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リアクション
「最初はどうなるかと思いましたが、順調に解体が進み出しましたね。俺達も突入しましょう」
「歩も乗って下さい。私達は2階から人質の救出に向かいます」
1台の小型飛空艇に樹月 刀真(きづき・とうま)と漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が二人乗りしている。
「え? 3人乗り? う、うん」
百合園の七瀬 歩(ななせ・あゆむ)は少し不安ながらも、月夜におぶさるような形で小型飛空艇に乗った。
「なんちゃら寺院が来たり、建物が壊される前に要救助者を救出しないと」
「なんちゃらじゃない。鏖殺寺院だ」
教導団のルカルカ・ルー(るかるか・るー)とパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)はサイドカーを外した軍用バイクに乗り込んだ。
呼雪が不良から聞き出した情報により、間取は把握できていた。
人質は恐らく二階に捕らえられているものと思われた。1階で、奴隷としてこき使われている者もいそうだ。
「では行きます」
「きゃああっ」
小型飛空艇が浮かびあがる。体勢が不安定であり、歩は思わず悲鳴を上げるも人質を救出しよう(王子様と出会いたいっ)という彼女の純粋な思いは強く、歯を食いしばってしがみつく。
時折銃弾が浴びせられる中、刀真は2階を目指す。何かが突撃したようで、ちょうど穴が空いている部屋があった。
「刀真、これ落ちそう」
冷静に、月夜がいった直後、小型飛空艇はバランスを崩す。
「飛び込みます!」
3人は2階の部屋の中に転がり込む。
「こっちも行くよ!」
「ああ」
ルカルカとダリルは真彦が開けた穴へとバイクを走らせ、別荘内へと突入をする。
「俺は窓から行くぜ!」
パラ実のラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)はスパイクバイクを走らせて、1階の窓に突撃をする。
「おい! てめぇら!! 同学のもんとして恥ずかしい行動してんじゃねぇ!! ……俺が根性叩きなおしてやる……」
バイクに乗ったまま、アーミーショットガンを構えるも。
「……ってあれ? 何か……人数多くね?」
その部屋の中には、パラ実と思われる女性ばかりが十数人も集っていた。
「んだと!」
「後輩だろうが、てめぇ!!」
「百合園女に尻尾振ってるヤツらなんか、パラ実の風上にもおけねぇな!」
一斉に武器が向けられる。
「てめぇらに言われたかねぇな。おもしれぇ。その根性叩きなおしてやらぁ!!」
ラルクはスプレーショットを放つ。
なんだか相手側にも理由があるような気もしたが、細かいことは気にすることはないのだ。
互いにパラ実だから。とりあえず戦っておけばいい!
「っと、その前に、百合園のお嬢様を助けるんだった」
一頻り銃を撃った後、ラルクは廊下へのドアに向けてバイクを走らせる。
「おーい!! 助けにきたぞー!!! 何処にいるー!!」
廊下に出た途端、ドアの前にバイクを乗り捨てて塞ぎ、大声を上げる――。
「痛……っ、でも頑張らなきゃ!」
光学迷彩を使い、歩は人質が捕らえられていると思われる部屋へ突入した。
「やだやだぁー、私も死守したいのー! 協力したいのー! 遊びたいのー! ひーまーなーのー! 何かさせろー、なのですぅー!」
「……え?」
その部屋ではシャーロットがごろごろごろごろひたすらごろごろごろごろ転がっていた。
「人質さん?」
光学迷彩を解いて、歩が問いかけると、シャーロットは不満気にこくりと頷いた。
彼女の隣には、ミクルの姿もあった。
それから、シャーロットを宥めていたと思われる、毛布を被った男。
そして、少年達にセクハラ行為を受けている、シャツ一枚だけ纏った少女の姿も。
「助けにって……おおっ!? つかさ? 何やってんだお前ら!」
その少女を目にし、駆け込んだ刀真が目を剥いた。
「そんな羨まじゃなくて破廉恥な事を、許せん!」
「羨ましいのなら、こっちに来てくださっても構いませんよ」
つかさが潤んだ目を向けてくる。
「……いえ羨ましいなどとは言ってません」
月夜に冷たい目で見られて刀真はそう言い、つかさから目を逸らした。
「助けに来たよ。生きてる人いるかなーっ?」
続いて駆けつけたルカルカも、部屋の様子に軽く首を傾げる。
「貴方、なんちゃら寺院ねっ!?」
とりあえず、毛布を被りながらも、前面をさらけ出し汚いモノ(ルカルカ談)を見せている男をびしっと指差した。
「なんちゃら寺院、あ、悩殺人だっけ☆」
「鏖殺寺院だ。いい加減覚えろ」
スパーンとルカルカの頭が叩かれる。
頭を抱えるルカルカに代わり、ダリルが部屋の中を注意深く見る。
何故かその部屋の中には、飛行機のような物体がめり込んでいて、とりあえずソレを外そうと男達が集まっているようだ。
「……鏖殺寺院の逃走用航空機か」
「何だって!?」
ダリルの言葉にルカルカが光条武器――ライトセイバーをそのエーテン(えー・てん)という名の飛行物体に向けた。エーテンだいぴんち!
「と、その前に、そのキタナイモノしまいなさいよっ!」
ルカルカは包帯を、前を出している男――変熊 仮面(へんくま・かめん)に投げつけた。
「汚いものなど、どこにあるというのだ!」
きっぱり言い放ち、変熊は包帯をぺしっと叩き落とす。ついでに毛布も捨てる。
「こんな……酷い」
歩は変熊に憐れみを覚えた。不良達に身包み剥がされ、傷つけられたのだろうと。
救急セットを手に近付いて、毛布を拾って纏わせる。
「見せて」
逞しい裸体を見たことで、薄っすらと顔を赤く染めながらも、歩の愛は恥ずかしさを凌駕し、治療を行なおうと彼の傷口を見るべく身体に手を伸ばした。
「ぐぬぬ、見せてといわれて見せるものではない」
と何故か悔しげに言い変熊は毛布にがっちり包まりながら、部屋を飛び出していった。
「歩、あれは囚われの王子ではありません!」
刀真は変熊を追って、部屋から飛び出す。
「助けにこられてしまったですぅ。まだ何もしてないですぅ〜」
シャーロットはまたごろごろ転がり出した。
「この崩れそうな緊張感も堪らないです。皆様私のことはお構いなく」
男物のシャツ一枚の姿のつかさが、不良の1人に張り付いている。
「っと、壊される前に探しておかねばならんものがあったな」
ヴァレリーが立ち上がる。
「わ、私も」
ミクルも立ち上がった。
「あ、あれ?」
歩の頭に?が大量に飛びまわる。
「もしかして……人質いないの!?」
「皆、逃げてー! とかもう言う必要ないみたいね」
ルカルカは一頻り剣を繰り出してエーテンをいぢめた後、くるりと背を向けた。
「こうなったら、もう、地下に向かってゴーゴーゴーだよっ☆ 武器になるほど非常食もあるし〜」
ルカルカは濃密なチョコバーが沢山入った袋を持って、ドアに向かう。
「歩は脱出しろ。まあ、逃げる気のあるヤツがいたら連れて、な」
部屋から飛び出すルカルカに、そういい残しダリルが続く。
「う、うん」
歩はワンテンポ遅れて頷いた。
「エーテン様を、回復、回復しますぅ〜! ああっ、でも完全に治すには精神力が、精神力が足りないですぅ。キュアポイゾン沢山使ったんですぅ、何故かお腹壊してた方、多かったんですぅ〜。沢山いたんですぅ。精神力下さーい! 下さい、下さいですぅ〜!!」
シャーロットはまた暴れ始めた。
「刀真、何処に?」
月夜は飛び出した刀真を探していた。
目の前に男の裸体が見える。気味悪がって不良達も避けるものだから、月夜は簡単に裸体に追いつくことができた。
「能ある鷹は爪を隠す、今がその爪を表す時。我が名は変能マスク! この黒き剣をもって変熊仮面、お前を討つ!」
「きゃっ」
「う……」
部屋から廊下へと出た小夜子とエノンはその外見年齢20歳、身長175cm、体重67kgの男の裸体を見てしまった。直視してしまい硬直する。
「変熊仮面破れたり! 毛布を羽織るなど笑止千万! 己の肉体に自信があればそのような物は不要なはず! 毛布を羽織っている事こそ己に自信の無い証拠だ!」
「……刀真」
月夜は雄叫びを上げている男の前に立つ。
「刀真? 何を言う私はその様な名前ではない!」
「うん、私も全裸で人前に立つパートナーを持った覚えは無い」
「ごふぅッ」
ポリ袋を被り顔を隠しているそのド変態に、月夜は全力で右ストレートを決めた。
「変態成敗。後で刀真を見つけたら、今の2倍の力で」
そう言い、月夜は静かに右手を握り締めた。
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