ハンバーガーセットの免許皆伝、だね!」
「ありがとう、美羽ちゃん!」
少女たちの笑い声が、
グランマート 宮殿都市アディティラーヤ店に響き渡った。
〜やったね!〜